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バロンズ:ハリケーン後の財政政策、非防衛支出拡大を促すのか

by • September 10, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off890

Barron’s : Hurricane Effect To Fiscal Policy Could Be “Spending Spree”.

バロンズ誌、今週のカバーはナイキを取り上げる。タイトルは同社のキャッチコピーをもじって”Just Don’t Do It”。1980年に上場した当時、ナイキ株を1,000ドル相当を取得した投資家は、2015年までに70万ドル以上のリターンを手にしたことだろう。しかし、2015年以降でナイキ株は16%近くも下落した。特にランニング・シューズでシェアを奪われ、ナイキを猛追してきた独の競合アディダスは2016年に同セクターでトップを奪取している。こうした現状を踏まえ、バロンズ誌はむこう1年でナイキ株について10%安を見込む。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週はトランプ政権とハリケーン後の財政政策に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

トランプと財政赤字の妙技—Trump and the Art of the Deficit.

「これが私の道理であり、もし君たちが気に入らないなら、他にもあるぞ」という名言を残したアメリカの有名なコメディアン、グルーチョ・マルクスは、今ごろホワイトハウスの動向を見つめながら笑っているに違いない。トランプ政権は6日、共和党だけではなく民主党の力を借りて3ヵ月間(12月15日まで)の債務上限引き上げと政府機関運営資金の確保、並びにハリケーン”ハービー”の災害救済基金引き上げの合意に至った。チャック・シューマー上院院内総務、ナンシー・ペロシ下院院内総務とテーブルを挟んだトランプ大統領の写真は、各メディアを飾ったものである。ハリケーン”イルマ”が迫る事情もあり、人道的措置として必要とみなされたのだろう。

しかし、一つ明白な点は財政赤字が膨らむということだ。ホライゾン・インベストメンツのグレッグ・バリエール氏いわく、民主党との連携の代償は支出拡大である。同氏は、トランプ大統領に対し「減税とインフラ投資のような財政赤字につながる政策は経済成長のためなら容認できると考え、それはスティーブ・バノン前首席補佐官と同様の考えである」とも指摘していた。米10年債利回りが2%割れに接近しているなかで、自身を”債務王(King of Debt)”と呼ぶトランプ大統領にとっては問題ないのかもしれないが、共和党の財政タカ派には、恐ろしい事態だ。

バリエール氏いわく、仮に経済が完全雇用状態だとしても2020年に財政赤字は8,000億ドルに及ぶ見通しだ。金利が低水準であれば、許容できるのだろう。減税が支出拡大の妨げにならない点も重要だが、民主党が介入する上では富裕層向けの減税は見込みづらい。いずれにしても、ライアン下院議長、トランプ大統領、民主党全てが”勝ち”を求めると考えれば、犠牲になるのは財政タカ派しか考えられない。

マクロメイブンズのステファニー・ポンボイ氏は、ハリケーン”ハービー”を踏まえトランプ大統領と議会指導部が合意する以前から支出拡大を見込んでいた。減税幅に期待しない一方で非防衛支出は拡大すると予想。同氏の分析では非防衛支出は国内総生産(GDP)比で2007〜09年の16%から直近では13%まで低下してきたが、これが改善する見通しで、問題は「もしも(if)でなく、いつ(when)か」だという。

非防衛支出拡大の行く末は、ダニエル・ディマルティノ・ブース氏に言わせれば「建設」だ。非住宅建設支出は、公共と民間ともに過去6年間で最も早いペースで落ち込んでいる。住宅販売も価格上昇を背景に需要が低下してきた。しかし、ハリケーン”ハービー”の復興需要を契機に建設需要が盛り返し、住宅販売も明るさを取り戻しうる。ブース氏によれば、ハリケーンの被害に遭った地域はスウェーデン並みのGDPなのだから、在庫が膨らむ自動車も、同様の恩恵を得られるだろう。GDPの押し上げ効果は、10〜12月期に確認されるに違いない。ただし、財政赤字となれば話は別だ。

財政赤字、2017年はGDP比4%の予想も・・。

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(作成:My Big Apple NY)

米株が過去最高値近くで推移する一方で、米10年債利回りは低下をたどる。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは年初来から中央銀行が1.96兆ドル相当の資産買入を行い、バランスシートがリーマン・ショック当時から11.26兆ドル拡大し15.26兆ドルに達したことを理由に挙げる。

仮にこのまま長期債利回りが低下すれば、逆イールドの展開を迎えかねない。そもそも、9月19〜20日開催のFOMCで資産圧縮が決定すると見込まれながら、長期債利回りは低下している。しかもエコノミストが12月12〜13日開催のFOMCの利上げを予想する裏側で、市場は2018年9月まで利上げを想定していない状況だ。

逆イールドは景気後退のサインとされ動向が懸念されるが、ウェルズ・ファーゴのジョン・シルビア氏率いる経済調査部門は別の指標に注目する。彼らによると1955年以降、景気後退に陥った局面は、FF金利が利上げ過程で米10年債利回りの最低水準を上回った時で、その時から平均で17ヵ月後にリセッションに突入してきたという。

現在のサイクルを確認すると、米10年債利回りが利上げサイクルで最低をつけたのは2016年7月5日で1.36%。ウェルズ・ファーゴの予想通り12月FOMCで利上げを行えば、FF金利誘導目標は1.25〜1.50%に設定され景気後退シグナルが点灯することになる。同社は17ヵ月以内のリセッション入り確率を69.2%と試算するが、前述したように市場は2018年9月まで利上げを見込んでいない。

しかし、ハリケーンの影響で財政支出が拡大すれば利上げが早まってもおかしくない。米株と米債の動向を見ていると、ウェルズ・ファーゴの予想には説得力があるように見受けられる。

——比較的、年内利上げ姿勢を緩めていなかったダドリーNY連銀総裁が遂に「利上げをめぐっては、経済の進展次第」と発言しました。潜在成長率を上回るGDP伸び率に対し、緩和的な状況下での低インフレ環境についても指摘しており、利上げの道筋は「ゆるやか」であると語るにとどめています。資産圧縮については短期的な経済の影響に左右されないと考えを表明していただけに、12月利上げの可能性が一段と低下したと言えそうです。景気後退へのカウントダウンには、まだ早い?

またNY連銀総裁はハリケーン”ハービー”、並びに10日朝にフロリダ州南端にカテゴリー4で上陸した”イルマ”の影響に対しては「短期的に有害だが一時的で、長期的には復興需要で押し上げ効果となる」と言及しました。12月利上げの可能性は宙に浮いた状態とはいえ、経済の加速局面でFedが動いてくること必至で2018年9月まで待たねばならない必要はないでしょう。

(カバー写真:Michael Seeley/Flickr)

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