Both Existing Home Sales Housing Starts Decline Annually.
米10月中古住宅販売件数と米10月住宅着工件数をおさらいしていきます。
全米リアルター協会(NAR)が発表した米10月中古住宅販売件数は年率522万件と、市場予想の520万件を上回った。前月の515万件から1.4%増加。7ヵ月ぶりに増加に転じ、2015年11月以来の低水準から回復している。ただし、前年比では4.1%減と8ヵ月連続でマイナスだっただけでなく、約4年間で最大の下げを示した。金利上昇や価格の高止まりを背景に、引き続き新規購入者を中心に需要が鈍化しているようだ。
内訳をみると一戸建てが462万件と、前月の458万件を0.9%上回った。7ヵ月ぶりに増加した結果、2015年11月以来の低水準から小幅改善している。複合住宅は5.3%増の60.0万件となり、こちらも2015年1月以来の低水準から切り返した。
4大地域別では、2地域で増加し前月のゼロから改善した。今回はIT企業が集まる西部が2.8%増(3ヵ月ぶりに増加)の111.0万件となったほか、住宅市場の規模が最大の南部も1.9%増(7ヵ月ぶりに増加)の215.0万件と増加に転じた。北東部も1.5%増の69万件と、増加に反転している。一方で、中西部は0.8%減の127.0万件と、前月の横ばいから減少に転じた。
在庫件数は前月比1.6%減の185万件と4ヵ月連続で減少した結果、6ヵ月ぶりの低水準だった。前年比で2.8%増と、3ヵ月連続でプラスとなる。なお、在庫件数は2016年12月に165万件と1999年以来での最低を更新していた。販売が増加した一方で在庫が減少したため、在庫相当は2016年9月以来の水準に延びた前月の4.4ヵ月から、4.3ヵ月へ短縮した。
中央価格は前月比0.5%下落し25.54万ドル、4ヵ月連続で下落している。前年比で3.8%上昇、上昇率は米10月雇用統計で示された平均時給の上昇率を引き続き上回った。販売日数は33日、前月の32日から延びた。ただ、引き続き前年同月の34日以下となる。NARは、販売件数の46%が1ヵ月位以内に買い手がついたと説明、前月の46%、8月の55%を下回った。
買い手の内訳は、以下の通り。
・差し押さえ物件2%、統計を開始した2008年10月以来で最低=前月は2%、前年同月は3%
・ショートセール(担保残債価額よりも安い価額で販売する住宅)1%=前月は1%、前年同月は1%
・新規購入者31%<前月は32%、前年同月は32%
・現金購入者23%>前月は21%、前年同月は20%
・住居用ではなく投資向け15%>前月は13%、前年同期は13%
中古住宅販売件数、複合が増加を牽引。
発表元のNARのローレンス・ユン米エコノミストは、今回の結果を受け「在庫の増加と冬到来により、住宅価格の上昇ペースはさらに鈍化する」と予想した。買い手にとって、住宅に値ごろ感が強まるため、徐々に住宅市場が改善するとの見方を示す。
――中古住宅の在庫が4ヵ月連続で増加し在庫逼迫環境が緩和したかと思いきや、前月比での住宅価格の下落は限定的でした。住宅保有率の改善を見る限り、やはり労働市場が堅調であることが大きいのでしょう。足元で金利上昇も一服しており、利上げ観測も後退するなかで、次の問題は米株安。これが続くようなら資産効果と高所得層のセンチメントを冷やし、投資目的での需要を抑えかねません。米11月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値で、高所得者ほどセンチメント低下が目立っていましたし・・。
▽米10月住宅着工件数、複合が支え増加も前年比はマイナス
米10月住宅着工件数は年率122.8万件と、市場予想と一致した。前月の121.0万件(120.1万件から上方修正)を1.5%上回り、過去4ヵ月間で3回目の増加となった。ただし、2007年7月以来の高水準を遂げた1月の133.4万件以下が続く。
内訳をみると、一戸建てが前月比1.8%減の86.5万件と2ヵ月連続で減少した。変動の大きい複合住宅は10.3%増の36.3万件と、前月の15.6%減から持ち直した。
前年比では、住宅着工件数が3.0%と3ヵ月ぶりに減少した。一戸建てが1.8%減と、2ヵ月連続で減少。複合住宅は3.7%減と、3ヵ月ぶりに減少に転じた。
4大地域別では、前月に続き2地域で増加した。今回は中西部が32.9%増(前月から増加に反転)の21.0万件だった。南部は4.7%増(前月から増加に反転)の42.7万件となる。一方で、北東部は前月の大幅増の反動で34.1%減の8.7万件、西部は4.6%減(3ヵ月ぶりに減少)の33.5万件だった。
建設許可件数は126.3万件となり、市場予想の126万件を僅かに上回った。前月の127.0万件(124.1万件から上方修正)を0.6%下回る。内訳をみると、一戸建てが0.6%減の84.9万件と前月から減少に転じたほか、複合住宅も0.5%減の41.40万件と、7ヵ月連続で減少した。
住宅着工と建設許可件数、前年比では共に減少。
建設中件数は前月比0.5%増の113.7万件となり、2007年7月以来の高水準。一戸建てが1.0%増の52.7万件と2ヵ月連続で増加に転じた半面、複合住宅は0.2%増の61.0万件と3ヵ月連続で増加した。
――住宅着工件数によれば、一戸建ての着工件数の75%が販売用と推計されるため、64.9万件が市場に流入する見通しです。米9月新築住宅販売件数が55.3万件だったため、在庫が増加する可能性を示唆します。新築住宅の在庫をみると、2009年1月以来の水準まで増加中。新築住宅市場が調整色を強めた実態が浮かび上がります。
結局、中古住宅販売件数と住宅着工件数はそれぞれ、前年比で減少しました。詰まる所は、米11月NAHB住宅市場指数でご紹介したように、足元で住宅市場は値ごろ感が失われているためでしょう。
その割に価格は比較的、高止まりを続けます。金利上昇もあって、需要も鈍化してきました。建設大手KBホームズは決算発表で10~12月期売上見通しを13.1億~13.4億ドルと、市場予想の14.4億ドルに届かず。直近10週間の受注動向も前年比14%減と、明らかに落ち込んでいます。建設大手の決算で弱含めばリフォーム関連小売に波及するわけですが、ロウズは通期の売上の伸びを4%増と従来の4.5%増から引き下げ、既存店売上高も3%増から2.5%増へ下方修正しました。足元は金利上昇が一服していますが、再び上向き傾向が見られれば、消費をさらに鈍化させかねません。
(カバー写真:Raziel Janeway/Flickr)
Comments
米10月耐久財受注は2ヵ月連続で減少、コア資本財は失速を確認 Next Post:
ブラックフライデー、幸先の良い年末商戦のスタートを切る