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バロンズ:米8月雇用統計にみる、不都合な真実

by • September 4, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off3081

Barron’s : Inconvenient truth Of  August Jobs Report.

バロンズ誌、今週のカバーは米株ストラテジストの見通しを掲げる。同誌によると、今回は何年ぶりかの異変が生じた。ストラジテストの間で弱気派が台頭中で、S&P500の予想平均は2138と9月2日の終値2180を下回る。調査対象のストラテジスト10名の間で強気派は4人と半数に届かず、中立派が3人、弱気派が3人と意見が分かれた。見解が一致した項目のひとつは業績動向で、下半期の改善が見込まれている。米大統領選は民主党のクリントン候補の勝利を予想米連邦公開市場委員会(FOMC)の次回利上げは9月ではなく12月が有力視されていた。それぞれのストラテジストの推奨銘柄などの詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今回はもちろん米8月雇用統計がテーマで抄訳は以下の通り。

機能していない労働市場—Job Market Isn’t Working.

夏の終わりを告げるレーバーデー(筆者注:今年は9月5日)を前に発表された米8月雇用統計は、さえない結果に終わった。非農業部門就労者数(NFP)は市場予想の18万人増以下の15.1万人増にとどまり、失業率は4.9%で変わらず。それより注目すべきは賃金や労働時間で、平均賃金は前月比0.1%の上昇に過ぎない。平均労働時間も34.3時間と前月の34.4時間から低下し、平均賃金と合わせ所得の鈍化を予感させる。

NFPの増加を牽引したセクターが政府である点も、見逃せない。モルガン・スタンレーのテッド・ウィーズマン米エコノミストによると、地方教員職の4.7万人を含め7〜8月の政府は7.5万人増だった。しかし、季節調整前では86.8万人減になるという。大幅な乖離の主因こそレーバーデーにあり、今年は9月5日にあたったため通常より新学期が前倒しで8月末に開始した可能性から季節調整で歪みが生じた可能性がある。

カレンダー要因で新学期の開始が早まり統計に異変をもたらしたのなら、NFPはもっと弱い数字だった?

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(出所:US Department of Education/Flickr)

高賃金の職の鈍化にも、注目したい。Mサイエンスのスティーブ・ブリッツ氏いわくヘルスケア、小売、レストラン、鉱業を除く高賃金の職は過去6ヵ月間で7.3万人増と、2015年の6ヵ月平均15万人増に遠く及ばない

業績リセッションの最中にある通り、企業は売上が細るなかで人件費をはじめ支出を抑制し始めたのだろう。平均労働時間や賃金の鈍化に、その兆候が現れている。

Fedのタカ派は就労者数の鈍化について「完全雇用」に到達した、あるいは到達しつつあるためと説明する。しかし、この仮説には矛盾点がある。労働人口のほとんどが職に就いており余剰が少ないのであれば、企業は需要を満たすため雇用の奪い合いを展開するだろうが、なぜ賃金が鈍化したのだろうか?むしろ企業は最低賃金の引き上げや医療保険制度改革(オバマケア)などを通じ費用負担が拡大するなかで、支出を抑える傾向にある。

米8月チャレンジャー人員削減予定数によると、通信機器大手のシスコ・システムズが5.5万人の雇用削減に踏み切った。小売世界最大手のウォルマートも7000人の高賃金バックオフィス職の削減を決定、代わりに店舗従業員の賃金を引き上げている。こうした状況を踏まえれば、9月利上げは大きな賭けと言えるだろう。ブルームバーグによると9月利上げ織り込み度は32%、12月の織り込み度は60%であり、マーケットが利上げを確信していない様子が見て取れる。米経済がワークしていなければ、致し方ない。

Fedが追加利上げを模索する一方で、ニューヨーク・タイムズ紙とブルームバーグはそろってマンハッタンの不動産市場における異変を伝えた。Gワード、すなわち「Glut=過剰供給」によりブルックリンのウィリアムズバーグで家賃の値下げを余儀なくされ(筆者注:同地域を走る唯一の地下鉄L線が1年間もの補修工事を理由に運行中止が決定したことも一因)、超高級コンドミニアムが数百万ドルもの値下げに直面しているという。

米株市場からは、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)率いるテスラが太陽光発電設備ベンチャーで同CEOが会長を務めるソーラーシティ買収に向け資金不足に陥っているとのニュースが伝わった。かつては転換社債などで容易に資金調達を行ってきた同社だが、今となっては昔の話。格付け会社S&Pはテスラを”最も弱いリンク(weakest link)”、すなわち”Bマイナス”以下あるいは”見通しネガティブ”と同等に位置づけ、デフォルトのリスクを見込む。

テスラだけではない。全世界でみた8月時点の”最も弱いリンク”リストに251社が並び6月の245社から増加した。金融危機の衝撃が冷めやらぬ2009年の264社が視野に入る。8月時点での同リストのセクター動向をひも解くと石油・ガスが全体の25%を占めトップに立ち、次いで金融が14%となる。

中央銀行が導入した低金利政策が過剰流動性を招き、賭博師から夢想家まであらゆる層がただ同然で資金を調達できた。一部は不動産へ流れ込み、一部は電気自動車メーカーに行き着いたものだ。しかし金融環境が変化すれば、共に資金流出に苦しむだろう。

——予め断っておきますが、抄訳の内容は筆者の見解でありませんので、ご留意下さい。

バロンズ誌も筆者と同じく、労働市場が力強い状態ではないとの判断から9月利上げを予想していません。商業不動産の減速、一部企業の資金流動不足を掲げるなど、悲観一色。マンハッタンの商業不動産に限って言えば1億ドルのコンドミニアムが2013年の暮れに登場してからベンチマークが切り上がるなど過剰な高騰を示していただけに、当然の成り行きです。そもそも、筆者はテーパリング開始発表後の2014年時点でマンハッタンにおける超高級不動産市場の変化をお伝えしていたので、今さら感は拭えません。

全米としては、未だ過熱感が市場を覆います。グリーン・ストリート・アドバイザーズが算出する商業不動産指数は、8月に125.5と過去最高水準近くを維持する状況です。

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(出所:Green Street Advisors)

マンハッタンが不動産市場の先行指標であれば、他市場が後追いするリスクが残る。Fedが利上げに急ぐよりも前に、上級融資担当者調査では4〜6月期に商業不動産の貸出基準を厳格化したとの報告を確認しており、貸手がガス抜きを始めていることは間違いありません。

(カバー写真:reynermedia/Flickr)

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