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ティーパーティーの敵失、リベラル派に勝利を導く

by • November 7, 2013 • Latest NewsComments (0)5323

Thank You Tea Party : Democrats prevail in Virginia And New York City.

11月5日は、ニュージャー ジー州知事選、ヴァージニア州知事選に加えニューヨーク市長選が行われました。

政府機関の閉鎖が選挙期間にあたった今回、共和党のティーパーティーにとって平手打ちをくらった結果に終わっています。政府機関の閉鎖後の支持率で共和党が過去最低だったように、民主党にとっては敵失による勝利といっても過言ではないでしょう。

以下は、結果と当選者の簡単なプロフィール紹介

▽ニュージャージー州

→現職で共和党のクリス・クリスティー知事(51歳)が地滑り勝利を収める。歯に衣着せない物言いと気さくな人柄で人気を博し、ハリケーン「サンディ」での迅速な対応で男女・人種・年齢問わず支持を広げた。サンディでは被災地に駆けつけたオバマ米大統領に対し「Shout out to Obama(オバマには感謝するぜ、敬意を表明するときの黒人・ヒップホップ用語)」と発言し、2012年大統領選でオバマ支持を表明したと受け止められるなど穏健派として知られる。

オバマ米大統領とクリスティ知事、党の垣根を越えたブロマンス
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同時に、ティーパーティーからは煙たがられる存在。大統領選出馬の意向を示してはばからないクリスティー知事は共和党知事協会の議長に就任する予定で、2016年の大統領選出馬に箔がつくことになる。

なお当選スピーチで、同知事は「トレントン(ニュージャージー州の州都)でできたんだから、ワシントンDCの人々もテレビのチャンネルを合わせて見守るべきだ。今やるべきことを行い、協力し、自分の主義を守りながら闘い、選出してくれた有権者のために尽くすことが最優先事項なんだってことを示すため、我々はここに立っているんだから」と発言。ワシントンDCというキーワードを挟み込み、あらためて2016年に共和党候補として名乗りを挙げる布石を打っている。

▽ヴァージニア州知事

→共和党のボブ・マクドネル知事の任期満了に伴い実施された知事選で、新人である民主党の元全国委員長でクリントン前国務長官の側近だったテリー・マコーリフ候補(56歳)が得票率2%の僅差で当選。民主党が知事の席を奪回した。共和党のクーチネリ候補(45歳)はティーパーティーの全面的な支持を受けたことが仇に。スウィング・ステートの同州を確保し、オバマ政権は2014年の中間選挙で下院の多数派奪回に弾みをつけるか。

▽ニューヨーク市長

→得票率72.7%と民主党のビル・デブラシオ候補(52歳)が共和党のジョセフ・ロータ候補(59歳)を圧倒的大差で破り、1989年以来24年ぶりの民主党視聴の誕生を実現。ロータ候補が12年に及ぶブルムーバーグ市長時代の後継者と目された半面、デブラシオ候補は1)NY市警による「stop and frisk」と呼ばれる抜き打ち身体・持ち物検査に反対、2)高所得者層向け増税とあらゆる子供向けに1日保育の設置、3)公営住宅の建設――を掲げたリベラル派。同氏の当選で、NY市はビジネス優先のブルームバーグ時代との決別を意味する。

デブラシオ市長の性格は、新しい流れを取り込む力に長けているようだ。イエール大学およびハーバード大学を卒業したエコノミストの父の名を受け継ぎウォーレン・ウィルヘム・ジュニアと名づけられたが、いつのまにかビルと呼ばれるようになり彼自身も受け入れた。マサチューセッツ州に引っ越した当時は、NY生まれだというのにあっという間に宿敵ボストン・レッドソックスのファンに。あまりの柔軟性の高さに、節操がないと言う人もいるかもしれない。当時は子供だったからしょうがないわけだが。

父親は沖縄戦線で左足の一部を失った挙句、赤狩り時代に共産党主義者の容疑をかけられアルコール中毒に陥り転落の人生を転がってしまった。そんな父と決別を図るかのように、1983年に正式に母方の姓を名乗り始める。高校時代から反核派の立場をとる彼は、レーガン政権に反発したニカラグアの左派サンディニエスタ解放戦線を支援した。d大学時代には、冷戦時代中ながら1983年にソビエト連邦にも訪問した経歴をもつ。NYポスト紙が「ソビエト連邦へ帰れ!」と銘打った一面の背景は、ここにある。

デビッド・ディンキンス市長候補(1989年の市長選で勝利)の選挙キャンペーンにボランティアで参加した当時、妻と出会う。シャーリーン・マクレイ夫人は詩人、作家。レズビアンの過去をもち、黒人でもある。同氏は民主党内のプライマリーでは4位と出遅れてスタートを切ったものの、最終戦になって異人種間ファミリーを前面に押し出した戦略に転換しニューヨーカーの心をつかんだ。黒人として初めてNY市長を務めたディンキンス氏の後継者として、デブラシオ新市長はNY市にリベラルの風を持ち込む。

アメリカ全土で広がる異人種間ファミリー、NYでは特に顕著で支持を集めたわけです。
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市長選に先駆け、NY市のタクシー運転手は「ブルームバーグは金儲けしか考えてなかった。ゾーニング(歩行者天国)だとかいって道路を封鎖して渋滞を引き起こしてくれたり、まるで独裁者だったよ。そろそろNYらしいリベラルな市長の時代が来たって悪くない」と語っていましたっけ。宝石箱のごとく煌くマンハッタンを、イーストリバー越しに眺めるロングアイランド・シティ住民も、ブルームバーグ市長を苦々しく見つめていた一派に属します。やっとの思いで購入したコンドミニアムの一室の目の前にNY市営の集合住宅が建設され、せっかくの眺望を台無しにされたから。公営住宅とは名ばかりで、中低所得者向けの戸数は限られ大部分は高級コンドとして販売される見通しなもんで、なおさらです。

3つの選挙結果をみると、いずれもティーパーティーが猛威を振るってくれたおかげでリベラル派あるいは共和党では穏健派へ票が流れたことが一目瞭然です。特にNYでは、住宅市場でバブルの様相が著しい。外国人がドル安に任せて現金で不動産を買い漁ってきたせいもあって、市民にとってマイホームは手の届かぬ夢へ変化してきました。NY市の不動産大手レフラック・オーガニゼーションを率い、2009年には住宅市場活性化のため移民法を緩和して外国人に現金で不動産を購入させるべきと提案していたリチャード・レフラック氏ですら、政治的配慮かもしれませんがデブラシオ候補の勝利に苦言を呈していません。

レフラック氏、意外にもデブラシオ新市長への辛らつな批判を控える。
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オバマ米大統領のレームダック化は著しい半面、リベラル派は「ウォール街を占拠せよ!」のバカ騒ぎから脱皮して選挙に訴えることを覚えたといえるでしょう。2014年の中間選挙に向け、予算協議にどのような影響を与えるのか目が離せません。

(カバー写真: Getty Image)

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