January FOMC Minutes : Was It Really Hawkish?
1月28—29日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録を受けて、ダウ平均は下落しましたね。
要点としては
1)景気、労働市場に楽観的
→住宅指標と雇用統計が弱かった半面、12月ISM製造業景況指数が2013年で2番目に高く1月消費者信頼感指数も2013年8月以来の高水準と強い数字が並んだ。米10—12月期GDP速報値も3.2%と潜在成長率超えを達成。
2)粛々としたテーパリングを確認
→100億ドルの追加減額に対し1人が長期金利の上昇を懸念、2人が低インフレと労働市場を疑問視も中止は正当化せずと判断。複数が会合ごとに100億ドルの減額を支持も、多くの出席者は見通しから大いに逸脱した場合に中止など対応を検討すると明記。
3)年内の利上げ、3人が提唱
→数人が早急の利上げの必要性を提起。1人は均衡実質金利の上昇を指摘、2人は(テイラールールと思しき)基準を理由に年央以前の利上げを示唆するとの見解を表明。もっとも、その他の出席者は金融危機後の余波などを理由にテイラー・ルール適用はふさわしくないと反論。
4)フォワード・ガイダンスの変更
①失業率6.5%から引き下げ(ミネアポリス連銀、コチャラコタ総裁の案)
②失業率6.5%に加え、労働参加率など労働市場の質を測定する項目を追加(サンフランシスコ連銀、ウィアムズ総裁の案)
③金融安定への危機具合
④インフレ目標値2%割れで低金利を継続するスタンスの強調(インフレ目標下限の設定)
⑤FOMC出席者による経済・金融政策見通しへの連携
以上のポイントを受け、公表直後のダウ平均の反応はというと。
(出所 : Yahoo! Finance)
小幅上昇してから、約1時間後に下落を開始し89.84ドル安と本日の安値圏で取引を終えたのです。公表直後はフォワード・ガイダンス変更のサイン点灯にばかり目がいったのか小動きだったものの、時間差で第1弾の利上げに対する議論に焦点が移ったようにみえます。
確かに今年のFOMC投票メンバーには、フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁とダラス連銀のフィッシャー総裁とFOMC内のタカ派の双璧が含まれます。フィラデルフィア連銀総裁は前週に時機を逃した利上げに懸念を表明済みで、ダラス連銀総裁もテーパリングの開始ずっと前から必要性を力説した1人でした。マーケットはこの2人が投票権を握る点を振り返り、タカ派スタンスを警戒したのも、致し方ありません。
一方で、このお2人はカウンターパーティー(取引相手)に差し出す金額が無制限であることに反対し、フィラデルフィア連銀総裁は期間延長の短縮も要請していたんです。過剰流動性を吸収しFedが望む金利に引き上げる効果を発揮するリバース・レポに反対する理由のひとつとして、過去にフィラデルフィア連銀総裁は短期金利に事実上の下限を設定することで、FF金利やレポ金利に与える影響を懸念していました。貴重な意見は別として、このお2人の見解はFOMCのメインストリームではないとも言えます。
全般的に経済指標に恵まれた1月FOMCとは違い、2月のデータは弱い内容が目立ってきております。しかも寒波と積雪の影響で1—3月期の予想も0.9%との数字が飛び出しました。議事録ではテーパリングの小休止にも触れ追加の減額を懸念する声もあり、容易にタカ派のレッテルを貼るのは早計のようにみえます。やはり注目点は、フォワード・ガイダンスの変更でしょう。
バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストは「フォワード・ガイダンスの議論は、過去の内容と合わせてみるとFOMCは質的な変更に傾いてると考えられる」と指摘。そうはいいつつ質的な項目を選ぶにも労働市場は詳細を切り取ると、①失業率の改善は顕著ながら労働参加率は35年ぶり低水準近くを維持、②短期労働者の失業率が改善も長期失業率は停滞、③離職件数は上向きも求人件数は景気後退入り前の水準を回復できず——などなどまばらです。どこに注目するかを見極めないと、タカ派になるかハト派になるか予想できないんですよね。
肝心の変更時期はイエレンFRB議長の記者会見で説明責任が果たせるため、次回3月18-19日が有力との説があります。ただ1月雇用統計などの結果を踏まえると2月以降も寒波や積雪などの悪天候要因が引き続き色濃く反映される公算が大きく、ガイダンス自体も1月FOMC議事録でも意見の収束を確認しておらず、難しいでしょう。雪解け待つ経済指標とともに、フォワード・ガイダンスを通じたFOMCの羽根の色を見極めるのも春までお預けのようです。
(カバー写真 : philadelphiafed)
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