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米10-12月期GDP速報値は鈍化が鮮明、3月利上げに黄信号

by • February 1, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off2277

Q4 GDP Gives A Reason To Stay On Hold In March.

米10 −12 月期国内総生産(GDP)確報値は前期比年率0.7%増と、市場予想の0.8%増を下回った。前期の2.0%増以下にとどまり、3期ぶりの低水準。7−9月期の2.0%増、4−6月期の3.9%増、1−3月期の0.6%増と合わせ年初来の成長率は1.8%増と、2015年12月米連邦公開市場委員会(FOMC)の2015年末予想レンジ中央値に届かず。前年比でのGDP確報値は1.8%増と前期の2.1%増を下回り、直近で最も低い伸びに終わった。

GDPの7割を占める消費は2.2%増と、市場予想の1.8%増を超えた。前期の3.0%増には届かず。ホリデー商戦を追い風に2006年1−3月期以来の高水準に達した2014年10−12月期の4.3%増を下回る水準を維持した。GDPの寄与度は1.46%と、前期の2.04%を下回った。

(個人消費の内訳)
・耐久財 4.3%増、3期ぶり低水準<前期は6.6%増
・非耐久財 1.5%増、3期ぶり低水準<前期は4.2%増
・サービス 2.0%増、2014年1 −3月期以来の低水準<前期は2.1%増

個人消費、ホリデー商戦でも活気乏しく。
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(作成:My Big Apple NY)

民間投資は非住宅に含まれ企業の設備投資の一部を指す機器投資をはじめ、構造物投資などそろって減少した。住宅投資は、ほぼ前期と変わらず。無形資産は前期の減少からプラスに転じた。

(民間投資の内訳)
・民間投資 2.5%減、2期連続で減少し2014年1 −3月以来で最大の下げ幅<前期は0.7%減
・固定投資 0.2%増、2012年7 −9月期以来で最低の伸び<前期は3.7%増
・非住宅 1.8%減、2012年7 −9月期以来で初の減少<前期は2.6%増

・構造物投資 5.3%減、2期連続で減少<前期は7.2%減の2012年10−12月期以来の低水準
・機器投資 2.5%減、4期ぶりに減少<前期は9.9%増
・無形資産 1.6%増>前期は0.8%減、2013年4−6月期以来の減少
・住宅投資 8.1%増、5期ぶりの低水準<前期は8.2%増

在庫投資は前期から減速しつつ、GDPの寄与度はマイナス0.45%と前期の0.71%からマイナス幅をせばめた。純輸出の寄与度は、マイナス幅が拡大。政府支出は連邦政府支え、前期から拡大した。

(その他)
・純輸出の寄与度 マイナス0.47%ポイント<前期はマイナス0.26%ポイント
・在庫投資 686億ドル増<前期は855億ドル増

(政府支出)
・政府支出 0.7%増、3期連続で増加したなかで最低<前期は1.8%増
・連邦政府 2.7%増>前期は0.2%増(州政府・地方政府は0.6%減と3期ぶりに減少)

GDPデフレーターは前期比年率0.8%の上昇と、市場予想に一致した。前期の1.3%からは鈍化し、3期ぶりの低水準。1年ぶりに2%台を回復した4−6月期の2.1%を下回る水準を保った。PCEデフレーターも0.1%上昇し、前期の1.3%を下回り3期連続でプラスだったなかで最も小幅にとどまる。コアPCEデフレーターも1.2%の上昇と市場予想に並んだものの、前期の1.3%を下回った。2010年10−12月期以来の水準へ沈んだ1−3月期の1.0%を上回りつつ、FOMCのインフレ目標値「2%」から距離を開けたままだ。

大和キャピタル・マーケッツのマイケル・モラン米主席エコノミストは、結果を受け「在庫投資が全体を押し下げたほか、消費も伸び悩んだ」と振り返る。もっとも肝心の消費をめぐっては「暖冬の影響で暖房需要が低下し、家計による公益支出が1.4%の落ち込みをみせており、鈍化が一時的な可能性を残す」という。自動車向け消費も4.9%減で、「これまで急加速した反動」の域を出ない。ドル高で懸念された純輸出のマイナス寄与度も0.47%と、2014年及び2015年7-9月期までの平均値0.65%ほど悪化していなかった。問題は企業投資で、民間航空機を除く非防衛財に鉱業を外した企業の設備投資も芳しくないといい、「今後成長を押し下げる項目として追加すべきだろう」と結ぶ。

▽米10-12月期雇用コスト指数、前期と変わらず

米10−12月期雇用コスト指数・速報値は前期比0.6%の上昇となり、市場予想及び前期と一致した。内訳をみると、賃金・給与が0.6%増と前期に並び。2008年4−6月期以来で最高を遂げた1-3月期の0.7%増に至っていない。代わりに福利厚生は0.7%増と、6期ぶりの高水準だった。

雇用コスト指数は前年同期比2.0%増となり、3期連続で変わらず。ホリデー商戦が振るわなかったように、消費を喚起するほど力強い伸びを示さなかった。

雇用コスト指数、雇用統計の平均時給とも金融危機前の水準が遠い。
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(作成:My Big Apple NY)

——米10−12月期GDP速報値は 1)在庫投資、2)純輸出の寄与度低下、3)消費の鈍化、4)企業投資の減速――などが重しとなりました。最終消費(輸出を除く企業と家計の支出及び投資を基に算出)は、前期の2.1%増から1.9%増へ鈍化。1月に北東部を中心に豪雪に見舞われ消費を下押しする懸念がくすぶり企業投資の減速が明白ななかで、各エコノミストが予想するように米1-3月期GDPが2%超えの反発を遂げるか微妙な情勢となってきました。

こうした変化を受けて、1月初めに「年4回」の利上げに自信をちらつかせたサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁(2015年の投票メンバー)は米経済の力強さが海外のマイナスの影響を打ち消すと発言しつつ、「金利正常化の過程が若干遅れる」可能性に言及しました。ダラス連銀のカプラン総裁(2017年の投票メンバー)も、世界経済や金融市場の動向を「評価していく」とのスタンスを表明。3月利上げに二の足を踏む表現を採用しています。米10-12月期GDPの結果を重く捉えただけでなく、世界同時株安や景気減速の影響を精査する必要性を認識した証拠でしょう。

(カバー写真 : Frank Tasche/Flickr)

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