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バロンズ:世界は通貨戦争の引き金を引くのか

by • January 8, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1018

Barron’s : Facing The Worst Currency War This Year?

バロンズ誌、今週のカバーは”素晴らしいファンドの選び方=How To Pick Great Funds”を掲げる。金融危機以来、投資家はアクティブ運用を避けパッシブ運用へ資金を流入させてきたが、同誌はむしろ2017年にアクティブ運用を推奨する。2015年まで失望を誘うパフォーマーだったものの、アクティブ運用は2016年に復活の兆しをみせてきた。2017年こそ花咲く頃と予想し、同誌はAllianzGI NFJ Dividend Value (PNEAX) 、DFA U.S. Large Cap Value (DFLVX) など7銘柄を推奨する。詳細は、本誌でご確認下さい。

当サイトが定点観測するコラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートはランダル・フォーサイス氏が2週の休暇を経てカムバックしトランプ政権発足後に生じうる通貨戦争のリスクを挙げる。抄訳は、以下の通り。

世界貿易に立ち上る脅威:通貨戦争—The Growing Threat to Global Trade: a Currency War.

人はなぜか切りの良い数字を好む。数学の世界にある通り円周率3.14159・・は割り切れないものの、市場関係者はダウの2万ドル突破を待ち望んでいる。

中国人も特定の数字を好むという。例えば8は幸運の数字と位置づけられ、北京五輪が2008年8月8日に開催されたのは偶然ではない。例えば住宅価格が188万8,888ドルなら、それは中国人投資家を惹き付けるためだ。市場関係者の間では7という数字が意味を持ち始め、人民元が1ドル=7元に達するとの観測はまるでダウの2万ドル突破のように必然的と捉えられている。ただ、その水準をいつ超えるかというより、如何にして突破するかが重要な意味を持つのではないか。

前週末に中国金融当局は香港銀行間取引金利(HIBOR)翌日物を38.3%から61.3%(フィボナッチ好きな市場関係者にとっては重要な数字)へ引き上げ、人民元が1ドル=7元へ向かうと予想した投機家のショートスクイーズを招くという古典的な技を持ち込んだ。おかげで人民元は前週の4〜5日の2日間で2%も急騰し、6日のフィキシングでは1ドル=6.8668元をつけた。その裏で、ビットコインが23%も落ち込んだものだ。

サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、「今こそオフショア人民元は買い時」と指摘

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(出所:SCMP

こうした一連の動きは、トランプ次期大統領の就任前に世界の経済大国たる米中が直面する謎をハイライトさせている。新政権の始動前、トランプ次期大統領は1回に140文字しか盛り込めないツイッターでゼネラル・モーターズ、トヨタにメキシコ工場での生産あるいは新工場建設を名指しで批判した。フォードに至っては、16億ドルに及ぶ新たなメキシコ工場の建設を断念したほどだ。フォードの決断に加え、トランプ次期大統領が「これは、ただ始まりに過ぎない(This is just the begginig)」とつぶやいたため、メキシコ・ペソは予想通り売り圧力に瀕している。

トランプ次期大統領がメキシコからの輸入品に関税を課すと主張する一方、為替は貿易の中核であり真っ先に貿易フローに影響を与える。トランプ氏の発言通り就任1日目に中国に対し「為替操作国(currency manipulator)」とのレッテルを貼れば、人民元の下落を招くと同時に中国の輸出競争力を高めるだろう

結果的に、それぞれの国が自国通貨の価値を下げようとし通貨戦争をもたらしかねない。最終的に世界貿易や金融市場を混乱させるだろう。何としても回避しなければならない展開だが、あり得ないとは言い難い。

人民元は、バスケット通貨に対しては比較的安定している。新年早々、中国はバスケット通貨の構成を13通貨から11通貨追加しほぼ倍増させ、ドルの比重を4%引き下げ22.4%とした。

ハイ・フリクエンシー・エコノミクスのカール・ワインバーグ代表は、中国当局が世界での取引に人民元の利用を活発化させ上海を次世代のグローバル金融都市へ引き上げようとしているという。国際決済通貨としての地位を奪われることは米国にとって悪い知らせに過ぎず、トランプ次期政権が通商政策で冒険に走るきっかけを与えかねない。トランプ次期大統領が指名した商務長官に指名したウィルバー・ロス氏や新設した国家通商会議のトップにピーター・ナバロ氏は対中強硬派で知られ、米国通商代表にはレーガン政権での通商代表次席で中国に厳しい批判を展開してきたロバート・ライトハイザー氏に白羽の矢を立てた。

米中関係が世界経済の主たるリスク要因とされるいま、バンク・オブ・アメリカのグローバル・エコノミストであるイーサン・ハリス氏は「専門家や投資家にとって問題は、中国が経済や外交、軍事の面で新たな力を行使するのか、そして米国がどのように対応するかである」。アジアは、中東に取って変わって世界経済のリスク震源地となってしまった。原油価格が急落した1973年、1979年、1990年、2008年に米国並びに世界は景気後退に陥った。いまや、世界をつなぐグローバルなサプライチェーンがいかに破壊されるかがカギとなる。

ハリス氏によればトランプ新政権の狙いは対中貿易赤字の縮小にあり、3つの手段が考えられる。第一に「為替操作国」と名指しすること、第二に世界貿易機関(WTO)と米国の規定に従い争うこと、第三に米企業の機密情報の取得など不正な行為を止めるために米大統領としてあらゆる法的手段を行使することにある。中国の大気汚染問題など米中で協力できる分野はあれど、人民元の下落をドル売り介入で阻止している状況もあって、中国が「為替操作国」の名指しを甘んじて受けるとは考え難い。中国は人民元の下落を食い止めようとドル売り・元買い介入を行っており、外貨準備高は2016年12月末時点で3.01兆ドルと前月末から410億ドル近く減少した。

ハリス氏によると、トランプ次期大統領が中国を「為替操作国」と認定した場合の対抗策として、一部の中国人研究者の間で「むしろ為替相場を変動相場制へ移行させ一段安に持ち込むべきとの見解が浮上している」ようだ。もちろん、中国版ベージュブックの議長であるリランド・ミラー氏の見解を基に、マネー・ストロングのダニエル・ディマルティノ・ブース氏が指摘するように「中国が最も回避したいものこそ、人民元の変動相場制への移行である」とも考えられよう。習近平主席その人が変動相場制に移行しないと確約してきたほか、人民元が変動相場制へ移行した後に急落すれば、人民元安の対抗措置として各国が自国通貨切り下げに動くリスクが高まるためだ。

8つの金融危機を分析した名著”国家は破綻する(This time is different)”で知られるカルメン・ラインハート氏が提示したように、問題はドル高に喘ぐ米国が新たなプラザ合意を中国に求めてくるか、である。

現状では1985年と比べ、現状はドルがバスケット通貨に対し2011年から35%の上昇を遂げたことを除けば異なる点が多い。例えば、いまドル安方向で協調介入しても円高は物価を押し上げるという日銀の努力を水泡に帰する結果を招きかねない。ドイツは通貨高を歓迎するかもしれないが今はユーロを導入し単独で行動できず、イタリアのように銀行問題を抱えるなかではユーロ安は神の思し召しのようなものだ。

資本流出という挑戦に直面する中国にとっても、プラザ合意後の日本の経済成長の減速を振り返れば通貨高はリスクと判断するだろう。誰もが協調介入するメリットを見出さないならば、米国が単独で介入するしかない——ラインハート氏は、そう予想する。

中国を「為替操作国」として認定し単独介入に踏み切れば、米国の為替政策に極端な変化を加えるだろう。米国こそ「為替操作国」と判断され、ドル安を引き起こしかねない。米連邦準備制度理事会(FRB)による金融政策の変化も、直接介入の効果を与えてきた。長期金利を低下させた量的緩和策はエマージング国から米国の輸出を刺激していると批判を受けたものだ。

2016年はドル高・人民元安、世界株安と過去最悪のスタートを切った。2月に株式市場が最悪期を脱した理由はドル高が収まり安定圏内に入ったためで、おかげで原油相場が落ち着きを取り戻したものである。当時の教訓を汲み取れば、安定的な通貨こそ金融市場と経済動向に望ましい。通貨戦争は、ウィン・ウィンならぬ互いに敗北するルーズ・ルーズな結果を生む。ブース氏が孫子の”兵法”を引用する通り「戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」であろう。

——中国の人民元が対ドルで急伸した背景につき、一部では11日に米大統領選で初めてとなるトランプ次期大統領の記者会見を挙げ、ここに配慮し人民元を押し上げたとの解釈が広がっています。真偽のほどは別として、外貨準備高が1月に3兆ドルの分岐点を割り込むリスクが確実に高まったと言える。一方で、クリスマスに空母”遼寧”が初めて”第1列島線”を突破し太平洋を航行しただけでなく、年明け2日にも南シナ海で初の発着艦訓練を実施した事実を忘れてはならないでしょう。米国に配慮したと見せかけ相手の虚を突く可能性も否定できず、中国内の米企業に対する取り締まり強化もその一つと考えられます。トランプ米大統領の誕生前、両国間で心理戦の火蓋が切って落とされたことは間違いありません。

個人的には、財務長官に指名されたムニューチン氏がどれだけ対中強硬寄りへ傾くかも注目しています。ムニューチン氏と言えば映画”アバター”などで知られる通りハリウッドとの関係が強固で、その米国映画界と言えば2014年の”トランスフォーマー/ロストエイジ”をはじめ中国に配慮した作品が数多く並び、2016年でも”インディペンデンス・デイ:リサージェンス”や”ローグワン/スター・ウォーズ・ストーリー”など大作もその例に漏れません。勿論トランプ氏のお眼鏡にかなっただけに粛々と仕事をこなすのでしょうが、現実的な妥協点を引き出す役割を担う可能性も否定できないでしょう。

(カバー写真:Lei Han/Flickr)

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