October FOMC Minutes : Not Too Hawkish, Still Looking At The Exit.
10月28−29日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録は、声明文ほどタカの爪に磨きがかかった内容ではありませんでした。注目点は、以下の通り。
1)ディスインフレ懸念を表明
短期的には原油をはじめ商品価格の下落につれ、下方向を予想。経済指標ベースのインフレ見通しは安定的ながら、マーケットベースの賃金見通し(5年先5年物ブレークイーブン・インフレ率など)は低下。世界景気の減速や金融市場のボラティリティ上昇がインフレ期待を押し下げた可能性があるものの、2人の参加者は結論づけるのは「時期尚早」との見解を表明。
ただし、多くの参加者は「成長減速局面では長期インフレ見通しの下方シフトが顕著となるリスクが横たわるため、こうした証左には注意を払うべきとの認識」を示した。1人のメンバー(ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁)が第1弾の利上げ実施に「インフレ目標2%の遵守」を求めるなか、FOMC声明文ではフォワード・ガイダンスに新たな文言を挿入し、経済指標次第とのスタンスを強調。
→声明文では原油安などの一時的要因との見方を示していましたが、やはり下方向に憂慮している様子。NY連銀のダドリー総裁が経済指標ベースのインフレ見通しを重視するといった発言を展開していたので、米11月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値でのインフレ期待の鈍化を受けて12月の文言がどう変わるか注目です。
食品を中心に、生活費は一切ディスインフレを感じさせませんが・・。
(出所:Athriftymrs)
2)世界景気の減速、金融市場への懸念
上記にあるように、インフレ鈍化の一因に「世界景気の減速と金融市場のボラティリティ上昇」を指摘。また「多くのメンバーが10月半ばに発生した金融市場の混乱に言及した」という。2人の参加者が声明文に「海外経済の動向が米景気見通しへの下方リスクを高める」との盛り込むべきと主張しものの、「委員会が想定する以上に(マーケットが)悲観的に受け止める」場合を考慮して差し控えた。
→10月FOMC以降、「第1弾の利上げで金融市場のボラ上昇はつきもの」との見解がイエレンFRB議長やNY連銀のダドリー総裁の間で聞かれましたが、米国がけん引力がいつまで続くか不透明。ユーロ圏や日本、中国などの協力も必要な上にドル高に伴う輸出競争力低下もあり海外要因・金融市場の乱高下には当然、目を光らせています。
3)「相当な期間(considerable time)」をめぐる議論、収束せず
フォワード・ガイダンスに対し追加条項の必要性を挙げる声が優勢な一方で、適切と判断する向きも多い。複数の参加者は削除を主張するも、2人の参加者は「相当な期間」の文言削除に対し「重要な政策スタンス変更へのシグナルとみなされる」と判断。別の2人のメンバーも、「金融市場にボラティリティを加え、望ましくない金融市場の引き締め効果を与える」と懸念していた。
→12月に「相当な期間」の文言を削除する可能性が後退?モルガン・スタンレーのビンセント・ラインハート米国担当主席エコノミストも、特に「相当な期間」の協議には「現状維持を貫いた」と振り返っていました。
以上、議事録は引き続き絶妙なバランス感覚を発揮した内容でした。バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストは、「2015年半ば」の予想で据え置いています。
もうひとつ、重要なポイントがあります。金融市場へのリスクに配慮してリバースレポの上限引き上げを見送った一方、FF金利誘導目標と超過準備預金金利の結びつきを強める上でのテクニカル的な協議を進めていました。JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストいわく「出口政策への重要な布石」といいます。7月FOMC議事録でFF金利誘導目標を政策金利の柱に据える意向を表明済みであり、金融市場の混乱を経てこうした議論が展開された点は非常に意義深い。米株がプラス圏を確保できなかった背景は、ここにあるのでしょう。
(カバー写真:CBS)
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