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偶然なのか必然か、アカデミーと政治の意外に蜜月な関係

by • February 27, 2012 • GossipComments (0)2292

2012年アカデミー賞、マーティン・スコセッシのファンタジー映画「ヒューゴ」が次々にアウォードをさらっていきましたねぇ。「ヒューゴ」が選ばれなかったわずかな賞のひとつが、最優秀外国映画部門。ノミネート作品は、

ベルギー「Bullhead」
Michael R. Roskam監督
カナダ「Monsieur Lazhar」
Philippe Falardeau監督
イラン「The Separation」
Asghar Farhadi監督
イスラエル「Footnote」
Joseph Cedar監督
ポーランド「In Darkness」
Agnieszka Holland監督

そうです。核兵器開発で一触即発状態のイランとイスラエルが顔をそろえていたんですよね。ちなみにイスラエルの映画は、彼らの言語であるヘブライ語の口伝律法「タルムード」をめぐる、学者一族のストーリー。一方で、イランの映画「A Separation」は、中流家族で別居の危機にある夫婦のドラマですね。祖国での生活を望む夫と、娘の将来のために国外脱出を望む妻を軸に現代のイランを浮かび上がらせる映画でございます。

ベルリン国際映画祭での最優秀賞に輝いたとおり、アカデミーでも「The Separation」が獲得いたしました。米欧がイランへの制裁という手綱を引き締めるなかでの、堂々受賞です。しかも、イランの作品が栄誉に浴したのは、84回の歴史を誇るアカデミーで、実に初めてのこと。作者でもあるAsghar Farhadi監督は、受賞スピーチで「世界に散らばるイラン人が、この瞬間を見届けているでしょう・・・イランの名前が発表されたことに、幸せに思います。この賞を、すべての文化に敬意を表するわが国の同胞に捧げます。」と声を震わせておりました。

↓Farhadi監督の声、きっと世界中に届いたことでしょう。

My Big Apple

稀有なストーリーに加え監督による心に染み入るスピーチで、私もぜひこの映画を鑑賞したいと強く思いました。どの批評をみても好評価であり、受賞して全く、不思議はありません。ただ、政治的な選出という印象も、ぬぐいきれないのですよ。

興味深いことに、ドキュメンタリー映画でも「Saving Face」が受賞しました。女性や子供を対象に続発するアシッド・アタックに被害者を追った映画です。酸を顔に降りかけるという恐ろしい犯罪についての映画であり、世界に隠された闇に光を当てました。この映画の舞台はというと、パキスタンなんです。

↓毎年150人がアシッド・アタックの犠牲になっているといいますが、氷山の一角でしょうね。

My Big Apple

ポリティカルな受賞で記憶に新しいところでは、2010年のアカデミーにて6冠を達成した「ハート・ロッカー」が思い浮かびます。中東で命を賭けて地雷を撤去する兵士を描いた名作、同じ年にオバマ米大統領が8月、イラクへの撤退を宣言しましたよね。2009年にショーン・ペンが同性愛者の政治家ハーヴェイ・ミルクを演じた「ミルク」。同じ年には、「問わず、言わざる(Don’t ask, Don’t tell)」で知られる米軍の非文律の軍規をはじめ、同性愛者への差別撤廃に着手しました。10月にはオバマ米大統領が高らかに差別解消を約束しておりました。

偶然なのか、必然なのか。映画と政治の関係は、決して無縁ではないのかもしれません。

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