ISM Manufacturing Index Masks Weaker Details.
ISMやマークイットが発表し5月の製造業景況指数、米4月建設支出、MBA住宅ローン申請件数指数をおさらいしていきます。
米5月ISM製造業景況指数は51.3となり、市場予想の50.3を上回った。前月の50.8を超え、分岐点乗せは3ヵ月連続。内訳は以下の通りで、仕入れ価格をはじめ入荷時間の上昇が全体を引っ張った。一方で新規受注をはじめ生産、在庫が下振れするなど、弱含みを示唆。雇用は分岐点割れを維持し、新規輸出受注も横ばいにとどまった。詳細は、以下の通り。
・新規受注 55.7、3ヵ月連続で分岐点乗せ<55.8、6ヵ月平均は53.6
・生産 52.6、5ヵ月連続で分岐点乗せ<前月は54.2、6ヵ月平均は52.5
・雇用 49.2、6ヵ月連続で分岐点割れ=前月は49.2、6ヵ月平均は48.2
・在庫 45.0、11ヵ月連続で分岐点割れ<前月は45.5、6ヵ月平均は44.9
・新規輸出受注 52.5、2014年11月以来の高水準=52.5、6ヵ月平均は50.3
・仕入れ価格 63.5、少なくとも2014年9月以来の高水準>前月は59.0、6ヵ月平均は46.6
・入荷時間 54.1、分岐点を回復し2014年12月以来の高水準>49.1、6ヵ月平均は50.5
・受注残 47.0、3ヵ月ぶりに分岐点割れ<50.5、6ヵ月平均は46.8
ISM製造業景況指数と各連銀景況指数、5月はISMのみ改善。
(作成:My Big Apple NY)
ISMのブラッドリー・ホルコム会長は、結果に対し「18業種のうち12業種が拡大を示した」と指摘した。前月の11業種から増加し3月の水準に並んだ格好だ。製造業景況指数が「正しい方向へ向かっている」と評価し、「製造業者は在庫不足に陥り積み上げに苦労している」とも説明。全体的に「慎重ながら楽観」な様子だと振り返った。
▽米5月マークイット製造業PMI確報値、上方修正も09年以来の低水準
米5月マークイット製造業PMI・確報値は50.7となり、市場予想並びに速報値の50.5を上回った。前月の50.8も超えつつ、2009年9月以来の水準へ低下し金融危機以前の平均値54.1が遠ざかった。内訳をみると、生産が速報値と同じく分岐点を割り込んだ上、2009年9月以来で最低を示した。新規受注は分岐点を維持しつつ、2015年12月以来の低水準。一方で雇用は前月の50.2から改善し、仕入れ価格は9ヵ月ぶりの高水準だった。
マークイットのクリス・ウィリアムソン主席エコノミストは、結果を受け「製造業生産は2009年以来で最低であり、4-6月期の経済成長の深刻な重しとなりかねない」と振り返った。受注鈍化への懸念が労働市場を圧迫しつつあるが、一因として「米大統領選に対する不透明感」を指摘。新規輸出受注にも影響を及ぼしているとの考えを示した。
▽米4月建設支出、住宅・非住宅がそろって弱く予想外の減少
米4月建設支出は前月比1.8%減の年率1兆1340億ドルとなり、市場予想の0.6%増を下回った。前月の1.5%増(0.3%増から上方修正)の増加分を相殺し、3ヵ月ぶりに減少。減少率は、2010年7月以来で最大を示す。内訳をみると住宅が1.5%減と3ヵ月ぶりに減少し、非住宅も2.1%減と4ヵ月ぶりに減少した。建設支出の前年比は4.5%増と、前月の8.0%増(速報値)からほぼ半減した。
民間は1.5%減と、前月の2.3%増を下回り3ヵ月連続で減少した。ヘッドラインと同じく住宅が1.5%減と3ヵ月ぶりに減少したほか、非住宅も1.5%減と4ヵ月ぶりに減少している。非住宅の内訳をみると11項目中、3項目のみ増加。前月の8項目(速報値ベース)を下回った。前月比ベースで宗教が9.6%増と突出した伸びを示したほか、輸送が1.8%増ととなりそろって2ヵ月連続で増加。オフィスは1.6%増と反発した。一方で通信が7.2%減と減少に転じたほか、娯楽が3.7%減、健康が3.6%減、その他では教育、電力なども前月に続いて落ち込んだ。
公共は2.8%減と、前月の0.6%減を下回り2ヵ月連続で減少した。住宅が2.8%減と3ヵ月連続で減少しただけでなく、非住宅も2.8%減と2ヵ月連続で減少。非住宅の12項目中、4項目が増加。前月の5項目を下回った。今回は娯楽の5.7%をはじめ好況が5.5%増、電力も5.2%増、オフィスは1.5%増となる。反対に高速道路が6.6%減、商業が4.1%減、輸送が3.4%減、その他では教育や健康などが弱含んだ。
バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、結果を受け「2月と3月分が大きく上方修正されており(2月は1.0%増→1.4%増、3月は上記記述済み)、米1-3月期GDP確報値は改定値から0.9%増へ上方修正されるだろう」と予想した。一方で、4月の数字は予想外の落ち込みを示し、過去2ヵ月分の反動が現れるとみられ「米4-6月期GDP予想を従来の2.6%増から2.2%増」へ引き下げた。
アトランタ地区連銀のGDP予想は、米4-6月期GDPの予想を従来の2.9%増から2.5%増へ下方修正した。
▽MBA住宅ローン申請件数指数、3連休を控え3週ぶりに低下
全米抵当貸付銀行協会(MBA)住宅ローン申請件数指数は、5月27日週に前週比4.1%上昇し476.1だった。前週の2.3%の上昇からマイナスに転じ、過去5週間で3回目の低下を示す。新規が4.7%低下の223.8と前週から低下に転じた。借換は3.9%低下の1928.6と続伸トレンドを4週でストップさせた。5月18日公表の4月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録後に6月利上げ観測が高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長の利上げ示唆も重なって金利先高観が台頭。追加利上げ前の駆け込み需要が期待されたものの、メモリアルデーの3連休を前に需要が減退した。MBA住宅ローン申請件数指数の前年比(季節調整前)は42.3%上昇し、前週の23.8%から一段高を遂げた。前年同期はギリシャのデフォルト危機が再燃したほか中国人民銀行の追加利下げや中国株安を受け世界同時株安を招き、需要を押し下げていたため。新規は27.7%(前週は16.9%上昇)、借換も57.5%(前週は24.7%上昇)と、ヘッドラインに寄与した。
30年固定金利型の住宅ローン金利(平均)は、前週に続き今回3.85%だった。ただし1年前の4.02%以下にとどまり、過去3年間で最低近くを保った。15年固定金利型(平均)は前週の3.06%から3.12%へ上昇。FHAのローン金利のみ、前週の3.82%から3.81%へ下向いた。
MBA住宅ローン申請件数指数、低金利の割に上振れせず。
(作成:My Big Apple NY)
申請全体に占める借換の割合(件数ベース)は54.3%と、前週の53.7%を上回った。2009年6月以来の低水準である2015年7月3日週の48.0%から切り返した水準を維持。ただし2013年5月以来の高水準となった2015年1月16日週の73.9%からは、大きく遠ざかったままだ。
――米5月ISM製造業景況指数と米5月マークイット製造業PMI・確報値はそろって前月から持ち直したとはいえ、詳細は明るいニュースを運んだとは言えず製造業活動への不透明感は払拭しきれません。米4月建設支出では、少なくとも企業の設備投資のうち構築物投資の弱さを確認しました。MBA住宅ローン申請件数指数は引き続き新規の伸び悩みがみられており、4-6月期の成長回復が前年同期のような力強さを示すとは想定しづらい状況と言えるでしょう。
(カバー写真:Ekkasit Chaingam/Flickr)
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