Beige Book Didn’t Lift Description On Economic Growth.
7月13日に公表されたベージュブックを、遅ればせながらおさらいしていきます。
米連邦準備制度理事会(FRB)が13日に公表したベージュブック(5月24日から7月1日までカバー)は、引き続き経済活動の拡大を確認した。セントルイス地区連銀がまとめた今回のベージュブックでは総括として、前回に続き地区連銀は経済活動が「控え目(modest)に成長した」と明記。全般的に個人消費をはじめ製造業、労働市場など伸び悩みの状況を裏打ちした。米6月雇用統計が予想外に大幅増を遂げたものの、7月26~27日開催のFOMCで利上げを行う可能性は引き続きゼロに等しく、9月FOMCで仮に利上げの地ならしを行えばベージュブックの表現と政策が乖離し始めた第一歩となり得る。
(経済全般)
地区連銀は概して「控え目(modest)」なペースの拡大を報告した。一方でクリーブランドは「安定的(steady)」だった一方、ミネアポリスは「ゆるやかなペース(moderate pace)」と表現している。前回に続き見通しは全般的に「ポジティブ(positive)」とされセクターでは小売、製造業、不動産を含んだ。もっとも、経済活動自体は「控え目」にとどまる公算と結ぶ。
(ドル高をめぐる表記)
ドル高をめぐるネガティブな表記は総括はゼロだったものの、各地区連銀から6回登場した。前回の2回から増加している。地区連銀別では前回の2行から5行へ増え以下の通り取り上げられており、今回は6月に消えたクリーブランドとダラスのほか、リッチモンドが新たに登場した。
・ボストン「IT産業において、2015年のドル高が輸出需要を抑制する要因」
・クリーブランド「ドル高の下方圧力は後退しつつある」
・リッチモンド「繊維と化学は輸出が依然として弱く、ドル高が一因」
・ダラス「製造業において、ドル高が引き続き圧迫」
・サンフランシスコ「電子商取引脳利上げは国内の需要で押し上げも、ドル高による輸出量の減少で相殺」、「農業においてドル高が輸出を抑制し続けた」
(中国)
中国というキーフレーズが登場した回数は1回で、前回の2回から減少した。2015年7月に初めて中国が盛り込まれた当時の8回、以降2015年12月までの6回を下回り続けている。今回言及した地区連銀はシカゴで、「鉄鋼関係者は中国や日本などからの輸入品に高い反ダンピング関税を課す最終決定が下された一助を受け、国内需要に楽観的」と報告していた。前回のボストン、アトランタは取り下げた。
(全体のキーワード評価)
今回、総括部分で使用されたキーワードの登場回数(同じ単語の変化形を含む)は以下の通り。全体的にまちまちで「増加した」が減少したものの、「強い」は増加。「弱い」や「控え目」は減少している。3月から投入された注目の「不透明(uncertain)」は、3回連続でゼロとなった。初めて挿入された当時は金融市場に対して3回登場したが、米株高を背景に懸念が後退したようだ。ただ地区連銀別では、7回登場。ボストンが2回、ミネアポリスが1回、ダラスが4回と3行が使用しており、前回の2行から増加した。ボストンは製造業と商業銀行に係る見通しで、ミネアポリスは建設活動の雇用に関する見通しで扱った。ダラスは1)総括としてBREXIT、2)製造業における世界市場の向かい風要因、3)娯楽・宿泊が抱える政治的な懸念材料、4)金融業界で渦巻くBREXITへの不安——に絡み明記していた。
「増加した(increase)」→20回<前回は23回
「強い(strong)」(注:強いドルの表現を除く)→9回>前回は8回
「緩やか(moderate)」→6回<前回は10回
「控え目(modest)」→9回<前回は13回
「弱い(weak)」→5回<前回は8回
「底堅い(solid)」→0回<前回は1回
「安定的(stable)」→2回>前回は1回
「不透明性(uncertain)」→ゼロ=前回はゼロ回
総括したセントルイス連銀と言えば、2018年まで据え置き派のブラード総裁率いる地区連銀。
(出所:Federal Reserve Of St. Louis)
主な項目の詳細は、以下の通り。
(個人消費)
個人消費は全体的に「ポジティブ」だったものの、「鈍化のサイン(with signs of softening)」が見られた。前回の「控え目に増加した(up modestly)」から、下方修正されている。ただし、見通しに対しては殆どの地区連銀で「楽観的(optimistic)」だった。ほとんどの地区連銀で自動車販売が「鈍化した(slowed)」ものの、高水準を維持。クリーブランドやカンザスシティ、ダラスなど3行では楽観的な見通しが確認された。観光は「控え目からゆるやか」な活動が聞かれたが、NYは全般的に「低迷した(sluggish)」、サンフランシスコでもホテル稼働率の低下を確認した。半面、リッチモンドやシカゴ、カンザスシティの3行では活発だった。
(製造業)
製造業活動は前回通り「まちまち(mixed)」。見通しは「ポジティブ」としつつ、「悪化(deteriorated)」との声も聞かれている。リッチモンドとダラスは活動が「低下(declined)」し、クリーブランドとサンフランシスコでは「変わらず(remainde unchanged)」だった。ボストンとアトランタでは「拡大(increased)」したものの、前回より伸びは鈍化したという。NYやフィラデルフィア、セントルイス、カンザスシティの4行は「反発(rebound)」を報告した。
(労働市場、賃金、物価)
労働市場は、「控え目に増加し続けた(continued to grow modestly)」とし、前回の「控え目に増加した」と変わらず。クリーブランドではほぼ変わらず、NYでは「ゆるやか」だった一方で、ボストンやアトランタでは採用活動が「慎重(cautious)」な動きがみられたという。特殊技能職をめぐっては、引き続き複数の地区連銀で「強い需要(strong demand)」を確認した。小売は他のセクターと比較して弱くボストン、クリーブランド、ダラスの3行で「変更なし」、サンフランシスコでは「減少(reduction)」が報告されている。
賃上げ圧力は全般的に「控え目からゆるやか(modest to moderately)」で、前回の「ゆるやか」から若干の下方修正を示した。特殊技能職で最も力強い賃上げ圧力を確認しつつクリーブランドをはじめシカゴ、サンフランシスコの3行では新人での賃上げが報告された。リッチモンドでは技能が必要ない職で賃上げはみられていない。建設業ではフィラデルフィアやクリーブランド、サンフランシスコの3行で賃上げ圧力が認められた。
物価上昇圧力は前回に続き、「わずかに(slightly)」に収まった。NYやフィラデルフィア、クリーブランド、アトランタ、シカゴ、セントルイスの6行は販売価格にほぼ変更がなかったと報告。仕入れ価格はサンフランシスコ以外で報告が上がった。
(建設、不動産)
建設と不動産活動は「強まり続けた(continued to strengthen)」とし、前回の「全般的に拡大した(generally expanded)」から上方修正された。一戸建て住宅市場はゆるやかに増加し、ボストンのほかクリーブランド、セントルイスの3行ででは強い伸びを遂げている。多くの地区連銀から、在庫不足の報告が上がった。在庫薄ながらボストンやアトランタ、カンザスシティ、ダラスの4地区連銀は向こう数カ月において「ポジティブ」な見通しを示した。住宅建設は全般的に「ポジティブ」で、クリーブランドとカンザスシティは住宅着工で力強さがみられた。
商業活動の販売とリースは、ほとんどの地区連銀で「安定的であり続けた、あるいは改善した(remained stable or improved)」。収容率や賃料の上昇はアトランタやカンザスシティで確認。産業セクターではNYやリッチモンド、ダラスで改善した。その他はまちまちとなる。
(銀行、ファイナンス)
全般的にローン需要は「強まった(increased)」が、ペースにおいてはまちまちでクリーブランドは「安定的ながら鈍化(steady but slow)」し、セントルイスでは「力強かった(strong)」。シカゴでは「まちまち(mixed)」で、ダラスでは「軟化した(softened)」という。
(エネルギー、農業関連)
エネルギー関連は原油価格が50ドル台を回復する場面があったものの、活動が「縮小あるいは弱い伸び(downsizing or weak growth)」にとどまった。前回の「弱いまま(remained weak)」から若干の下方修正となる。見通しをめぐってはカンザスシティやダラスで改善したものの、ダラスとアトランタは信用枠獲得こそ最大のリスクと指摘した。石油・ガスの掘削活動はカンザスシティで「減少(decline)」し、クリーブランドでは「変わらず(unchanged)」だった。前回減少したミネアポリスとダラスは、増加した。
農業は「まちまち(mixed)」だったものの、平均では「改善した(improved)」。殆どの地区連銀は主要作物の価格上昇を挙げつつ、クリーブランドやリッチモンド、シカゴの3行は下落を報告した。
(カバー写真:Matthew Black/Flickr)
Comments
トランプ氏が正式指名へ、正副大統領コンビのロゴに全米沸騰! Next Post:
アメリカで1000万円プレーヤーになれる職、トップ10