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バロンズ:下院の税制改革案、借入に変化を起こす?

by • November 5, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off728

Barron’s : House Republican Tax Bill Could Affect Borrowing Demand.

バロンズ誌、今週はカバーでセクシュアル・ハラスメントにスポットを当てる。ハリウッドの大物プロデューサーであるハーベイ・ワインスタインをはじめアカデミー俳優のケビン・スペイシー、フォックスの看板司会者ビル・オライリーなどの長年にわたる暴挙が白日の下にさらされるなかで、企業は対応せざるを得なくなった。ハーヴェイ・ワインスタイン氏の映画スタジオであるザ・ワインスタイン・カンパニーはキャッシュ不足に直面するなか、ニューヨーク・タイムズ紙の報道では投資会社コロニー・キャピタルによる出資が立ち消えになったとされている。フォックスはコマーシャル契約を結ぶ企業から大いに批判を浴び、スペイシーを主役に据えた人気ドラマ”ハウス・オブ・カーズ”を放映するネットフリックスは、スペイシーと二度と仕事しないと発表した。業績、投資へのリスクを抱えるだけに、企業だけでなく投資家もハラスメントの問題に敏感であるべきだろう。米国の状況の詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は税制改革を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

共和党、債務と税制を再考—The GOP Rethinks Debt and Taxes.

「金は借りても、貸してもいかん」——とは、シェイクスピア作の悲劇”ハムレット”に登場する宰相ポローニアスが子供に放った名言の一つだ。アンクル・サムはこれまで借入や貸出に助成金を支払ってきたが、そろそろこの言葉が意識されてくるのかもしれない。

米下院が2日に公表した税制改革案は、429ページに及ぶ。トランプ米大統領は23日の感謝祭までに米上院へ可決案を送るよう要請するが、短い時間にロビイストや税専門の弁護士の干渉を受けながら纏まるかは微妙な情勢だ。仮に奇跡が起こったとしても、問題は法人税の引き下げ(35%→20%)や所得税の4区分への簡素化(12、25、35、39.6%)を補填する案に潜む。

その一つこそ、住宅ローンの控除だ。これまでは夫婦合算で100万ドルだったが、下院の税制改革案では50万ドルに引き下げられる。つまり下院案が通過した場合、20%の頭金を支払うと仮定すれば住宅ローン金利控除が適用される最大の住宅価格は62.5万ドルとなる。新築住宅価格の中央値の2倍近くに及ぶとはいえ、東海岸や西海岸の住宅価格を踏まえれば高いとは言えない。

米下院の提案では、住宅保有者の住宅ローン利子控除は継続され100万ドルの上限で変わりない。借換も同様だが、2件目の住宅については対象外となる。そうなれば、ベビーブーマー世代を中心に2件目の住宅売却を検討してもおかしくない。さらに連邦所得税からの州・地方税(SALT)控除を廃止する一方で、州・地方の固定資産税の適用上限を1万ドルにとどめる。子供を持つ夫婦は子供が自立した暁には、カリフォルニア州やニューヨーク州など住宅費や税金の高い土地から引っ越してしまうだろう。

一連の変更は、いずれ住宅ローン市場の規模を縮小する恐れがあると言えよう。信用市場で最も大きなセクターでの資金需要の減退に伴う市場規模の縮小により、金利低下圧力をもたらしかねない。

今回の米下院が提案した税制改革案は、企業が借入に動くインセンティブを低下させうる。法人税率が低い場合、金利控除額が下がるため、税引き後の借り入れコストが高くなってしまうためだ。

企業による借入阻害要因も、明確に存在する。米下院の税制改革案では、一部の公益や不動産を除き支払い利息控除を利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)の30%を上限とする。モルガン・スタンレーによれば、S&P500構成企業のほとんどがこの上限に達しておらず、投資適格級のうち4%しか該当しないという。問題は高利回り債で、既存の債務が新法の適用除外に当たらないため、影響が大きいと考えられる。

ダウ、税制改革発表後も安定推移。
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(出所:stockcharts)

米企業の海外子会社の収益に10%課税する案も、借り入れを抑制しかねない。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによれば、そもそも企業は本国送還した資金を自社株買いや増配に振り向ける公算が大きい。しかも、税制改革案への不透明性が払拭されれば、合併・買収(M&A)に充てられそうだ。

また州・地方債の発行も、減少する可能性がある。州・地方債の金利収入は概して無税ながら、 地方債のうち非公共目的債の場合はその利点が低下するためだ。例えば、野球場を建設する上で非公共目的債を発行する時に、税控除は適用されなくなり、チームのオーナーは課税対象となる民間資金で賄わねばならなくなる。非営利団体の病院や大学も、非課税対象でなくなる。

こうしてみると、税制改革案には知られざる影響が及ぶと言えそうだ。

トランプ米大統領は2日、ジェローム・パウエルFRB理事を次期議長に指名した。同氏は、イエレンFRB議長体制から逸脱しない金融政策運営を行うと見込まれている。問題はパウエル新FRB議長を迎え、労働市場が完全雇用に達したか否かだ。米10月雇用統計はヘッドラインと輝かしい結果ではないものの、こうした違いが新たなFRBの指導部によって収れんしていくのか注目だ。

——税制改革案、反トランプ米大統領と思しきランダル・フォーサイス氏にかかれば批判で溢れます。例えば、支払い利息控除のEBITDAでの上限設定をめぐっては全体の税率負担を抑える意味で妥当とし、フォーチュン誌ではポジティブに伝えられていました。感謝祭までに可決できるかという問題ですが、感謝祭前の休会は17日からです。従って8日、年末までを含めても20日しか残っていません。仮に可決できたとして、米上院の年末の会期は12月15日まで。税制改革が年内にまとまり米株相場にクリスマス・プレゼントを届けられるのか、少なくとも米株高をみると不安視してはいないようです。

さて訪日したトランプ米大統領ですが、共和党寄りのバロンズ誌名物コラムニストが厳しい言葉を寄せるだけに、リベラル派の批判は辛辣過ぎて耳に痛いほどです。米国でお馴染み、スティーブン・コルベアのトークショー”ザ・レイト・ショー”では、大統領就任後で最も長い歴訪に出たトランプ米大統領を捕まえて「骨棘が漸く治ったんだね」と揶揄する有様。これは、マケイン上院議員がベトナム戦争を振り返ったインタビューで、富裕層の子息が「骨棘」を理由に徴兵猶予を受けていたと暗にトランプ米大統領を指して口撃したことにちなみます。さらに、コルベアのジョークはトランプ米大統領を迎えた日本にまで及びました。本邦政府がピコ太郎をトランプ米大統領おもてなしの親善大使にあてがったと伝え、「I have a face, I have a palm.. Ah, facepalm(=疲労感や倦怠感、嫌悪感を表すジェスチャー)」と槍玉に挙げます。スタジオは大爆笑に包まれましたが、さながら”坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”ならぬ”大統領憎けりゃ同盟国まで憎い”という状態なようですね。

(カバー写真:U.S. House of Representatives/Flickr)

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