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米7月貿易収支、食品の輸出が急増し大幅に赤字縮小

by • September 7, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off2521

Trade Deficit Narrows, Thanks To Foods Export Surge.

米7月貿易収支と米7月製造業受注をおさらいしていきます。

米7月貿易収支は394.74億ドルの赤字となり、市場予想の415億ドル以下にとどまった。前月の446.55億ドル(445.10億ドルから修正)を11.6%下回り4ヵ月ぶりに減少。2015年9月以来の水準へ低水準だった。食品を中心に輸出が伸びた上に輸入が減少し赤字縮小につながった。なおドル名目実効為替レート(広域)は7月に121.93と前月の121.15を超え、2003年4月以来の高水準となる。

内訳をみると、輸出が前月比1.9%増(2ヵ月連続で増加)の1863.32億ドルだった一方で、輸入が0.8%減(4ヵ月ぶりに減少)の2258.05億ドルとなった。国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、582.74億ドル。前月の645.48億ドル(646.92億ドルから修正)を下回り、3ヵ月ぶりの低水準となる。なお2015年の貿易赤字は前年比4.6%増の5315億ドルと、2012年以来で最大を記録した。2014年の5050億ドルに続き、2009年以来の水準まで改善した2013年の4715億ドルから増加した。

JPモルガンのダニエル・シルバー米エコノミストは、結果を受けて「今回の輸出の牽引役は大豆価格が上昇した背景から食品が押し上げた」と振り返る。ただし、ドル高による成長下押し圧力は後退しつつあると予想。米4~6月期国内総生産(GDP)確報値の見通しを「改定値の1.1%増から1.2%増」へ引き上げ、米7~9月期GDPには「当方の予想2%から上振れする可能性を残す」と結んだ。

貿易収支、輸出も輸入も世界景気減速の影響か伸び悩み中。

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(作成:My Big Apple NY)

輸出の内訳をみると、モノは前月比2.9%増と過去5ヵ月間で3回目の増加を示した。ドル高が一服したため、輸出は改善の兆しを見せる。項目別では食品/飲料をはじめ、消費財の増加が目立った。

(増加項目)
・食品/飲料 34.0%増>前月は5.6%増を含め4ヵ月連続で増加
・自動車 3.0%増、3ヵ月ぶりに増加>前月は3.6%減
・産業財 1.4%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は0.3%減
・サービス 0.1%増、前月の0.1%増を含め2ヵ月連続で減増加

(減少項目)
・消費財 0.1%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は2.7%増
・資本財 0.5%減、過去5ヵ月間で2回目の減少<前月は0.8%増

輸入の内訳をみると、モノが1.0%減となり前月の2.3%増から転じ4ヵ月ぶりに減少した。過去5ヵ月間で2回目の減少を示す。原油価格がBREXITなどの影響で40ドル割れを試した6月後半から持ち直すなか、量ベースでの石油製品輸入は6.4%減と減少に転じた。石油製品を除いた場合は0.7%減と下げ幅を縮小しつつ、前月の1.2%増を下回り4ヵ月ぶりに減少。消費財を中心に資本財、自動車などが落ち込んだ。

(増加項目)
・産業財 1.0%増、前月の6.3%増を含め4ヵ月連続で増加
・食品/飲料 1.9%増>前月は3.2%減から転じ過去5ヵ月間で2回目の増加

(減少項目)
・消費財 3.0%減、4ヵ月ぶりに減少<前月は3.9%増
・資本財 1.5%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は2.1%増、
・自動車 0.2%減、2ヵ月連続で減少>前月は2.0%減

国別でのモノの貿易収支動向をみると、中国への赤字は前月比1.9%増の303.30億ドルと前月から増加に転じた。日本への赤字は3.6%増の60.89億ドルと、2ヵ月連続で増加。欧州全体への赤字額は0.3%増の149.54億ドルと、小幅増に転じた。そのうち英国は4億ドルの黒字となり、前月に続き黒字を計上した。BREXITを経て、貿易動向の変化が注目される。

主な原油輸出国への貿易収支は、まちまち。原油先物の上昇を背景にカナダへの貿易収支は7.42億ドルの赤字と、前月の7500万ドルの赤字から10倍近く拡大した。石油輸出国機構(OPEC)への赤字は前月比4.4%増の15.35億ドルへ拡大。一方で、メキシコのみ赤字額が11.7%減の47.22億ドルへ縮小した。以下は、今回の貿易収支における輸出と輸入の内訳のほか各国ごとのモノの貿易収支動向。
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(作成:My Big Apple NY)

▽米7月製造業受注・出荷は増加も、在庫が減少トレンド維持

米7月製造業受注は前月比1.9%減となり、市場予想の2.0%増を下回った。前月の1.8%減(1.5%減から下方修正)は超え、3ヵ月ぶりに減少。民間航空機など輸送機器を除く場合は1.3%増と、市場予想並びに前月の1.5%増に届かず。コア資本財受注(民間航空機を除く非防衛財)は1.5%増と、速報値の1.6%増を下回りつつ2ヵ月連続で増加した。

製造業出荷は0.2%減と、前月の0.6%増(修正値)を下回り、5ヵ月ぶりに減少した。国内総生産(GDP)に反映されるコア資本財の出荷は0.5%減と、速報値の0.4%減より下げ幅を広げた。3ヵ月連続で減少している。

製造業在庫は0.1%増と、前月の±0%から増加に転じた。少なくとも年初来で初めての増加を示す。出荷が減少したものの小幅にとどまったため、在庫相当は2ヵ月連続で1.35ヵ月にとどまった。

――米7月貿易収支までの米経済指標を受けて、アトランタ地区連銀は2日に米7~9月期GDP予測値を3.5%増とし従来の3.2%増から上方修正しました。NY連銀は2.8%増で、変更せず。実現すれば前期比年率5.0%増を達成した2014年7~9月期以来の高成長となる公算。エコノミスト平均値である2.3%付近を大幅に上回ります。

ただし貿易収支の赤字が7月の低水準を維持するかは、不透明です。世界景気の歩みが鈍い上に、今回は食品の輸出が前月の5.6%増から34%増へ急増した点が大きい。全体的に増加がみられるとはいえ、大豆が3倍増の51億7200万ドルと突出しています。要因としては、①6月に価格が急伸、①大豆生産2位のブラジルで気候要因を背景に不作、米国への各国の輸入依存が拡大――といった2点が挙げられます。既に大豆は8月に高値から下落に転じているため、米国の大豆輸出が赤字縮小につながるとは言い切れません。従って、GDPに対する寄与度が高まるかには、疑問が残ります。

米7月製造業受注はコア資本財の受注が増加したため、同出荷がマイナスでも今後回復する期待を残します。貿易の寄与度は中立となる見通しも重なり、米7~9月期GDPは上半期の1%から少なくとも2%台を確保する見通しです。

(カバー写真:Louis Vest/Flickr)

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