36437117274_5766eda73b_z

バロンズ:米株、足元の落ち着きは”嵐の前の静けさ”なのか

by • October 8, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off694

Barron’s : Calm Before The Storm, Does It Apply To U.S. Stock Market?

バロンズ誌、今週はカバーでパフォーマンスに優れ、かつ持続的に保有できるファンドを紹介する。今年で2回目となる推奨ランキングにあがったファンドのうち、37%がS&P500のリターンを上回るという。また、米国の大型株でアクティブ投資を行うファンドは、わずか28%しかない。注目の環境・社会・企業統治(ESG)投資に重点を置くファンドを含めたランキングは、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は10月の米株動向をうらなう。抄訳は、以下の通り。

嵐の前に、米株は上振れするのか?—The Meltup Before the Storm?

「嵐の前の静けさ」とは、トランプ米大統領が5日に軍関係者とごく短時間でのフォト・セッションを行った時に放った言葉だ。写真撮影の合間での発言に記者が何の嵐を意味しているかと質問すると、トランプ米大統領は「いずれ分かるさ(You’ll find out)」と応じるにとどめが、北朝鮮問題なのかイスラム国(IS)か、南シナ海か、あるいは他の対象を指すのかは不明である。

トランプ米大統領の意図する所は別にして、マーケットは静謐そのものだ。VIX指数は5日に1993年12月以来、つまり過去最低を更新して取引を終えた。同じ日にCNNが算出する恐怖・強欲指数は0〜100で表されるところ、一時95まで上昇した。恐怖とは程遠い状況と考えられるだけに、強欲指数が極端に上放れた可能性がある。映画”ウォール街”でゴードン・ゲッコーは「強欲は善だ」と語ったが、過剰な強欲は善とは言い切れないだろう。

VIX指数と恐怖・強欲指数が正反対の動向を示す一方で、S&P500は6営業日連続で最高値を更新し1997年6月17日以来となる快挙を果たした。同指数は6日に0.1%安と続伸記録にブレーキが掛けたが、週足では4週連続で上昇して取引を終えた。そうはいっても、LPLフィナンシャルのシニア・マーケット・ストラテジストであるライアン・デトリック氏によると、1日の変動率は足元17営業日連続で0.5%に過ぎない。

これだけ落ち着いていれば、米株は安全な資産配分先と言えるのか。チャーリー・ビレロ氏がブログ”ペンション・パートナーズ”で質問された時の回答は、こうだ——「雨が降っていないからといって決して嵐が訪れないと言えないように、リスク不在はリスクが排除された状態ではない」。英エコノミスト誌は奇しくも”何事も強気相場”と題した記事で米株相場を今を象徴しつつ、”資産価格は高過ぎる”と調整に向かう可能性を示唆していた。

ルネッサンス・マクロ・リサーチのヘッドであるジェフリー・デグラーフ氏はむしろ、米株相場の上振れ(market meltups)に注意を呼びかける。米株相場の上振れは、狂乱に満ちた強気相場の最終段階でみられやすい。既にISM製造業景況指数は9月に60を超え、レンジ上限の10%に入り極端な領域に入ったとして米株との相関性が高まってきた。また、投資適格級の社債と高利回り社債の間でリスク・プレミアムは3年間で最低水準に迫る。米連邦準備制度理事会(FRB)が資産圧縮に動く傍ら、世界の中央銀行は引き続き資産買い入れを行い中銀のバランスシートが年間8%拡大するように緩和的な環境が続いているためだ。これでは、信用力の低い借り手が十分に金利を付与していると言い難い。こうした状況下、FF金利誘導目標の現在のレンジ1.0〜1.25%で中央値が1.125%のところ、米2年債の利回りは1.5%だ。市場が一段の利上げを織り込んでいることを表す。

デグラーフ氏いわく、ISM製造業景況指数(右軸)が極端に振れる時にS&P500(左軸)と相関性が高まるとか。

sp
(作成:My Big Apple NY)

一連の状況を総合すると、バブルと化す製造業セクターは経済拡大サイクルの終焉を示し、最終的に市場が引き締め寄りに転じかねない。デグラーフ氏いわく、過去50年間で製造業景況指数が上限にあるとき、S&P500はその後6ヵ月間で平均4%下落してきた。とはいえ、緩和的な市場環境は中銀が資産買入を継続する限り維持されるだろう。

デグラーフ氏がクレジット市場のサイクルを見極める上で注目している指標はノンバンクの貸手だが、足元でこれらの株価が他セクターを下回るリターンにとどまっている。さらに大きな視野で見ると、日本のTOPIXが上昇を続けるなかでクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が拡大している点は興味深い(筆者注:本誌では衆院総選挙に関する言及は一切なし)。足元でITバブルのようなユーフォリアは確認されないとはいえ、バブルが醸成されていないとは言えないだろう。

米9月雇用統計は、非農業部門就労者数がまさかの減少を示した。特に娯楽・宿泊が大幅に減少していたため、リシオ・レポートのフィリッパ・ダン氏とダグ・ヘンウッド氏は平均時給の前年比が2.9%の上昇を遂げたことについて、賃上げ圧力が高まったと判断するのは「時期尚早」と慎重な見解を寄せる。

ハリケーンが7〜9月期の業績に深刻な影を落とす可能性にも、注意したい。ロイター/IBESの調査によると、ハリケーン効果によりS&P500構成企業の7〜9月期1株利益は前年比で平均9%下方修正された結果、6%増と比較的達成可能な水準となる見通しだ。とはいえ、これまでの結果をみると平均で業績予想を4.75%ポイント上回っており、今回も超えてくるだろう。問題は、業績牽引役がテクノロジーやエネルギーなど2つに集中していることだ。

トランプ政権は税制改革の骨子を発表し、同案によると法人税は35%から20%へ引き下げられ、所得税も7区分から3区分へ簡素化される公算だ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチや税政策センターの分析では、税制改革案の内容が実現すれば10年で財政赤字が2兆ドル拡大する見通し。仮に税制改革で供給側にインセンティブが与えられたとしても、膨大な財政赤字というクラウディングアウト効果が成長を抑制しかねない。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが指摘する通り、共和党内で州税・地方税の税控除廃止に反対する声もあり、年内成立すら難しいだろう。

——Fedが資産圧縮に着手する過程にあり12月利上げもほぼ確実ななかで、この米株高。グリーンスパン元FRB議長なら、「根拠なき熱狂」との言葉をぶつけたかもしれませんね。イエレンFRB議長は6月末に米株高の割高発言を封印した後、沈黙を貫いていますがいつまで続くのでしょうか。”割高発言”の実弾を使えば金融市場を動揺させかねず、資産圧縮を実行する段階では言及を避ける方が賢明と考えていてもおかしくありませんけどね。

そのイエレンFRB議長の任期は2018年2月3日までのところ、FOMC前にハリケーン効果を見極めるにも雇用統計ではあと3回しか内容を確認できません。FOMC後の記者会見を通じた市場との対話は、12月12〜13日のあと1回のみ。その前にトランプ米大統領はFRB議長を指名するはずで、イエレンFRB議長が限られた有効な時間をどのように使うのか。フィッシャーFRB副議長が今月13日の退任を前に量的緩和の解除の必要性や賃上げ圧力の高まりについて発言した点は、留意しておくべきでしょう。

(カバー写真:Los Angeles Fire Department/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.