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米1月個人所得は税制改革で押し上げ、貯蓄率は2005年以来の低水準から改善

by • March 6, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off1610

Personal Spending Slows While Saving Rate Recovers From The Lowest Since 2005.

米1月個人消費支出は前月比0.2%増と、市場予想と一致した。前月の0.4%増を含め、2016年2月以降続く増加トレンドを維持。東海岸を中心に月初は豪雪に見舞われたものの、その後は気温が平年を上回る場面もあり、堅調なペースを保った。前年比では4.4%増と12月並びに2017年平均値の4.5%増(4.6%増から下方修正)に届いていない。インフレを除く実質ベースでの個人消費は0.1%減と、市場予想通りた。前月の0.2%増(0.3%増から下方修正)を下回り、3ヵ月ぶりに減少。前年比では2.7%増と、前月の2.8%増を小幅に下回りつつ、2017年の平均値に並んだ

個人消費の内訳は、前月比で以下の通り。新車販売台数が1月に前月比で減少したように、耐久財が弱い。一方で、ガソリン価格の上昇に支えられ非耐久財が強い伸びとなったほか、寒波の影響で暖房需要が高まったためサービスは底堅さを示した。

・モノは0.111%増、前月の0.054%減を上回り過去5ヵ月間で4回目の増加
>耐久財 1.519%減、前月の0.520%増を下回り過去5ヵ月間で初の減少
>非耐久財 0.973%増、前月の0.359%減を上回り過去5ヵ月間で3回目の増加
・サービス 0.284%増、前月の0.600%増を含め少なくとも16ヵ月連続で増加

米1月個人所得は前月比0.4%増と前月と一致し、市場予想の0.3%増を上回った。6ヵ月連続で増加している。実質ベースでは前年比2.1%増と、2年ぶりの強い伸びだった前月の2.6%増から鈍化。前月比では±0%と、増加基調を6ヵ月連続で止めた。

可処分所得は前月比0.9%増と7ヵ月連続で増加しただけでなく、2017年1月に示した力強い伸びと一致した。前年比は4.0%増と、前月の3.9%増を超え、2015年10月以来の高水準に並んだ。これは、税制改革法案で所得税減税が実施されたほか、一部の企業が臨時ボーナスを支給に踏み切り、可処分所得を押し上げたと考えられる。実質ベースの可処分所得は前月比0.6%増と、前月の0.2%増(0.1%増から上方修正)を超え、4ヵ月連続で増加。可処分所得の前年比は2.3%増、前月の2.2%増(1.9%増から上方修正)を上回った。13ヵ月連続で増加し、2016年1月以来の高水準となる。

貯蓄率は3.2%となり、2005年9月以来の水準へ低下した前月の2.5%から改善した。名目の前月比で個人消費の伸びが鈍化し所得を下回ったため、貯蓄率は住宅バブル期の水準まで落ち込んだ2017年12月から回復を示す。

実質ベースでの個人消費の伸びは、引き続き所得を上回るも、貯蓄率は改善。

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(作成:My Big Apple NY)

所得の内訳は、前月比で以下の通り。

・賃金/所得 0.5%増、前月の0.4%増を上回る(民間が0.5%増と前月と一致、サービス部門は0.4%増と前月の0.5%増を下回る、財部門(製造業、鉱業、建設)は0.8%増と前月の0.2%増から加速)
・不動産収入 0.2%増、前月の0.2%減を上回る(農場が5.1%増と増加に反転、非農場は0.1%増と前月の減少を相殺)
・家賃収入 0.5%増、前月の0.4%増を含め6ヵ月連続で増加
・資産収入 0.4%減と前月の0.7%増を下回る(配当が0.4%減と3ヵ月連続で減少、金利収入は0.4%減と7ヵ月ぶりに減少)
・社会補助 0.3%増、前月の0.3%増を含め増加トレンドを維持
・社会福祉 1.3%増、前月の0.2%増から加速(メディケア=高所得者向け医療保険は0.1%増と増加基調を維持、メディケイド=低所得者層向け医療保険が0.5%増と8ヵ月連続で増加、失業保険は1.1%増と前月の横ばいから大幅増、退役軍人向けが2.9%増と前月の0.6%減から大幅増)

個人消費支出(PCE)デフレーターは原油価格が約3年ぶりに65ドル超えを遂げるなか、前月比0.4%上昇し、市場予想と一致した。前月の0.1%を上回り、8ヵ月連続で上昇。前年比は市場予想と前月値と同じく1.7%で、物価の上振れの兆しを見せていない。コアPCEデフレーターは市場予想と前月値と一致し、前月比0.3%の上昇。コアPCEデフレーターの前年比も、市場予想と前月値と並び1.5%上昇した。2015年11月以来で最低だった2017年8月の1.3%から改善基調をたどりつつ、PCEとコアは米連邦公開市場委員会(FOMC)の目標値「2%」を2012年5月以来下回り続けている。

PCEコアはボトムアウトの兆し。

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(作成:My Big Apple NY)

――1月は、税制改革法案の成立を受けて所得税減税が引き下げられ、可処分所得が1年ぶりの高水準に達しました。おかげで貯蓄率が2005年9月以来の低水準から回復したものの、個人消費が意外に伸び悩んだ点が気掛かり。ホリデー商戦による買い物疲れなのか、あるいは税制改革法案の成立前に取り崩した貯蓄を積み増すインセンティブが働いたのか。少なくとも米2月新車販売台数が年率ベースで1,700万台を割り込んだ結果を踏まえると、個人消費は2017年の勢いを維持するかは不透明と言えるでしょう。

▽米2月ミシガン大学消費者信頼感・確報値、2004年以降で2番目の高水準

米2月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値は99.7 と、市場予想の99.5を下回った。速報値の99.9から下方修正され前月の99.9に届かず。ただし、約14年ぶりのレベルに上振れした2017年10月以降で、2番目の高水準となる。内訳をみると、現況指数が114.9と速報値の115.1から下方修正。見通し指数は速報値の90.2から90.0へ下方修正された。ただし、現況指数と見通し指数はともに4ヵ月ぶりの高水準を示す。

原油先物が約3年ぶりに60ドル台に乗せるなか、1年先インフレ見通しは3ヵ月連続で2.7%だった。5~10年先インフレ見通しも、2ヵ月連続で2.5%となる。なお税制改革実現を意識し、FOMCは2017年12月分の経済・金利見通しで成長見通しを上方修正したが、インフレ見通しを据え置いた。

ミシガン大学消費者信頼感は高止まりも、インフレ見通しは上げ渋り。

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(作成:My Big Apple NY)

ミシガン大学の主席エコノミスト、リチャード・カーティン氏は、結果を受け「前年と比較し家計が改善したとの回答は1998年以来で最高だった」と評価した。また、税制改革法案成立や雇用増加に支えられたとの見方を寄せ、金利上昇や株安の悪影響を払拭したと指摘。その一方で消費者は失業率が4%を下回る可能性をにらみながら、「賃金の伸びは緩慢にとどまると予想している」といい、それに従い「インフレ見通しは横ばいにとどまった」と説明する。2018年の個人消費予測は、速報値通り「2.9%増」で据え置いた。

(カバー写真:Paul Jarvie/Flickr)

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