Slower Personal Spending, Higher Saving Rate In March.
米3月個人消費支出は前月比0.1%増と、市場予想の0.2%増及び前月値(0.1%増から上方修正)に届かなかった。小幅ながら、14ヵ月連続で増加。前年比は2月まで2ヵ月連続で3.9%増を経て、3.5%増へ伸びを狭めた。3ヵ月ぶりの低水準を示す。実質の個人消費は前月比±0%で、市場予想の0.1%増から鈍化した。前月の0.3%増(0.2%から上方修正)にも届いていない。個人消費の内訳は、前月比で以下の通り。
・耐久財 0.63%減、前月の0.09%増から減少に反転
・非耐久財 0.60%増、前月の1.08%減を上回り4ヵ月ぶりに増加
・サービス 0.06%増、前月の0.57%増を含めプラス基調を維持
耐久財は新車販売台数が市場予想に届かず、減少に反転した。非耐久財はガソリン価格の値上がりを支えに、減少トレンドにブレーキを掛けている。サービスは北東部を中心とした降雪の影響もあって公益が底堅かったこともあり、増加トレンドを維持した。
米3月個人所得は前月比0.4%増となり、市場予想の0.3%増を上回った。前月の0.1%増(0.2%増から下方修正)を超え、1月の水準に並ぶ。12ヵ月連続で増加している。前年比は4.2%増と、5ヵ月ぶりの水準へ強含んだ。可処分所得は前月比で0.4%増と、前月の0.1%増を上回り、こちらも1月の高水準に等しい。所得が支出の伸びを超えたため貯蓄率は5.4%と、ブッシュ減税終了目前で賞与などが大幅増となった2012年12月以来の高水準に及ぶ。
個人消費の低迷に反し、個人所得は順調で貯蓄率が上昇。
所得の内訳は、以下の通り。
・賃金/所得 0.4%減、前月の0.1%減から反転(民間が0.4%増と前月の0.1%減から改善、サービスが0.5%増と牽引したほか財生産業も0.1%増とそれぞれ0.1%減、0.4%減から回復)。
・不動産収入 ±0%、前月の0.2%減から横ばいに反転(農場が1.8%減と3ヵ月連続で減少し、非農場も0.1%増と前月の0.1%減から小幅改善にとどまる)
・家賃収入 0.8%増、前月の0.8%増に続き25ヵ月連続で増加
・資産収入 0.6%増と前月の0.2%減から改善(配当が0.8%増と前月の1.2%減から改善、金利収入は0.5%増と3ヵ月連続で増加)
・社会福祉 0.3%増、前月の0.5%増と合わせ増加基調を維持(メディケイド=低所得者層向け医療保険が0.4%増と5ヵ月連続で増加、メディケア=高所得者向け医療保険は0.5%増と増加トレンドを維持、失業保険は1.5%減と2ヵ月連続で減少)
・社会補助 0.3%増、前月の0.5%増を下回りつつ少なくとも16ヵ月連続で増
米3月個人消費支出(PCE)デフレーターは前月比0.1%上昇し、市場予想に並んだ。前月の0.1%の低下から転じている。前年比は0.8%上昇し、こちらも市場予想通り。前月の1.0%の上昇からは、鈍化した。コアPCEデフレーターは前月比0.1%上昇し、市場予想と一致。前月の0.2%(0.1%から上方修正)は下回った。コアPCEデフレーターの前年比は市場予想通り1.6%の上昇となり、2014年8月以来の高水準だった前月の1.7%からは鈍化した。コアPCEは米連邦公開市場委員会(FOMC)の目標値「2%」を視野に入れつつ、PCEと含め、「2%」割れはそろって2012年5月以来となる。
JPモルガンのダニエル・シルバー米エコノミストは、同じ日に米小売売上高に発表された修正値と合わせ「米1-3月期GDP改定値予想は速報値から上方修正の前期比年率0.6%増、米4-6月期GDPは2.0%増」を予想した。1-3月期をめぐっては、3月の実質個人消費が予想以下だったものの「1~2月の修正値がプラス材料」。米1-3月期個人消費は速報値から0.1%ポイント上方修正の2.0%増となる見通しで、同GDPの上方修正につながったという。米4-6月期GDPについては「2.0%増との予想には、下振れリスクがある」と指摘。現状では「新車販売台数や電力消費など公益での回復」を期待するものの、米3月個人消費の結果が響いているようだ。
アトランタ地区連銀は、米4-6月期GDP予想値を1.8%増でスタートさせた。一方でNY連銀は0.8%増とし、両者には大きなかい離がみられる。
――米1-3月期の実質個人消費が横ばいというのは、気掛かりです。米3月新車販売台数の不振が響いただけに4月は反発が見込まれるとはいえ、ガソリン価格が上昇してきました。4月25日週には2.162ドルまで値上がりし、2月15日週の1.724ドルから25.4%も切り返しています。新車販売台数での人気車種はトラック、スポーツ多目的車、高級車といった高額商品でガソリン消費が著しいブランドが多いため、ガソリン価格上昇は販売動向に水を差しかねません。
タックス・リターン、確定申告による税金還付も問題です。医療保険制度改革(オバマケア)では医療保険未加入者に罰金制度を設けており、今年は導入2年目とあって1)世帯年収の2.5%、2)成人1人当り695ドル(18歳以下の子供1人当たり347.50ドル)――のうち高額な罰金が科せられます。2015年は1)世帯年収の2%、2)1人当たり325ドル(18歳以下の162.50ドル)でしたが、今年はこの罰金制度の引き上げが響く可能性も否定できず。税金還付での消費押し上げ効果が抑制されるリスクに注意したいところです。
(カバー写真:zoetnet/Flickr)
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