Curb The Enthusiasm : Tesla Is In Damage Control Mode.
年初来から一時400%もの急騰を遂げたテスラ、最近アメリカではフルボッコ状態です。
ケチのつけ始めは決算でした。そこから、株価は20%以上も急落。挙句の果てには足元6週間で炎上・出火など3件、今週に入ってからはカリフォルニア州フリーモントの生産工場で機械トラブルから3人の従業員が負傷するなどの悪いニュースが相次ぎ、蜂の巣をつついたかのような売りを浴びたのです。オスカー俳優のジョージー・クルーニーまで11日に「テスラに乗ってたときは、いっつも道端で立ち往生してなきゃならなかったんだ」とインタビューでこき下ろすなど、たたられっ放しでした。
マスクCEO、このタイミングでクルーニーに強烈なパンチを浴びせられました。
ではなぜ、むしろなぜ今年に入って株価が急上昇してきたのでしょうか?全ては、アメリカで2012年6月に発売を開始した「モデルS」から始まります。欧州でも今年の8月から発売された「モデルS」は、以下の栄誉に輝いてきました。
*国家道路交通安全局(NHTSA)の安全性能テストで、5点満点中5点を獲得
*コンシューマー・レポートの路上走行テスト走行、100点満点中99点と過去最高に並ぶ(レクサス LS460以来の快挙)
*オートモビル、モータートレンズなど自動車誌で今年のカー・オブ・ザ・イヤー
*最高航続距離は160マイル(約257km)、230
→日本で2014年4月5日から発売されるBMW「i3」は約130-160km、最大で約200km
*全米の富裕層地域トップ25で市場シェア・ナンバーワン
賞賛の限りを浴びてきたんですね。
それだけに出火・炎上の被害に遭った持ち主の方々、クルーニーの批判が可愛くみえるほど怒り心頭とお思いでしょ?ところが、ロバート・カールソン氏、ジュリス・シバヤマ氏のお2人は、「次もテスラを買うよ」と言い切ってました。メキシコでの炎上に巻き込まれたドライバーも、テスラから乗り換える意思をみせていないんです。
シバヤマ氏のモデルS、道路上の金属の異物が車台を貫徹しバッテリーの出火を招いたもよう。
クルーニーの批判に、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はクルーニーが初代「ロードスター」に乗っていた事情もあり、「それって2007年にiPhoneにバグが発生したのと同じことだよ」と一笑に付していました。また、リコールの予定もないと断言しています。
環境に配慮するリベラル寄りを中心に愛されるテスラ、その洗練されたフューチャリスティックなデザインと革命的な性能から「自動車界のアップル」との誉れが高い。ただし、敵が多いことも事実です。当然ながらライバルの自動車メーカーには煙たい存在であり、石油メジャーやガソリン関連には目の上のたんこぶ。さらに、テスラが自社のネットワークを通じて販売しているだけに、全米自動車ディーラー協会(NADA)を中心に自動車ディーラー業界からの反発は大きかったんです。
石油メジャーが集まるテキサス州では、業界が販売禁止を求め勝訴しました。ヴァージニア州では、ようやく1ヵ所の直営販売店の開設で合意したばかり。保守派色の強いノースカロライナ州だけでなく再生可能エネルギーを推進するオバマ米大統領のお膝元イリノイ州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州のブルー・ステートでもテスラの直販体制が違法と申し立ててきたんですよ。すべて、失敗に終わりましたが。
南アフリカ生まれのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)、アパルトヘイト体制が終了した1991年にはカナダへ移住していたとはいえ、旧体制が綻んでいく過程を目にしたことでしょう。そんな彼だけにテスラに収まらず、ロサンジェルス-サンフランシスコ間(大阪-東京間、約600km)をたった35分で結ぶ超高速輸送システム「ハイパーループ」の実現化を目指すのも、うなずけます。
(カバー写真: Wired、クルーニーとマスク: E!Online、炎上写真: Plugincars)
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