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12月FOMC議事録、財政出動を受けた景気次第で再投資の修正示唆

by • January 5, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1520

December FOMC Minutes Turn More Hawkish Than Expected.

12月13~14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録は、声明文よりタカ派寄りな内容にシフトしていました。声明文では労働市場やインフレの表現を上方修正し、経済見通しリスクは「ほぼ均衡」で据え置いたものの、トランプ次期大統領による財政出動で景気が上振れするリスクをほぼ全員が認識していたといいます。さらに、景気上振れ局面では利上げペースの加速に加え、再投資政策の変更すら検討に入るとサインを点灯させました。以下は、FOMC議事録の詳細。

▽利上げをめぐる協議
・ほぼ全員(most)の参加者がゆるやかな利上げが適切との見解で一致。
経済動向が明確になった段階で、政策への道筋を調整する必要性を強調
・財政並びに経済政策への不透明感の高まりを指摘。
多くの(many)参加者は、失業率が長期的に標準とする水準を大幅に下回り利上げを現時点より早いペースで行うリスクが高まったと認識
・投票メンバーのうち複数(several)は、労働市場が急速にひっ迫した場合はFF金利の道筋に対するコミュニケーション手段を調整する必要があると指摘
複数の参加者は、利上げへの道筋を変更せざるを得ない場合には償還を迎えた米国債や政府機関債の元本を再投資する動きにも示唆を与える可能性もあるとした。

▽経済動向
・将来の財政、経済政策への見通し不透明感を指摘。
・数年先の財政政策が拡大方向へ傾くとの見地から、ほぼ全員(almost all)が成長見通しに上振れリスクが高まったと認識。
・複数(several)の参加者は、海外経済が予想を上回り米経済に上振れリスクを押し上げる可能性や米国内の企業投資が加速する余地を指摘。
・下振れリスクには、ドル高や一部の国々における金融市場の混乱(筆者注:中国やドル高の影響を受けるエマージング国を念頭?)、下限に近いFF金利の水準(引き下げの余地が狭いため)を挙げた。
・数人(some)の参加者は、景気に大いなる上振れリスクのほか賃上げ幅の拡大を予想。原油価格やの動向も、インフレを引き上げる可能性があると指摘。
・ただし複数の参加者は、一段のドル高がインフレを抑制するとの考えを表明

・家計支出は株高や住宅価格の上昇など、資産価格の引き上げを背景にポジティブ。
・企業の設備投資は低調な、受注や掘削リグ稼働数は共に改善。
・複数の地区連銀では、製造業の回復や短期での生産見通しに明るさが訪れる。
・原油価格が現状通り底堅く推移すれば、エネルギー生産が回復すると予想。
・各連銀は、多くの企業側からの報告が経済見通しに非常に楽観寄りにシフトしたと報告。企業の一角からはインフラ投資、税制改革、規制緩和を理由に挙げた。
・ただし一部の企業は、提案された内容が業務に悪影響を与えるとして、不透明感を示した。

・労働市場は事前予想より強まると予想、失業率は数年先、長期的に標準とされる水準を下回る見通し。
・数人の参加者は、失業率の低下に伴うインフレ圧力の高まりを懸念。
・ほとんどの(most of)参加者は、経済成長が予想通りゆるやかにとどまれば失業率は長期的に標準と想定される水準を小幅に下回ると見込む一方、複数はさらなる低下を予想。
多くの参加者は経済見通しが明るみになるに伴い、最大限の雇用とインフレ目標2%に沿い時宜にかなった金融政策の調整が必要と認識

タカの翼を広げんと、虎視眈々のFed。

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(出所:Bob/Flickr)

・スタッフは財政刺激を通じ向こう数年の成長見通しを小幅に引き上げたが、長期的金利見通しの引き上げやドル高によりポジティブな効果が削がれると予想。引き続きGDP見通しに下振れリスクがあるとの見方を残しつつ、金融政策は負の影響より景気強含みのリスクに対応しやすいとも付け加え、2017年のFOMCメンバー利上げ回数予想・中央値を2回から3回へ引き上げた動きと整合性を保った。
・スタッフは、海外要因を下振れリスクに挙げたほか、需要の鈍化をにらみ失業率には上振れリスクを見込む。長期的にはドル高を背景に、下方向を予想
・スタッフはインフレをめぐり、原油価格の持ち直しを受けて上方修正した。ただし、2019年に至っても目標値2%にわずかながら届かないとの予想を維持。

▽海外動向、金融市場
・ほとんどの参加者は、金融市場での大いなる変化すなわち長期金利の上昇に加えドル高、米株高、信用スプレッドの縮小などは、法人税減税をはじめとしたより拡大的な財政政策への期待感によるものと認識。
・多くの参加者は足元の経済見通しに基づき金融市場動向を評価する上で慎重となる必要性を表明し、減税策や規制緩和がグローバル経済並びに金融市場にどのような影響を与えるか注視する。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、ケイト・デビッドソン記者による「FOMC議事録、トランプ新政権が与える影響に大きな不透明性に言及(Fed Minutes Cite ‘Considerable Uncertainty’ About Trump’s Impact on Economy)」と題した記事を配信した。議事録ではトランプ氏の名前が登場しなかったものの、新政権が与える経済への影響についてFOMC参加者が活発に議論したと伝えている。

――JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストが指摘したように、2016年10月にイエレンFRB議長が提示した「高圧経済」の風呂敷を畳んだ理由が垣間見れます。失業率の「大幅低下(undershoot)」という文言が6回登場するなか、インフレ上昇リスクをはじめ金融政策の変更、政策道筋に関するコミュニケーション手段の調整が必要との認識を4回表明していました。イエレンFRB議長の記者会見通り、トランプ新政権が拡大的な財政政策へ舵を切り景気が過熱するようであれば、利上げペースを加速させると警告を放っています。それだけでは飽き足らず、償還された米国債や政府機関債の元本の再投資まで調整する示唆を与えました。

再投資策は約10年ぶりの利上げに踏み切った2015年12月FOMC声明文「FF金利の正常化が十分進んだ状況にたどり着くまで実施すると」方針を明らかにしており、2回利上げを行った時点で変更してくる予定ではなかったはずです。どう考えても、トランプ新政権に牽制球を放ったとしか考えられません。トランプ次期大統領がイエレンFRB議長の変化を読み取るとは思えませんが・・。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)

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