7729815614_e0b9a5ba19_k copy

バロンズ:税制改革実現で、米株高・米債高にブレーキか

by • January 8, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off748

Barron’s : Tax Reform Could Upend Both The Stock And Bond Markets.

バロンズ誌、新年早々のカバーに投資信託の手数料問題を取り上げる。足元で投資家は手数料の低い投信に資金を流入させ、アクティブ/パッシブ運用の論争にもつながってきた。2017年は11月までアクティブ運用から3,960億ドルの資金が流出した半面、パッシブ運用であるインデックス並びに上場投資信託(ETF)へは6,940億ドルの資金流入した点でも、明らかだ。しかし、低コストであるアクティブ運用のファンドにも3,530億ドルの資金が流入し、投信の78%が最も低コストの5分の2に振り向けられているという。逆に投資信託資産全体の1.3兆ドルのうち、8%が最も高い5分の2の投信で運用されている。彼らは一体、どんな投資家なのか?詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週はインフレ上昇懸念を掲げる。抄訳は、以下の通り。

インフレ:招かれざるパーティー客—Inflation: The Unwanted Guest at the Party.

”ハッピー・ニュー・イヤー”と言わずして何と言おうか。新年早々、米株高を迎え、ダウは25,000ドルの節目を超えていった。S&P500は2,700、ナスダックは7,000を突破し、当然ながら史上最高値を更新。東海岸を豪雪が襲いかかってもお構いなしで、新年早々のショートウィークにダウは2.33%高、S&P500は2.6%高、S&P500は3.38%高、中小・小型株指数のラッセル2000は1.6%高で取引を終えた。ウィルシャー・アソシエーツは、米株の時価総額が7,250億ドル拡大したと推算する。

税制改革法案の成立を手掛かりに企業業績に楽観的な見方が強まるとともに、9年目に突入する強気相場に期待を掛ける投資家も少なくないだろう。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)は、S&P500指数構成企業の1株利益を法人税減税(35%→21%)を背景に従来の139ドルから153ドルへ上方修正した。市場予想のレンジ上限に相当する。ただし、1月後半に発表を控える2017年10〜12月期の決算では、レパトリに関わる一時的課税の影響が及ぶ見通しだ。BAMLは2,150億ドルと試算、S&P500構成企業の1株利益の25ドルに相当するという(ただし、レパトリ課税は8年間にわたって支払い可能)。

また税制改革実施を受け初年度は繰延税金資産の価値が下落して、一時的に損失が発生する。金融機関の場合は既に発表済みで、ゴールドマン・サックス(GS)は50億ドル、シティグループは200億ドル、BAMLは30億ドルと明かした。こうした一時的な損失は、投資家は注目しないだろう。

もっとも、BAMLは税制改革が将来の企業業績に打撃を与えるとし、S&P500構成企業の1株利益を前年比5%増の161ドルの予想にとどめている。なぜ、BAMLは慎重なのか。第一に経済理論では高いリターンが新たな競争を招き、新たな業態との熾烈な競争に直面す伝統的な業種を中心に利鞘縮小をもたらす。第二に、成長が加速し業績が拡大するなどアニマル・スピリッツが目覚めれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げペース加速しかねない。BAMLは、レーガン政権2期目に税制改革法が実現した1986年にS&P500構成企業が2年連続で2桁の増益を達成したにも関わらず、1987年の弱気相場を回避できなかったと指摘する。さらに当時はその後、貯蓄貸付組合(S&L)危機が米国を直撃したものだ。

BAMLは、税制改革法案成立後も成長率の上方修正を小幅にとどめ2018年で2.6%増→2.7%増、2019年でも2.2%増→2.3%増とする程度だ。

業績モメンタムが低下するなか、インフレ圧力が高まる過程、あるいはFOMCが利上げ過程、あるいはその両方で株価収益率(PER)は金利引き上げで抑制されかねない。ただ少なくとも現状、米12月雇用統計の平均時給で示されたようにインフレの芽は限定的だ。鈍い賃金上昇は、完全雇用の定義に反する。しかし、今回は経済的な理由でパートタイムを余儀なくされている労働者などを含む不完全失業率が小幅上昇した点が一因だろう。ベビーブーマー世代の引退に伴い、賃金の比較的低い若い世代が交代している流れも、賃金の上昇を抑えているに違いない。

また、原材料コストなどの上昇も賃金が伸び悩む一因と考えられる。米12月IHSマークイット製造業PMI確報値では仕入れ価格の上昇が著しく、2ヵ月連続で上向いたほか2013年で2番目の伸びになったという。

企業は、いつまでコスト負担の増大を受けた賃上げ抑制を続けられるのだろうか?既に金融市場はインフレの芽吹きに備えており、米10年物ブレークイーブンインフレ率(BEI)は2017年3月以降で初めて2%を超えてきた。米2年債利回り自体も2%ヘにじり寄り、米10年債利回りも2.5%近くで推移している。

米10年物BEI、2017年3月以来の2%乗せも昨年初めのようにフェイクで終わるのか、あるいは実現するのか。

bei
(作成:My Big Apple NY)

FOMCが2017年12月時点で年3回の利上げを予想したとはいえ(FF先物市場は足元、年2回しか織り込まず)、インフレ加速局面で米債市場は利上げペース加速を織り込み始めるだろう。ポートフォリオ・マネージャーは米株のヘッジに米債を活用してきたが、インフレ加速の局面では役に立つはずがない。コスト負担増大は利益縮小につながり、インフレは米株や米債にとってマイナスでしかないと言える。そうなれば、投資家はポートフォリオを世界へ振り向けるのではないか

過去3年間において米株のリターンは10.61%高に対し、MSCI世界株指数は9.26%高でMSCI世界株指数(米国除く)は7.36%高だった。しかし、2017年のETFでみたリターンではSPDR S&P 500 ETF(SPY)のトータル・リターンが22.3%高で世界45カ国中33位に対し、VanEck Vectors Poland (PLND) (PLND)は54.8%高で1位に輝き、2位のGlobal X MSCI Argentina(ARGT)は53.9%高だった。ホワイトハウスからは米株高に関する自慢が聞かれるが、結局は株高は全世界での現象と言えよう。

——アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートのコラムニスト、ランダル・フォーサイス氏は昨年の流れを受け継ぎ、新年早々にも関わらず慎重なトーンを崩しません。同氏の予想が的中するかはインフレが鍵を握っていると言えるでしょうが、確かに米12月雇用統計では賃金低い娯楽・宿泊、その中でも特に食品サービスが牽引した事情もあって賃金は伸び悩みました。ところがIHSマークイット製造業PMI確報値だけでなく、米12月ISM製造業景況指数でも仕入れ価格は上昇中。何より、WTI原油先物が約3年ぶりに60ドルを突破し、さらに銅を含め他商品先物も値上がりしています。問題は企業が最終財に価格転嫁し、賃金が伸び悩む状況が継続することではないでしょうか。これまでの米個人消費が所得の伸び以上に拡大できた一因は低インフレと考えられるだけに、所得税率減税効果が物価上昇で相殺されないか気掛かりです。

(カバー写真:Chris Goldberg/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.