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バロンズ:ダウが最高値を更新中、FRB議長の後任探しは終盤へ?

by • July 16, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off820

Barron’s : Record High Dow, Low Volatility, New Fed Chair.

バロンズ誌、今週のカバーはエネルギー関連の推奨銘柄を挙げる。同誌では値ごろ感のある銘柄として、エクソン・モービル、シェブロンの石油メジャーのほかカナディアン・ナチュラル・リソーシズ、サンコール・エナジー、アバッチ、EOGリソーシズ、カボット・オイル・アンド・ガス、レンジ・リソーシズの8銘柄を掲げていた。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は最高値を更新し続けるダウに焦点を当てる内容ながら、軸は米連邦準備制度理事会(FRB)議長に寄せている。抄訳は、以下の通り。

過去最高値をつけるダウに忍び寄る危機—The Dangers of a Record Dow.

7月14日までの週にダウとS&P500は最高値で引け、それぞれ週足で1.4%高、1%高を遂げた。ナスダックも週足で2.6%高を示し、過去2番目の上昇率を達成している。とはいえ、一連の上昇は特別の材料が背景にあったわけではない。その間に、S&P500のオプション取引動向で表されるVIX指数は10を割り込んだ。

しかも、米株相場は調整らしい調整を経験していない。調整相場の定義とされる10%安どころか、LPLフィナンシャルのシニア・マーケット・ストラテジスト、ライアン・デトリック氏に言わせれば過去1年間にわたって5%も下落していない1950年以降、1年以上も5%安を経験していなかったケースは6回しかなく、下落率でいえば1995年以降で最低にとどまる。

ウィリアム・ブレアのヘッド・オブ・ザ・ダイナミック・アロケーションのブライアン・シンガー氏が「穏やかな航海は技能を持った船乗りを育てない」言いたくなるのも、当然だろう。確かに2011年7〜9月期の欧州債務危機以来、危機らしい危機は発生していない。しかも中央銀行が流動性をもたらし、バーゼルIIIやドッド・フランク法の施行がボラティリティを抑えてきた。

エバーコアISIのような強気派すら、前週に”Creating Another Asse Bubble, a la the 1990s”と題したレポートを発行し、懸念を寄せ始めている。中央銀行による流動性供給は津波を引き起こし、財や賃金などのインフレではなく資産価格のインフレをもたらしたという。ただ米6月消費者物価指数(CPI)が前年比1.6%の上昇、コアCPIで同1.7%とFedのインフレ目標値2%からかけ離れるなか、財やサービスでインフレが停滞しているのは必ずしも金融政策の影響ではなくテクノロジーやグローバリゼーションに左右されていそうだ。例えば、オンライン小売最大手アマゾンによる健康食品系スーパーのホールフーズ・マーケットの買収はディスインフレ効果を与えうる。

米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が半期に一度の議会証言を行うタイミングに合わせ、ポリティコは次期FRB議長としてトランプ政権が国家経済会議(NEC)のコーン議長を指名すると報じた。議会証言では、続投する意思があるかとの質問が飛び出したものだ。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が63人のエコノミストを対象に調査したところ、現状での後任候補の最右翼は他ならぬイエレンFRB議長で20.8%と、わずかながら頭ひとつ抜き出ている。コーンNEC議長は、13.7%程度だ。

仮にコーンNEC議長がFRB議長に就任すれば、ブッシュ政権(息子)で副大統領候補を探していたディック・チェイニー氏自身が副大統領に着任する場合と似ている。コーン氏と言えばゴールドマン・サックス(GS)出身であり、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁やイングランド銀行のカーニー総裁も同様で、連携を取るには申し分ないだろう。

6月12日の閣僚会議はティラーソン国務長官とマティス国防長官以外、トランプ米大統領への賛辞を送ったとあれていますが、コーンNEC議長がその場にいたらどう応じていたのでしょうか?

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(出所:camilaff/Flickr)

米国でGS出身者は、中央銀行のトップではなく財務長官の座を射止めるケースが多い。例えばクリントン政権でのロバート・ルービン氏、ブッシュ政権(息子)でのヘンリー・ポールソン氏が思い出されよう。仮にコーン氏がFRB議長の座に就けば、カーター政権で就任したウィリアム・ミラー氏以来となる博士号取得していない議長となる。当時のミラー氏はインフレを封じ込められず、任期わずか17ヵ月でポール・ボルカー新FRB議長にインフレ対応策を任せねばならなくなった

金融業界出身者のFRB議長は、過去にも存在した。ウィリアム・マクチェスニー・マーティン氏は1951年から1970年にかけFRB議長を務め、着任以前は”ウォールストリートの奇跡の男”と評価され、ニューヨーク証券取引所の社長として初めて給与を支払われた人物でもある。その後、財務次官としてワシントンへ向かいFRB議長に就任した。

FRB議長の職は、経済学と政治がまみえる領域だ。1960年の米大統領選を迎え、リチャード・ニクソン副大統領(当時)は自身でFRB議長を選びたいと考えていた。尊敬されるエコノミストだったアーサー・バーンズ氏は当時、金融と財政の引き締めは成長を阻害し、ジョン・F・ケネディ候補との戦いで敗北をもたらすと助言したとされる。ニクソン氏はホワイトハウス入りした暁に自身に忠実な人材を集め、FRB議長にバーンズ氏を指名した。その結果がレトン・ウッズ体制の崩壊、ドル安、マネーの拡大、原油価格の高騰、そしてスタグフレーションである。

マーティン氏のように、ボルカー氏はFRB議長として中銀の独立性を確立した。レーガン政権の指名を受け1987年に着任したアラン・グリーンスパン氏は、1992年にブッシュ米大統領(当時)が選挙に敗北した時に責任を擦り付けられた。クリントン政権では同大統領による初の議会演説でヒラリー夫人の隣の席を陣取っていたものだ。ブッシュ政権(息子)の時代には、金融危機が発生するまで”マエストロ”と崇められるようになる。歴史が示すように、FRB議長は政治と癒着するより断固たる独立性を保っていた方が良い経済に好影響を与えやすい

コーン氏が何を考えているかは知る由もないが、大人気ミュージカル”ハミルトン”の歌にある通り”何かが起こる部屋”にいることは確かで、ホワイトハウスがそれにあたるだろう。NEC議長として、コーン氏はトランプ米大統領選が目指す政策立案を推進してきた。トランプ米大統領は低金利支持派と発言したが、FRB議長を務める人物にはそれ以外の何かを求めるに違いない。

——バロンズ誌と言えば、ニューズコープの傘下であり会長はルパート・マードック氏で、トランプ米大統領と懇意で知られます。英フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで同席していたとも報じられていましたね。WSJ紙のジェラルド・ベーカー編集長はトランプ米大統領に関わる報道が手ぬるいとの批判を何度かかわしたとされ、ピュリッツァー賞を受賞した高名なコラムニスト、ブレント・スティーブンス氏が妻のニューヨーク・タイムズ紙に移籍した理由も編集方針との衝突と囁かれています。それでもベテランのコラムニストで、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートのランダル・フォーサイス氏は静かにペンで攻撃した格好です。

コーンNEC議長がFRB議長に就任すれば、アーサー・バーンズ氏以来のイエスマン議長の登場で経済に打撃を与えると指摘したも同然ですから。FRB議長が交代するタイミングでは相場が荒れやすくなり、1987年10月19日にはブラックフライデーが直撃したことはご案内の通り。トランプ米大統領は過去を振り返ることなく、独自路線を貫きFRB議長を指名してくるのか。少なくとも、イエレンFRB議長がジャクソン・ホール会合に出席するかがひとつのヒントを与えてくれるでしょう。

(カバー写真:Ken Mayer/Flickr)

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