U.S. Trade Deficit Widens 10-Year High, Exports To China Decline Hard.
米10月貿易収支は554.88億ドルの赤字となり、市場予想の550億ドルを上回った。前月の545.55億ドル(540.19億ドルから修正)から0.2%増加。5ヵ月連続で増加した結果、赤字水準自体は、鉄鋼・アルミ追加関税措置を発動する前となる2月の水準を超え、2008年10月以来で最大を記録した。原油関連を除く貿易赤字は525.97億ドルと、前月の500.64億ドル(修正値)を超え、過去最大へ膨らんだ。1月に太陽光パネル・洗濯機、3月に鉄鋼・アルミへのセーフガードが発動し、6月には鉄鋼・アルミへの追加関税措置がEU、カナダ、メキシコへ波及した。対中追加関税は7月6日には通商法301条を根拠とした500億ドルのうち340億ドル、8月23日には残りの140億ドルが発動、そして9月24日からは2,000億ドル相当へ拡大するなか、輸出と輸入の増加率が一致したものの赤字が拡大した。
内訳をみると、輸出が0.1%減の2,110.46億ドルと過去5ヵ月間で4回目の減少となった。逆に輸入は0.2%増の2,665.34億ドルと6ヵ月連続で増加した結果、3ヵ月連続で過去最高を塗り替えた。
輸出減少・輸入増加が続き、貿易赤字は3ヵ月連続で増加。
国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの貿易赤字は、878.80億ドルだった。前月の872.24億ドル(修正値)を上回り、3ヵ月連続で過去最高を更新した。
当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比0.3%減と過去5ヵ月で4回目の減少となった。項目別では食品・飲料が5ヵ月連続で減少、報復関税措置の余波から、5~6月での2桁増を巻き戻す動きを続けた。そのうち大豆が7〜9月に続き46.9%減と2桁減となり、輸出の減少を主導した。そのほか魚類・貝類も21.3%減、家畜向け飼料も9.0%減、肉類も3.0%減となった。資本財も弱く、民間航空機向けエンジンが7.2%減、民間航空機も6.0%減と前月から減少に反転。続き産業エンジンは12.3%減、産業機器は2.7%減、通信機器は4.6%減となる。一方で、原油が16.2%増と大幅に増加した。さらに産業財は前月の減少分を打ち消した。なお中国は9月6日に追加で600億ドル相当の報復関税を発動、対象は小麦、ワイン、液化天然ガス(LNG)など約3,500の製品とした。項目別動向は、以下の通り。
(増加項目)
・消費財 1.0%増、3ヵ月連続で増加>前月は0.8%増
・産業財 0.6%増、2ヵ月連続で増加<前月は6.2%増
・サービス 0.1%増、15ヵ月連続で増加<前月は0.4%増
(減少項目)
・食品・飲料 6.1%減、5ヵ月連続で減少>前月は8.0%減
・自動車 1.8%減<前月は1.4%増
・資本財 1.1%減、3ヵ月ぶりに減少<前月は2.3%増
輸入の内訳をみると、モノは0.2%増と6ヵ月連続で増加した。原油価格が2014年11月以来の高値近くで推移するなか、量ベースでのエネルギー関連輸入が2.9%増と過去4ヵ月間で3回目の増加を示した。前年比では1.3%減だった。金額ベースでは上昇に転じた。エネルギー製品を除いたモノの輸入は0.4%増と、6ヵ月連続で増加した。項目別動向は、以下の通り。
(増加項目)
・自動車 2.3%増、過去5ヵ月間で4回目の増加>前月は1.9%減
・消費財 3.5%増、3ヵ月連続で増加<前月は3.8%増
・食品・飲料 1.3%増、3ヵ月ぶりに増加<前月は2.1%減
(減少項目)
・資本財 5.2%減<前月は4.1%増
・産業財 0.5%減、2ヵ月連続で減少<前月は0.5%減
国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比7.1%増の431.02億ドルと、4ヵ月連続で過去最大を更新した。大豆など食品関連の輸出減少などが響いた。日本への赤字は、57.2%増の61.66億ドルと、日米貿易交渉が開始するなかで大幅に増加。欧州全体への赤字額は79.8%増の214.38億ドルと、3ヵ月ぶりに過去最高を更新した。対英貿易収支は5.64億ドルの赤字と、前月の58.1億ドルの黒字から転じた。
主な産油国への貿易収支は、対カナダとOPECで赤字が増加した半面、メキシコでは減少した。カナダへの貿易赤字は前月比6.9%増の19.43億ドルの赤字と、3ヵ月ぶりに赤字が拡大した。石油輸出国機構(OPEC)への貿易赤字は23.5%増の24.61億ドルと、2014年1月以来で最大を記録した7月以来の高水準。一方で、メキシコに対する赤字額は7.1%減の71.67億ドルとなり、過去最大だった8月の86.91億ドル以下が続く。原油輸入はカナダが前月比47.4%増と急増したほか、OPECは3.6%増、メキシコのみ10.5%減だった。
なお、米国とメキシコはNAFTA再交渉で8月27日に合意に到達。対してカナダは7月から米国による鉄鋼・アルミ関税への報復措置を7月1日から開始し、鉄鋼やアルミ、食品など166億加ドル相当の製品を対象とした。ただし、9月30日にカナダが米国・メキシコと歩調を合わせ、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に合意、NAFTAの枠組み維持で妥結した。各国が批准する必要があり、カナダとメキシコは鉄鋼・アルミ関税の除外を求めている。
国別動向の年初来・貿易赤字は、前月に続きドイツが3位、日本が4位となった。カナダは3月から7月までトップ10圏外だったが、8~9月に続き圏内に残った。その他、10月は米中貿易戦争が激化するなかで、中国と香港向けの輸出が年初来で初めて減少した。各国ごとの単月の貿易収支動向は、以下の通り。
――トランプ政権が対中追加関税として第1弾の500億ドルに加え第2弾の2,000億ドルを発動したところ、皮肉にも貿易赤字は実質の財ベースで過去最高を更新してしまいました。年末商戦を控えた消費財の輸入増加も、赤字拡大につながったとみられます。
トランプ政権が通商交渉に乗り出したのは、純輸出が成長に寄与することが狙いでした。しかし、中国・香港向けの輸出が年初来で今回初めて減少したように、追加関税措置と報復措置が打撃となり、全体での輸出も不振が続きます。トランプ大統領が約1年ぶりとなった習主席との米中首脳会談で関税率引き上げ猶予で合意した背景に、成長下押しリスクを警戒した可能性があるのではないでしょうか。
(カバー写真:Louis Vest/Flickr)
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