4959128614_9bed00b35f_z copy

バロンズ:米経済に忍び寄る自動車ローン市場の悪化

by • April 2, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off685

Barron’s : Auto Loan Stresses Could Impact U.S. Economy.

バロンズ誌、今週のカバーはスポーツ衣料大手アンダーアーマーを取り上げる。かつてはS&P500構成銘柄で最も注目されてきたものの、株価は1年半前の53ドルから20ドル付近と55%も沈んだ。しかし同社がユニフォームを提供した大学(サウスカロライナ大学)が初めて、全米大学体育協会(NCAA)バスケット・トーナメント男子で決勝戦へたどり着いた。全米バスケットボール協会(NBA)ではゴールデンステート・ウォリアーズのステフィン・カリー選手などをスター選手を擁するためスニーカーの売上にも期待を残し、同誌は株価が今後1年間で30%上昇すると見込む。詳細は、本誌をご覧下さい。

銀行、Fed、経済に対する恐怖博士の診断=Dr. Doom’s Diagnosis of the Banks, the Fed, and the Economy.

米連邦公開市場委員会(FOMC)の高官や億万長者の投資家がTV出演し市場を動かす以前、”クレジット・オン・コメンツ”と題したソロモン・ブラザーズのチーフエコノミスト、ヘンリー・カウフマン氏によるレポートが重宝された。ソロモン・ブラザーズの繁栄期が1970〜80年代だったため、一部の読者には聞き覚えがないかもしれない。カウフマン氏は常に悲観的でかつ予知能力の高さで知られ、FF金利とインフレが未曾有の2桁水準へに到達すると予想し、恐怖博士(Dr. Doom)の称号を得た。

カウフマン氏の最新の著書”金融市場、人々、政治、機関における地殻変動(Tectonic Shifts in Financial Markets: People, Policies, and Institutions)”では、金融危機を経てどのように現在の状況に至ったか重要な示唆を与える。特に興味深い点は、市場の注目がトランプ政権の経済政策へ移ったとはいえ、Fedが過去の政策の失敗を経てかつてない存在感を得たことにある。

カウフマン氏によるとアラン・グリーンスパン元FRB議長とベン・バーナンキ前FRB議長は、住宅ローン担保証券などサブプライム危機の引き金を引いたストラクチャー・ファイナンスの変化を正確に把握できなかった銀行と証券を分離するグラス・スティーガル法の撤廃も失策であり、メガバンクの一角に金融資産を集中させたため流動性を与えるマーケット・メーカーの範囲と深化を妨げてしまった。ドッド・フランク法は金融市場での集権化を悪化させたに過ぎず、その結果、Fedへの依存性が高まった。

長期金利はその間、低迷を続け米30年債利回りは2016年7月に2.1%まで落ち込んだ。しかし、1950年の2.5%から1981年には15.25%まで上昇しており、急激な上昇が再現することはなくとも長期金利は債務上限引き上げ問題が深刻化した2011年頃の4〜5%付近へ戻らないとは限らない。2007年8月、金融危機が発生する1年1ヵ月前にも、5%に達していた。

カウフマン氏によれば景気拡大期もあまりに長く続き、長期にわたる労働参加率の低迷にも関わらず労働資源は天井を迎えつつある。Fedは3月、25bpの追加利上げを行い0.75〜1.0%ヘ引き上げた。

ただし、金融市場の脆弱さは利上げ幅を今後抑える可能性があり金利以外の手段を講じる余地が出てくるとカウフマン氏は予想する。信用市場で既に脆弱性が見て取れ、カウフマン氏いわく自動車ローンがまさに格好の例だ。かつてのように政策金利を引き上げられない以上、融資の厳格化を余儀なくされるだろう。

自動車ローン組成額、信用スコア別シェアでもサブプライム層は低下。

auto-e1487587518239
(出所:My Big Apple NY)

金融市場の脆弱さが金融政策に制限を課すもののマーケットメーカーの不足がFedへの依存を強める現状、中央銀行が政治の標的とならざるを得ない。トランプ米大統領は、2018年1月末で任期切れを迎えるイエレンFRB議長や同年6月の任期満了を予定するフィッシャーFRB副議長を再指名することはないだろう。タルーロFRB理事が4月に退任するためFRB理事は3人が空席であり、2018年にトランプ米大統領が指名できるFRB高官は合計5人となる。

トランプ米大統領が指名する理事について、カウフマン氏は”リベラル”寄りになると見込む。つまり、財政刺激が与えられる環境でも緩和寄りな政策を続けるような人物だ。トランプ支持者は、Fedが長きにわたり低金利を継続し資産価格を吊り上げ富裕層に恩恵を与えた一方で貯蓄に頼る者に弊害を与えてきたと批判してきたが、その逆をいく見通しである。

カウフマン氏の著書では、締めくくりに「二度と家に帰れない」と記す。これは、時計の針は単純だった時代に戻れないという意味だ。理想的に言えば一つの会社が全般的な仕事を請け負う利益相反に直面するより、小規模な企業は独自の特殊性を活かしたニッチ産業に集中し、投資銀行は投資銀行に集中し、運用会社は運用会社の仕事をすべきだろう。しかし現代では金融機関が準公共機関となりつつあり、Fedの干渉が増すばかりだ。

自動車市場における信用問題は、カウフマン氏が指摘する通り明確になりつつある。あるマネーマネージャーは2年前、自動車の資産担保証券(ABS)をめぐり「今回は違う」状況を説明していた。住宅の場合、差し押さえには数年もの時間を要するが、担保となる自動車ローンの場合は回収屋により1日で済む。かつて中古車市場は力強く価格も高水準にあるため、差し押さえられた車は売られ、新しいローンが組成されてきた。

しかし、今は違う。新車に近い中古車市場は供給過剰にあり、3年前の自動車モデルのリースが溢れる状況だ。バロンズ誌では中古車ディーラーのカーマックスを取り上げ、リスキーの借入の増加に合わせ株価が下落すると警告していた。

マクロメイブンズのステファニー・ポンボイ氏も、「クレイジーな自動車ローン・バブルは遂に崩壊した」と語る。自動車ローンの返済額を抑えるため買い手は借入期間は7年以上へ延ばし、高額なスポーツ多目的車(SUV)やトラックを購入してきた。こうしたローンはABSと化し、低金利環境下で投資家が買い漁ってきたものだ。

ポンボイ氏によれば、こうした流れが不可避なる果実を実らせる。自動車在庫がうず高く積み上がり、新車購入に向けインセンティブ競争が激化し、中古車価格が一段と下落しかねない。こうした連鎖反応は自動車メーカーなど製造業にも波及し雇用や労働時間に悪影響を及ぼすだけでなく、税収を縮小させ州政府・地方政府の支出を増やす。

クレジットカードやホームエクィティ・ローンの未払率は、ポンボイ氏の説明では現時点で3年ぶり高水準だ。そのような状況下、グリーンライト・キャピタルのデビッド・アインホーン氏はゼネラル・モーターズ(GM)に株式を2種分割を要請し1つは高配当を、片方は自社株買いなどの全収益に受益権を付与するよう求めた。格付け会社のムーディーズやS&Pは、GMの格付けを低下させると懸念を寄せる。

カウフマン氏が指摘した通り、自動車ローンなど証券化にみられる市場のイノベーションはあまり理解されていない。聖書によると、ヨセフは豊作の時期に干ばつに備え穀物を蓄えるよう助言した。アインホーン氏の計画はGMの利益を無駄遣いさせ、今まさに自動車ローンで緊張が生じるなか、将来の困難な時期への蓄えを阻害しかねない。

——NY連銀が発表する家計債務動向で指摘させて頂いた通り、自動車ローンは延滞率が上昇中で90日以上は3.75%と2013年以来の水準でした。トランプ政権の税制改革とインフラ投資で景気が刺激されれば自動車市場の不安を吹き飛ばす期待が残るものの、年内成立の可能性は高いとは言い切れません。新車販売台数も、1月と2月は昨年の年率1,748万台、1,747万台からそれぞれ前年同月から減少しました。2年連続で過去最高を記録した2016年の新車販売台数を踏まえれば高水準を維持するとはいえ、銀行の融資姿勢も厳格化しつつあり自動車市場が好調なペースを維持するかは疑問を禁じ得ません。

(カバー写真:Paul Sableman/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.