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バロンズ誌:抗日70周年式典では晴天も、中国の見通しは視界不良

by • September 6, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off1714

Barron’s : China’s Outlook Remains Unclear After The Parade Extravaganza.

バロンズ誌、今週の特集は年末に向けた株価見通しです。中国発の世界景気減速、株安、Fedの利上げ警戒を背景に約4年ぶりの調整入りを迎えた米株は、年末にかけ大胆にも10%以上の上昇へ転じると予想。テクノロジーや金融セクターがけん引するといいます。気になる詳細は、本誌でご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、テーマは中国。工場閉鎖と自動車利用の規制を駆使し、大気汚染でよどんだ空を2008年の北京五輪と同じく快晴へ導き、抗日70周年記念式典を盛大に開催した。その裏で、中信証券(CITIC証券)の幹部4人をインサイダー取引で、中国の経済誌「財経」のジャーナリスト1人を市場支援策撤退観測の報道で、中国証券監督管理委員会(CSRC)の職員を不正行為で、それぞれ拘束。疑惑のジャーナリストが国営テレビで誤報道に関し「パニックと無秩序を煽った」と公開告白した効果は抜群で、中国株の下落スピードは式典前に歯止めが掛かったものだ。

メディアが使用する言葉の影響力につき、こんな調査結果がある。スイスのジュネーブ大学のラジーナ・ギブソン・ブランドン氏とクリストファー・ヘメンス氏、セント・ガレン大学のマシュー・トレパニエール氏がダウ・ジョーンズの1998−2012年のニュースを元に分析したところ、一定の語彙が株式市場の「理不尽な動き」と密接なつながりが存在していた。例えば「馬鹿げた(daft)」、「ヒステリッくな(hysterical)」、「理不尽な(irrational)」、「混乱させる(perplexing)」、「愚かな(stupid)」、「普通でない(unusual)」がそれにあたる。

確かにこういった文句は数日の間、株安を促すだろう。逆に株価の戻り局面では、押し目買いのチャンスでもある。もっとも、中国当局は株式市場が自然に切り返す機会を与えていない。Jキャピタルのアン・スティーブンソン−ヤン氏は、中国で「市場は政府が特定したパラメーターで推移している」と説明する。つまり、自由市場は鳥であって政府こそが鳥カゴというわけだ。

スティーブンソン−ヤン氏によると、メディア規制を超え中国当局は「”高値で買い、永遠に保有せよ”のプログラムを支援しない仲介業者あるいは投資家を処罰する」方法で株価を押し上げようとしている。従って、仮に中国証券業協会があからさまに株式買い支えを中断しても、株安が回避される格好だ。

中国当局は、人民元を切り下げるなど為替政策にも積極的だ。足元で人民元は安定しつつあり、8月25日の1ドル=6.4128元から抗日70周年式典までに6.3559元まで切り返して来た。ただしパレードを控えた通貨安定には犠牲が伴うもので、スティーブンソン−ヤン氏いわく中国人民銀行はインターバンクでの新規貸出を制限しかねない。そうなれば金融引き締め効果を与え、企業の債務不履行が多発する恐れがあるという。

国外からの資金流出を受けて、人民銀行がドル売り・人民元買いを継続するケースも考えられる。中国当局の対策にも関わらず資金流出は継続中で、米国の不動産市場に流れ込んでいるという説も。例えばニューヨーク州の避暑地で知られるロングアイランドの最近購入された物件は、希望価格の末尾が「888」だった。中国縁起の良い数字として、大人気なのはよく知られた話である。

名作「華麗なるギャッツビー」に登場しそうな大邸宅だったとか。
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(出所:Whiteru-law

金融メカニズムというのは、不可解である一方で市場のカギを握ってきた。ドル売り(米国債、米機関債の売却)は人民元安にブレーキをかけバランスシートを縮小させる。米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日銀が資産買い入れを通じ流動性を提供、経済を支えてきた量的緩和策とは一線を画すものだ。抗日70周年式典パレード明け、中国当局はどう対応してくるのか。スティーブンソン−ヤン氏は「金融危機で通貨が調整に入った場合、少なくとも10−15%下落するため、資金を海外に移しドル資産を取得するインセンティブを低下させる」と説く。ただ中国の人民元安はインドネシア・ルピアからメキシコ・ペソまで、幅広くエマージング国に波及しかねない。中国にとって通貨安の比較的メリットは小さく、エマージング国に打撃を与えるだけだ。抗日70周年式典で中国株が休場だった間に、香港株をはじめエマージング国の株式市場は下落していた。中国で鳥はカゴのなかに閉じ込められたままであっても、その他の市場は遥か彼方へ飛び去ってしまっていると言えよう。

米国では8月31日週、年初来で2番目に大きな下落を示した。米8月雇用統計を受けて9月16−17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測が高まり、ダウは272ドル安で引け。ドイツのDAX指数は50日移動平均が200日移動平均を下抜けデッドクロスを形成した。投資家のポートフォリオが傷むなかで、アイビーリーグをはじめ米国の大学の基金はまもなく6月末までの投資結果を報告する。ハーバード大学やイェール大学は過去12ヵ月の15%、20%の上昇を大幅に下回ってくるだろう。該当期間中にS&P500は7%高、欧州・オーストラリア、極東(EAFE)指数はドル高で6%安、エマージング国も弱いリターンにとどまった。ヘッジファンドの成績も失望的で、商品先物の下落が響いている。大学の基金は支出とインフレを踏まえ7−8%のリターンが求められるものの、6月末までの12ヵ月間で目標未達に終わる公算。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、公的年金もリターン予想の下方修正を余儀なくされ7.68%と1989年以来で最低にとどまった。超低金利の影響というだけでは片付けられそうにない。

ストリートワイズは、足元の株安の理由を探る。S&P500は、8月17日から8.6%も下落してきた。中国の景気減速が明確になり、Fedの9月利上げも株価押し下げ要因とされるが、もうひとつ理由がある。株安の促進役こそ、他ならぬ投資家だ。米8月雇用統計をはじめ経済指標はこぞって緩やかながら成長拡大を示し、景気後退の兆しは全く現れていない。従って、マーケットフィールド・アセット・マネジメントのマイケル・シャオウル最高経営責任者(CEO)は「一方向に傾いた投資家のポジション」こそ市場混乱の一因と説く。

例えば、恐怖指数で知られるVIXは8月18日の13から同月24日に53と2008年以来の急伸をみせた。これは、2011年に格付け会社S&Pが米国を格下げした当時や2010年の欧州債務危機より激しい。ボラティリティを測る指数は「ボラティリティ・ターゲティング・ストラテジーズ」、「リスク・パリティ」と呼ばれるポートフォリオのリスク管理のほか、商品投資顧問(CTA)が使用する。JPモルガンのマルコ・コラノビク氏いわく、それぞれ特徴があるとはいえ基本は株式の売りで反応するだけに株安を演出した可能性は否定できない。同氏の推計では半分を少し上回る規模の売りが完了しており、1−3週間の売却分に相当する約1000億ドル(約12兆円)が残る状況。現状は「株式投資家にとって、リスク/リワードは様子見に傾いたまま」だという。

プロの投資家だけが戦犯とは言えない。クレディ・スイスのロリ・カルバシナ氏は、8月に下落が目立ったアップル(AAPL)やフェイスブック(FB)、ウォルト・ディズニー(DIS)などの銘柄に加えバイオテクノロジーや製薬などのセクターは、投資信託の人気銘柄だった。償還が舞い込むに従い、投信が売却した公算も大きい。

とはいえ、株安が世界の終わりでないことも確かだ。グラスキン・シェフのデビッド・ローゼンバーグ氏は景気後退の兆しが見えないなか、足元の下落はテクニカル的な調整と判断し弱気相場の幕開けとは考えていない。その文脈で捉えれば「SPDR S&P ホームビルダー ETF(XHB)」、「一般消費財セレクト・セクター SPDR(XLY)」はそれぞれ8月17日から6.8%、6.7%下落しており、ローゼンバーグ氏にしてみれば、大事なものを無用なものと共に捨てるという諺(Throw the baby out with the bathewater)に匹敵するという。同氏にとって現状は、押し目買いのタイミングとして悪くない。

——今週の特集がバーゲン・ハンティングに狙いを定めるだけに、ストリートワイズも援軍を送ります。アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、引き続き慎重スタンスを維持。9月2日のコラムでは、9月利上げを控えるべきとも主張していました。9月利上げ先送り論という意味では、同コラムも米株高を支援する内容とも言えます。

(カバー写真:David Leo Veksler/Flickr)

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