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米2月雇用統計、NFPは予想超えも賃金が驚きのマイナス

by • March 4, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off3825

More Jobs, Weak Wage Growth.

米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比24.2万人増と、市場予想の19.0万人増を上回った。前月の17.2万人増(15.1万人増から上方修正)を超えている。過去2ヵ月分では、3.0万人引き上げられた。ただ12−2月期平均は22.8万人増で、11−1月期の24.1万人増に届いていない。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が23.0万人増と市場予想の18.3万人増を上抜けた。前月の18.2万人増(15.8万人増から上方修正)より強い。民間サービス業も24.5万人増で、前月の15.3万人増(11.8万人増から上方修正)から加速。今回は教育/ヘルスケアが牽引したほか、前月に続き小売が強い。そのほか食品サービスを含む娯楽/宿泊が支えた。半面、政府が減少に転じ教育/健康の伸びが大幅に減速した。

(サービスの主な内訳)
・教育/健康 8.6万人増、増加トレンドを維持>前月は2.4万人増、3ヵ月平均は5.8万人増
(そのうち、ヘルスケア/社会福祉は5.7万人増>前月は4.4万人増、3ヵ月平均は4.9万人増)
・小売 5.5万人増<前月は6.2万人増、3ヵ月平均は4.1万人増
・娯楽/宿泊 4.8万人増、増加トレンドを維持>前月は4.5万人増、3ヵ月平均は4.3万人増
(そのうち、食品サービスは4.0万人増、過去1年間の平均は3.0万人増から上振れ)
・専門サービス 2.3万人増、増加トレンドを維持>前月は1.5万人増、3ヵ月平均は3.3万人増
(そのうち、派遣は9.8万人減>前月は2.2万人減、3ヵ月平均は0.2万人減)

・その他サービス 1.7万人増>前月は0.4万人減、3ヵ月平均は0.8万人増
・情報 1.2万人増、3ヵ月連続で増加>前月は0.4万人増、3ヵ月平均は0.9万人増
・政府 1.2万人増、前月から増加に反転>前月は1.0万人減、3ヵ月平均は0.5万人増
・金融 0.6万人増、増加トレンドを維持<前月は1.0万人増、3ヵ月平均は1.0万人増
・卸売 0.7万人増<前月は1.0万人増、3ヵ月平均は0.5万人増

・輸送/倉庫 0.5万人減>前月は2.0万人減、3ヵ月平均は0.3万人減

財生産業は1.5万人減と、前月の2.9万人増を下回り5ヵ月ぶりに減少した。3ヵ月平均では1.9万人増となる。米2月ISM製造業景況指数と整合的で、製造業が足を引っ張った。米2月チャレンジャー人員削減予定数で明らかになった通り、鉱業も減少をたどる。唯一好調だったのは、寒波や積雪に見舞われながら建設だった。

(財生産業の内訳)
・建設 1.9万人増、増加トレンドを維持>前月は1.5万人増、3ヵ月平均は2.7万人増
・製造業 1.6万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は2.3万人増、3ヵ月平均は0.4万人増
・鉱業 1.8万人減、14ヵ月連続で減少(石油・ガス採掘は800人減)<前月は0.9万人減、3ヵ月平均は1.2万人減

2月NFP、労働人口の増加を吸収できる水準を軽々と超える20万人台オーバー。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.1%低下の25.35ドル(約2200円)となり、市場予想の0.2%の上昇に反する結果となった。前月の0.5%から、マイナスに反転。前年比は2.2%の上昇となり、2009年7月以来の力強さを誇った2015年10月に並んだ1月の2.5%以下にとどまる。

週当たりの平均労働時間は34.4時間と、市場予想および前月の34.6時間に届かなかった。製造業の平均労働時間は40.2時間と、前月の40.4時間から短縮。2007年以来の高水準に並んだ2014年11月の41.1時間から乖離を広げた。

失業率は、市場予想および前月と並び4.9%だった。リーマン・ショック以前にあたる2008年4月以来の低水準を維持。12月米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2016年末予想のレンジ下限に届かなかったものの、長期失業率の見通しに等しい。マーケットが注目する労働参加率は62.9%となり、前月の62.7%から上昇。1977年9月以来の低水準だった9−10月の62.4%から改善が進んだ。

失業者数は前月比2.4万人増となり、前月の11.3万人減から小幅増加へ転じた。雇用者数は53.0万人増で、前月の61.5万人増を下回りつつ5ヵ月連続で増加。就業率は59.8%と前月の59.6%を超え、2009年4月以来の高水準だった。

経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全失業率は9.7%と、1月まで3ヵ月続いた9.9%から低下し少なくとも2008年5月以来の水準へ改善した。失業期間の中央値は11.2週と、前月の10.9週を超え2ヵ月連続で延びた。平均失業期間も29.0週と、前月の28.9週より長い。27週以上にわたる失業者の割合も27.7%で、前月の26.9%を上回った。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比微増の1億2321万人と5ヵ月連続で増加した。パートタイムも0.3%増の2785万人と、5ヵ月連続で増加。増減数ではフルタイムが6.5万人増、パートタイムは48.9万人増となる。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は週平均労働時間が34.6時間へ伸びたとはいえ雇用が鈍化した結果、前月比0.4%の低下と1月の0.4%の上昇から転じマイナスに落ち込んだ。労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)も前月比0.5%低下し、前月の0.9%の上昇から反転。2009年6月以来の水準へ沈んでいる。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
1月まで3ヵ月連続で9.9%を経て、今回は9.7%へ低下。少なくとも、2008年5月以来の低水準に達している。不完全失業者数は前月比横ばいの598.8万人だった。

2)長期失業者 採点-×
失業期間が6ヵ月以上の割合は全体のうち27.7%と、前月の26.9%から上昇。2009年3月以来で最低を更新した2015年10月の25.7%から上向き続けている。平均失業期間は2015年12月まで2ヵ月連続で27.9週だったが、1月の28.9週に続き、2月は29.9週へ延びた。6ヵ月以上の失業者数も前月比3.6%増の216.5万人と、3ヵ月連続で増加した。

3)賃金 採点-△
今回は前月比0.1%低下し、前月の0.5%の上昇からマイナスへ反転。前年比も2.2%上昇し、2009年7月以来の高水準を達成した1月および2015年12月の2.5%に届かず。非管理職・生産労働者の平均時給は前月比±0%の21.32ドル(約2430円)で、管理職を含むヘッドラインのような低下を回避した。しかも前年比は2.4%上昇し、管理職を含めたヘッドラインを超えている。平均の週当たり賃金も非管理職・生産労働者で前年同月比2.0%上昇718.48ドル(約8万1900円)で、管理職を含む全体の労働者の1.6%上昇の872.04ドル(約9万9400円)より加速した。

非管理職・生産労働者の平均時給、伸び率は2月に管理職を含む全体を超える。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-○
今回は62.9%となり、前月の62.7%から改善。1977年9月以来の低水準だった9−10月の62.4%から上昇基調をたどる。軍人を除く労働人口は0.4%増の1億5889万人だった。労働人口の増加を背景に、非労働人口は0.4%減の9369万人と5ヵ月連続で減少した。景気減速が懸念されながら、労働力が市場に戻って来ている。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、3月1日に東京でのプロモーションに登場したFed番のジョン・ヒルゼンラス記者ではなくデビッド・ハリソン記者の署名による「雇用統計で、4月あるいは6月利上げの可能性浮上(Analysis: Jobs Report Could Put April, June Rate Increases in Play)」と題した記事を配信。3月利上げを可能にするほどの力強さに欠けたものの、米経済は海外動向などの逆風に耐性がある証左とし、4月あるいは6月に追加利上げへ動く可能性を伝えている。

BNPパリバのポール・モーティマー・リー北米担当主席エコノミストは、結果を受け「NFPはサプライズを届けたが、平均時給の低下の方が驚きに値する」と振り返った。ただ、平均時給の前年比は「雇用コスト指数に近い数字だった」ため、1月までの強含みもあり想定内だったとの考えも示唆している。失業率は1月と同水準だったとはいえ「労働参加率の上昇がなければ、4.65%へ低下していた」とも指摘。今回の雇用統計は、FOMC参加者に「労働市場の底堅さを確信させると同時に、インフレ圧力が抑制的であることを突きつけた」と結んだ。

バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、結果に対し「次の利上げは6月、続いて12月との予想を据え置く」とのコメントを寄せた。ただし「早ければ4月に前倒しとなるリスクが残る」とも付け加えた。

——米2月雇用統計・NFPが予想以上に加速し、労働市場は健全に見えます。ロイターが「米国の就労者数が大幅増加、Fedの利上げ予想を再燃(US payrolls surge, bolster Fed rate hike prospects)」と報道したほか、タカ派でその名を轟かせたセントルイス地区連銀のプロッサー前総裁が、良好な経済環境に追いつくため「大幅利上げをもたらす可能性」を点灯させたのも、頷けます。

一方で平均時給をはじめ週当たり平均労働時間が弱含み、労働所得に至っては2009年6月以来の落ち込みを記録しました。セクター別での就労者数の増加を振り返っても、教育/健康のほか小売、食品サービスなど平均時給が比較的低い職種に偏っています。質が伴った雇用増加とは言えず、3月FOMCで早々の利上げを地ならししてくるかは微妙に映ります。

年始に「今年4回の利上げ」を予想したサンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁も、明確な回数の言及を巧妙に避けています。英フィナンシャル・タイムズ紙での電話インタビューで、ウィリアムズ総裁は米経済に強気な姿勢を通していたにも関わらず「通常の金利水準へ回帰するにあたり、近道は全くない」と発言するなど、あくまで「ゆるやか」な利上げと強調していました。利上げの道筋は変更はないものの、ペースや頻度をめぐり慎重になってきた様子が伺えます。

(カバー写真:World Relief Spokane/Flickr)

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