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米7月雇用統計は巡航速度、9月利上げ織り込み度は上昇

by • August 7, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2530

July Jobs Report Signals Fed On Track For Lift-Off, Possibly September.

米7月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比21.5万人増と、市場予想の21.2万人増を上回った。前月の23.1万人増(22.3万人増から上方修正)には届かず。2ヵ月分の修正幅は、1.4万人増。5−7月期平均は23.5万人増となり、4−6月期平均の22.6万人増および1−3月期の19.5万人増を上回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が21.0万人増となり市場予想と一致した。6月の22.7万人増(22.3万人増から上方修正)以下にとどまる。民間サービス業が19.3万人増となり、6月の22.9万人増(22.2万人増から上方修正)に及ばなかった。とはいえ、派遣以外は全て増加し雇用改善の裾野が広がっていた。

(サービスの主な内訳)
・貿易/輸送 6.0万人増、増加トレンドを維持>5.3万人増
(そのうち小売は3.6万人増、7ヵ月連続で増加<前月は3.7万人増 )
・ビジネス・サービス 4.0万人増、増加トレンドを維持<前月は6.9万人増
(そのうち派遣は0.9万人減、5ヵ月ぶりに減少<前月は1.7万人増 )
・教育/健康 3.7万人増、増加トレンドを維持<前月は5.8万人増
・娯楽/宿泊 3.0万人増、増加トレンドを維持>前月は2.4万人増
(そのうち食品サービスは2.9万人増、4ヵ月連続で増加し過去12ヵ月平均に近い水準)
・金融 1.7万人増、16ヵ月連続で増加=前月は1.7万人増
・情報 0.2万人増、2ヵ月連続で増加<前月は0.4万人増
・政府 0.5万人増、3ヵ月連続で増加>前月は0.4万人増

財生産業は1.7万人増と、6月の0.2万人減を超え3ヵ月ぶりにプラスに転じた。2013年12月以来の減少を迎えた3月の2.0万人減から回復をたどる。6月に横ばいにとどまった建設業が回復したほか、製造業が強い。米7月チャレンジャー人員削減予定数でエネルギーのリストラが再燃したように、鋼業は7ヵ月連続で減少した。

(財生産業の内訳)
・建設 0.6万人増<前月は±0人増
・製造業 1.5万人増、3ヵ月連続で増加>前月は0.2万人増
・鋼業 0.5万人減、7ヵ月連続で減少(石油・ガス採掘は500人減)>前月は0.4万人減(速報値)

7月NFP、前月から鈍化も20万人を維持。
nfp
(出所:BLS、単位は千)

時間当たり平均労働賃金は前月比0.2%上昇の24.99ドル(約3120円)となり、市場予想と一致。前月の±0%から上向いた。前年比は2.1%の上昇となり、6月の2.0%から小幅加速。米6月コアPCEデフレーター米6月消費者物価指数コアの前年比をそれぞれ上回る水準を保つ。

週当たりの平均労働時間は6月まで4ヵ月連続で34.5時間を経て、34.6時間へ延びた。製造業の平均労働時間は40.7時間となり、前月の40.6時間から上昇。もっとも、2007年以来の高水準に並んだ2014年11月の41.1時間以下にとどまる。

失業率は5.3%で、市場予想および前月の数字に並んだ。2008年7月以来の6%割れを維持し、リーマン・ショック以前にあたる2008年5月以来の低水準を続けている。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2015年末予想のレンジ上限に並んだ。マーケットが注目する労働参加率は、こちらも6月と変わらず62.6%。1977年9月以来の低水準を維持した。

失業者数は前月比3.3万人減となり、前月の37.5万人減と合わせ2ヵ月連続で減少した。雇用者数は14.8万人増で、約1年ぶりに減少した前月から増加トレンドを回復。就業率は約5年ぶりの高水準だった5月の59.4%を経て、6月に続き59.3%にとどまる。 経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は10.4%と、6月の10.5%から低下。11ヵ月連続で2008年10月以来の12%割れを維持している。平均失業期間は28.3週と、前月の28.1週からやや延びた。失業期間の中央値は11.3週と6月と変わらず、少なくとも2009年以来の低水準を保つ。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.4%増の1億2159万人と増加に転じた。逆にパートタイムは0.4%減の2727万人と、減少に転じている。増減数ではフルタイムが53.6万人増、パートタイムは40.2万人減。6月(フルタイム→34.9万人減、パートタイム→16.1万人増)から、大きく好転した。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
7月は10.4%、6月の10.5%および4−5月の10.8%から低下し少なくとも2008年9月以来の低水準を維持。不完全失業者数は前月比2.8%減の632.5万人と、2ヵ月連続で減少した。

2)長期失業者 採点-×
失業期間が6ヵ月以上の割合は26.9%と、2009年3月以来で最低を更新した6月の25.8%から上昇した。平均失業期間は28.3週と、2009年10月以来の水準だった6月の28.1週を上回りやや延びている。6ヵ月以上の失業者数は7月に218.0万人と、6月の212.1万人から2.8%増加した。

3)賃金 採点-○
7月は前月比0.2%上昇し、6月の±0%を上回った。7月の前年同月比も2.1%増と6月の2.0%増を超えつつ、2012年11月から続く1.9−2.2%のレンジを維持。一方で生産・非管理職の前年比は1.8%増にとどまり、管理職を含むヘッドライン以下にとどまった。

4)労働参加率 採点-×
7月は62.6%。6月の水準に並び、1977年9月以来の低水準。非労働人口は9377万人、6月の9363万人から0.2%増加し2ヵ月連続で過去最高だった。軍人を除く民間労働人口は若干増の1億5710万人となる。

バークレイズのマイケル・ゲイピン米主席エコノミストは、結果を受けて「過去分の上方修正もあって米雇用統計・NFPの3ヵ月平均は持続的な増加トレンドに達した」と振り返る。今後は「原油安に伴うエネルギー関連の人員削減は下半期にかけ減退していく」との見方を示し、22.5万人増のペースを保つと予想。その上で「9月利上げに向けハードルをまたひとつ越えた」と指摘し、9月利上げ開始の予想に自信を深めた。

ゴールドマン・サックスのヤン・ハチウス米主席エコノミストは、今回の米7月雇用統計を受けても12月利上げ開始の予想を維持した。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番担当のヒルゼンラス記者の署名で「雇用統計、Fedの年内利上げシナリオと整合的(July Job Numbers Keep Fed Rate Hike on Track)」との記事を配信。7月FOMC声明文では利上げ開始には労働市場が「いく分(some)」の改善する必要があるとの文言を追加し利上げへのハードルを引き下げたが、今回の結果で「いく分」に相当する回復を確認したと指摘している。その上で、アトランタ連銀のロックハート総裁やセントルイス連銀のブラード総裁の発言を踏まえ珍しく明確に「9月もあり得る」と伝えた。

CNBCによると、9月利上げ織り込み度は52%へ急伸。
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(出所:CNBC)

——米7月雇用統計・NFPは巡航速度だった上、1)過去2ヵ月分が上方修正、2)賃金が上昇、3)不完全失業率が改善、4)平均労働時間が回復、5)フルタイムが増加、パートタイムが減少、6)失業率が低水準を維持(低迷する労働参加率の一因とはいえ)——など、労働市場の底堅さをあらためて確認しました。金融市場は米株安・米債安・ドル高で反応。ヘミングウェイの言葉を借りれば「徐々に、そして突然」利上げ織り込み度が強まったと言えるのかもしれません。

(カバー写真:just1snap – back – now to catch up/Flickr)

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