April FOMC Minutes : Policy Exit Strategy Needs More Talks.
米連邦準備制度理事会(FRB)は21日、4月29-30日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録を公表した。議事録では、経済見通しにつき前回3月時点とほぼ変わらず。悪天候で落ち込んだ経済活動は、緩やかな成長軌道へ回復すると見込んでいた。
見通しに変化がなかったように、失業率が4月に2008年9月以来の水準まで低下してきたものの「インフレは数年先まで2%を大きく下回る状況が続く」と予想。失業率も「長期的に正常と判断される水準」を上回っているとし、「雇用とインフレの間で矛盾はみられない」と結論づけた。
ただし、成長下方リスクとして「多くの出席者」が「長引く住宅市場の鈍化、あるいは中国の成長減速やロシアとウクライナをめぐる地政学的リスク」を挙げた。住宅市場減速については、1)価格上昇、2)建設活動のボトルネック、3)労働力不足、4)仕入れ価格の上昇、5)供給不足、6)悪天候--を指摘。「2人の出席者」は、住宅ローンの信用供与が依然として抑制され過去と比較し貸出基準は厳格と指摘していた。
一方で「多くの出席者」は企業関係者が経済見通しに楽観的だったと報告。自動車販売、航空産業での生産増加、産業用電力の少量増加に加え、欧州からの需要拡大も確認されたという。Fedのスタッフ見通しは上半期こそ「3月時点の予想をやや下回る」と指摘したものの、中期的には「ほぼ変わらず」。インフレ見通しは据え置かれた。
マーケットに対しては、「複数の出席者が予想される低いボラティリティを受けリスク選好を強める可能性」を指摘。レバレッジド・ローンや低い信用スプレッドについても言及した。また別の複数の出席者は、金融安定への潜在的リスクに「適切な監督規制と金融政策の対応」が一助になるとの見解を示した。
FOMC開催中、「中期的な金融政策」をめぐる会合が開かれたように、議事録では「政策の正常化」と題した出口政策の協議内容が明らかとなった。出席者は出口戦略の手順を検討することで合意。また巨大なバランスシートを保有しながら金利引き上げを実施した前例がFedにはないため、あらゆる手段を考慮すべきとの見方も示した。Fedスタッフが草案を提出したものの、さらなる検討も求めた。
6月には経済見通しも公表されるので、出口政策が具体的に?
(出所 : marketoracle)
なおウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のFed番記者、ジョン・ヒルゼンラス記者は「FOMC議事録:協議は盛ん、されど行動起こさず(Fed Minutes: Lots of Talk, No Action)」と題した記事を配信。出口政策の協議に加え、フォワード・ガイダンスに関するコミュニケーション手段が主な議論のひとつだったと報じた。
以下は、議事録の内容を踏まえたエコノミストのレビュー。
JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミスト
FOMC議事録で「3月時点と見通しを変更せず」と明記したように、短期失業率の低下やインフレ・リスクを材料視しなかった。むしろ、景気後退時で賃金が名目的に硬直した影響で景気回復時でも賃金の伸びが緩やかになっていると説明。インフレ見通し自体も、向こう数年にわたって目標値2%を下回るとの見方で据え置いている。金融安定へのリスクは控え目と判断しつつ、1)レバレッジド・ローンの増加、2)低い信用スプレッド、3)低いインプライド・ボラティリティ--には懸念を示した。コミュニケーション手段と出口政策について協議していたものの、現状把握している以上の新しい内容は出てこなかった。
バークレイズのマイケル・ゲイピン米エコノミスト
FOMC議事録では経済見通し、政策決定につき特段目新しい材料は見当たらなかった。1-3月期の景気鈍化はあくまで悪天候を反映しており今後は回復ヘ向かう見通し。労働市場も依然として「たるみ」を確認しており、失業率の低下は労働市場の実体を反映していないとの見方を反映していた。
スタッフを交えた出口政策の協議は試験中のリバースレポをはじめ、超過準備、ターム物預金が中心だった。Fedとしては出口政策手順の修正案を協議中という点を強調するとともに、引き締めサイクル開始まで時間を掛ける意思表示とも解釈できる。償還分の再投資については、追加的な情報がFedのバランスシート政策の意思伝達力を高めると「多くの出席者」が判断していた。NY連銀のダドリー総裁は20日、再投資の終了をもって第1弾の利上げに踏み切ることが最善策ではないと発言しており、FOMC出席者の間でさらに協議を詰めていくと考えられる。
(カバー写真 : Fox Business)
Comments
QE3後の世界は、15-20%の株安? Next Post:
今週の「北野誠のFXやったるで!」、どうなる出口政策編