Is Puerto Rico Heading Into ‘Death Spiral?’
米国の自治領プエルトリコは、ウォールストリート関係者の間で「アメリカのギリシャ」と呼ばれて久しい。ニックネームに違わずアレハンドロ・ガルシア・パディラ知事は29日、約720億ドルの債務返済が不可能と発言。債務繰り延べや返済条件を求め「これ以外に選択肢はない。政治ではなく、数学の問題だ」と主張しました。経済を回復させなければ、「死のスパイラルに突入する(death spiral)」とも警告しています。
プエルトリコは2013年にデフォルトしたミシガン州デトロイトと違って、米連邦破産法の適用外です。つまりデフォルトに陥れば、債務減免などの手続きが規定されておらず、秩序だった手続きが講じられない恐れがあります。プエルトリコの経済規模が2013年で1031億ドルと、デトロイトの2247億ドルより格段に小幅にとどまるからといって、安穏としていられません。
キューバの向こう側にあるプエルトリコ、NYからは直行便で約4時間。
(出所:Skyscript)
カギは、非課税であるプエルトリコ債にあります。投資家の熱い注目を浴び、2014年当時で地方債発行高ではカリフォルニア州やニューヨーク州に次いで3位と言いますから、恐ろしい。おまけに投機的格級であるだけに、ヘッジファンドをはじめ高利回りを狙った資金流入が相次いでいました。
カリビアンな気風なのか、財政再建への真剣さに著しく欠けているのも気掛かり。5月時点で、予算拡大を目指し税制改革案の縮小で合意していたなんて笑止千万。おまけに、プエルトリコの1人当たり所得は2013年時点で1万9183ドルのところ、こちらによると公務員の平均年収は2倍以上に及び中央政府の役人は民間の90%超えといいますから、どんぶり勘定ここに極まれり。挙げ句の果てに消費税を7%から11.5%へ引き上げる法案を可決した半面、7月1日から開始の2015〜2016年度予算には人員削減を含んでいなかった。これでは、投資家が債務減免をはじめプエルトリコに歩み寄るとは到底考えられません。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が作成したチャートをみると、GDP比でみた債務はプエルトリコが断トツです。
なぜプエルトリコが「死のスパイラル」に突入すると恐れられているのか。重要なポイントは、人口。2014年で354.8万人ながら、債務は人口1975万人のニューヨーク州に匹敵します。しかも、米国への人口流出が著しい。人口が少ない上に消費税増税に加え債券が課税されれば、税収だけでなく投資資金の流入すら望むべくもありません。
2010年以降、アメリカ本土への移民数は急増。
(出所:CNN Money)
ギリシャの債務危機に加え、中国株安、さらに米国の裏庭でデフォルトとあって、マーケットを渦巻く混乱は激しさを増すばかり。プエルトリコ債の急落だけでなく、金融保証会社(モノライン)のMBIAなどにも影響は必至で夏場なのにマーケットに冷たい風が吹き付けます。
(カバー写真:vxla/Flickr)
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