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米4月小売売上高は大幅増、遅れて来た春に弾む

by • May 13, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off3229

Retail Sales Deliver Positive Surprise In April.

米4月小売売上高と、米4月生産者物価指数をおさらいしていきます。

米4月小売売上高は前月比1.3%増となり、市場予想の0.8%増を飛び越えた。前月の0.3%減から大幅増加に転じ、2015年3月以来の高水準を遂げている。米4月新車販売台数で年率で1700万台を回復したように、自動車が改善。さらに自動車を除いた場合も0.8%増と、市場予想の0.5%増および前月の0.2%(0.1%増から上方修正)を超えた。国内総生産(GDP)に反映されるコア小売売上高(食品サービス、自動車、燃料、建築材を除く)は0.9%増と、市場予想の0.4%増を軽々と上抜けた。過去2ヵ月分も上方修正(2月:0.2%増→0.4%増、3月:0.1%増→0.2%増)されており、1−3月期国内総生産(GDP)速報値からの上方修正はもちろん、米4−6月期GDPの力強さが期待できる。

内訳をみると、主要13カテゴリー中で11項目増加。前月の7項目を上回った。今回は自動車が目覚ましい増加を遂げたほか、原油先物の反発に支えられガソリンスタンドが大幅増を遂げた。また、オンラインを含む非店舗の伸びも力強い。懸念されていた外食も、増加に転じている。半面、小売決算が不振だったように一般雑貨は横ばいにとどまり、百貨店も前回の減少を打ち消した程度に。建築材/園芸は堅調な住宅指標にも関わらず、3ヵ月ぶりに減少した。項目別の詳細は、以下の通り。

(プラス項目)
・自動車→3.2%増>前月は3.2%減、6ヵ月平均は±0%
・ガソリンスタンド→2.2%増<前月は3.1%増、6ヵ月平均は0.9%減
・非店舗(オンライン含む)→2.1%増>前月は0.5%増、6ヵ月平均は1.0%増

・雑貨類→1.5%増<前月は1.6%増、6ヵ月平均は0.9%増
・服飾→1.0%増>前月は0.8%減、6ヵ月平均は0.3%増
・食品/飲料→0.9%増>前月は0.5%減、6ヵ月平均は0.2%増

・健康→0.9%増<前月は1.3%増、6ヵ月平均は0.8%増
・家具→0.7%増>前月は0.2%増、6ヵ月平均は0.2%増
・電気製品→0.5%増<前月は0.6%増、6ヵ月平均は0.2%減

・外食→0.8%減<前月は1.8%増、6ヵ月平均は0.4%増
・スポーツ衣料/書籍/趣味→0.2%増<前月は1.7%増、6ヵ月平均は0.4%増
・一般小売→±0%<前月は0.3%増、6ヵ月平均は0.1%減(*百貨店は0.3%増>前月は0.3%減、6ヵ月平均は0.4%減)

(マイナス項目)
・建築材/園芸→1.0%減<前月は0.5%増、6ヵ月平均は0.8%増

前年比は小売売上高、自動車を除く場合と3.0%増でレンジ内。

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(作成:My Big Apple NY)

バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、過去分の上方修正を含めた今回の結果を踏まえ「米1−3月期GDP改定値の予想を従来の0.9%増から1.0%増」へ上方修正した。米4−6月期をめぐっては「個人消費が当方の予想値2.5%増を超え、2.9%増へ上振れする可能性が出て来た」と指摘。同GDP自体も「来の2.0%増から2.2%増」へ引き上げた。

年3回の利上げを見込む強気派、ゴールドマン・サックスは米4月小売売上高を受けて米4−6月期GDPを従来の2.3%増から2.6%増へ上方修正した。

▽米4月生産者物価指数、市場予想ほど下振れせずとも弱含み

米4月生産者物価指数(PPI)は前月比0.2%上昇し、市場予想の0.3%の上昇に届かなかった。ただ前月の0.1%の低下から転じ、3ヵ月ぶりにプラスを回復。コアPPIは前月比0.1%上昇し、市場予想に並んだ。前月の0.1%の低下からも改善し、ヘッドラインと同じく3ヵ月ぶりに上昇に転じている。PPIは前年同月比で±0%となり、市場予想の0.2%の上昇に反する結果となった。前月の0.1%の低下に続くマイナスは、回避している。コアPPIは市場予想と並び0.9%上昇し、前月の1.0%に及ばなかった。

内訳をみると、全体の6割を超えるサービスが前月の0.2%の低下から反発しつつ、0.1%の上昇にとどまった。サービスのうち3割を占める貿易が前月の0.5%の低下に続き、0.1%のマイナスと軟調。1割弱を占める輸送・倉庫も3ヵ月連続で低下し0.4%落ち込んでいる。サービスのうち6割を占めるその他サービスのみ0.3%上昇、前月の0.1%低下から改善した。食品は3ヵ月連続で沈み0.3%低下。一方でモノは0.2%上昇し、2ヵ月連続でプラス圏をたどる。エネルギーは0.2%の上昇にとどまり、前月の1.8%に届かなかった。

▽米3月企業在庫、予想外に増加しGDP改定値の上方修正促す

米3月企業在庫は0.4%増となり、市場予想の0.2%増を上回った。前月の0.1%の低下から反転。米4月小売売上高の過去分上方修正とともに、米1−3月期GDP改定値が速報値から大きく引き上げられる可能性を示す。

――米4月小売売上高は見事な跳躍を果たし、遅れて来た春を満喫したかのようです。自動車とガソリンスタンドの反発が加速を招いたほか、コア小売売上高も好調で文句なしの良い結果に見えます。ダドリーNY連銀総裁をはじめ米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者が年2回の利上げが適切との考えを示唆するはずですね。

ただ、小売売上高が春に増加しやすい傾向は見逃せない。特に冬場の反動から3月にその傾向が見て取れ、2015年は1.6%増と3ヵ月ぶりに増加を果たし、2014年も1.2%増と前月に続き1%台を突破していました。また3月に弱い場合は4月に取り戻す場合も多いんです。今年は暖冬の影響に加え3月には北東部を中心に降雪に見舞われたこともあり、ズレが生じた可能性が残ります。さらに項目別で明らかなように前月分の減少を取り戻した程度で、前年比では足元のトレンドから変化していません。春の陽気に照らされて弾んだ米小売売上高が持続的に増加できるのでしょうか。利上げ観測再燃で金利が上昇すれば、住宅関連及び周辺小売にも影響しますし・・。

【追記】
一連の経済指標を受け、アトランタ地区連銀は米4-6月期GDP予想を従来の2.2%増から上方修正しました。NY連銀も、従来の0.8%増から1.2%増へ引き上げ、米1-3月期GDP改定値予想とともに米経済鈍化への懸念を後退させるとともに、6月利上げ警戒論が台頭する気配が感じられます。

(カバー写真:Shinya Suzuki/Flickr)

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