Wages Accelerate, Labor Participation Rate Improves In Jobs Blowout.
米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比31.2万人増となり、市場予想の17.7万人増を上回った。追加関税措置や平年を下回る気温に加え、年末商戦が終焉を迎え、22日からは政府機関が閉鎖し、米株と原油先物の急落するなど悪材料が重なるなかでも、前月の17.6万人増(15.5万人増から下方修正)も超え、10ヵ月ぶりの高水準を遂げている。10月分の3.7万人の上方修正(23.7万人増→27.4万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で5.8万人の上方修正となった。10〜12月の3ヵ月平均は25.4万人増、通期では22.0万人増と、2017年の平均値18.2万人増を超え3年ぶり力強い伸びを達成した。2018年の新規雇用者数は264万人と、2017年の219万人を上回った。
なおトランプ政権が3月23日から鉄鋼・アルミ関税を発動し、6月1日からは欧州連合(EU)、カナダ、メキシコも対象に含めた。中国に対しては8月23日から事前の340億ドルに160億ドルと合わせた500億ドル相当の追加関税を発動、9月24日から2,000億ドルの対中知財関税を実施した。2,000億ドル相当の対中関税措置については、2019年1月から関税率を10%から25%へ引き上げる懸念が強かったが、12月1日の米中首脳会談で90日間の猶予が設けられている。一方で、NAFTA再交渉は9月にカナダを含め合意が成立し、欧州とは7月の首脳会談にて通商協議入りで合意。日本とも個別で貿易交渉を開始した。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比30.1万人増と前月の17.3万人増(16.1万人増から上方修正)を超えた。民間サービス業も22.7万人増と、前月の14.6万人増(13.2万人増から上方修正)を上回った。
NFP、10ヵ月ぶりの快挙となる30万人乗せ。
サービス部門のセクター別動向では、教育・健康が10〜11月に続き首位に立ち、続いて娯楽・宿泊が2位に返り咲いた。3位は前月2位だった専門サービスとなる。11月に年末商戦を追い風に3位に立った輸送・倉庫は、伸びが鈍化した。今回、減少したセクターは10〜11月の2セクターにとどまり、今回は情報のみ。前月はその他サービスと情報だった。小売は2ヵ月連続で増加した。詳細は、以下の通り。
(サービスの主な内訳)
・教育・健康 8.2万人増>前月は2.1万人増、6ヵ月平均は4.3万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は5.8万人増>前月は3.1万人増、6ヵ月平均は4.2万人増)
・娯楽・宿泊 5.5万人増>前月は1.8万人増、6ヵ月平均は3.1万人増
(そのうち食品サービスは4.1万人増>過去12ヵ月平均1.9万人増)
・専門サービス 4.3万人増<前月は4.4万人増、6ヵ月平均は4.8万人増
(そのうち、派遣は1.0万人増<前月は1.1万人増、6ヵ月平均は1.2万人増)
・小売 2.4万人増<前月は2.9万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・政府 1.1万人増>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・その他サービス 0.8万人増>前月は0.1万人減、6ヵ月平均は0.2万人増
・金融 0.6万人増>前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・輸送・倉庫 0.2万人増<前月は2.9万人増、6ヵ月平均は1.7万人増
・卸売 0.8万人増<前月は0.9万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
・公益 0.05万人増<前月は0.06万人増、6ヵ月平均は横ばい
・情報 0.1万人減>前月は0.5万人減、6ヵ月平均は0.2万人減
財生産業は前月比7.4万人増と、前月の2.7万人増(2.9万人増から下方修正)を超え2月以来の高水準だった。建設と製造業が牽引し、前者は11月の横ばいから増加に転じている。原油先物が10月初めの75ドル超えから50ドル割れまで急落した半面、鉱業は0.4万人増とこちらも前月の横ばいから増加に転じた。詳細は、以下の通り。
(財生産業の内訳)
・建設 3.8万人増>前月は横ばい、6ヵ月平均は2.2万人増
・製造業 3.2万人増>前月は2.7万人増、6ヵ月平均は2.3万人増
・鉱業・伐採 0.4万人増(石油・ガス採掘は300人の増加、3ヵ月連続のプラス)>前月は横ばい、6ヵ月平均は0.3万人増
平均時給は前月比0.4%上昇の27.48ドル(約2,940円)となり、市場予想の0.3%を下回った。前年比は3.2%の上昇と、市場予想の3.0%や前月の3.1%を超え、2009年4月以来の力強い伸びを遂げた。
週当たりの平均労働時間は34.5時間と、前月の34.4時間から延びた。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は前月の40.2時間から40.6時間へ延び、4月につけた2006年7月以降で最高となる40.7時間に迫った。
失業率は3.9%と、1969年12月以来で最低である市場予想と9~11月の3.7%から上昇した。12月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2018年見通しを上回った。失業率と共に、労働参加率も63.1%と前月の62.9%を超え2014年3月以来の水準へ上昇。12月は、労働市場に41.9万人が参入あるいは再参入したことになる。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。
失業者数は前月比27.6万人増加し、就労者数の増加分である14.2万人を上回った。労働参加率が横ばいだったこともあり、失業率は約50年ぶりの低水準を保つ。就業率は10〜11月に続き60.6%と、2009年1月の高水準に並んだ。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.1%増の1億2,991万人と、4ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.1%減の2,699万人と2ヵ月連続で減少、前月分の増加を打ち消した。増減数ではフルタイムが13.9万人増、パートタイムは2.3万人減だった。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数が前月を上回り、平均労働時間も延びたため、前月比で0.5%上昇し前月のマイナスから好転した。平均時給は伸びを維持したものの、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.9%上昇し前月の0.1%から急伸、11ヵ月連続でプラスだった。
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.6%と前月と変わらず、2001年4月以来の低水準に並んだ8月の7.4%を超える水準を保つ。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は465.7万人と、前月の478.1万人から減少。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率も、前月の4.7%から4.8%へ上昇した。
2)長期失業者 採点-△
失業期間の中央値は9.1週と、前月の9.0週から延びた。平均失業期間は21.8週と前月の21.7週から僅かに延び、2009年3月以来で最短を記録した6月の21.3週が若干遠のいた。27週以上にわたる失業者の割合は20.5%と、前月の20.7%から低下。ただ、2008年8月以来の20%割れを遂げた5月の19.4%を上回る水準を続けた。
3)賃金 採点-○
今回は前月比0.4%の上昇と、5月と7~8月に並び年初来で最も強い伸びとなった。前年比も10〜11月の3.1%を経て3.2%へ加速、2009年4月以来の高水準を達成。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.4%上昇の23.05ドル、前年比は3.3%の上昇と、10〜11月に続き前月比と前年比そろって全従業員の水準を超えた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。
平均時給、10〜11月に続き生産・非管理職の労働者は全従業員を超える伸びを達成。
4)労働参加率 採点-○
労働参加率は10〜11月の62.9%を経て、63.1%と2014年3月以来の水準へ上昇。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は0.3%増の1億6,324万人と4ヵ月連続で増加。逆に、非労働人口は0.2%減の9,565万人と減少に転じた。
――米12月雇用統計・NFPは失業率が5ヵ月ぶりの水準へ上昇したとはいえ、労働参加率の改善に伴うもので好結果と言えるでしょう。ただ、働き盛りの男性における労働参加率は目覚ましい回復を遂げたとは言えません。25〜54歳の男性全人種は3ヵ月連続で89.0%、25〜34歳の白人男性も90.4%で変わらず。25〜34歳の男性で89.1%と僅かに上昇した程度で、25〜54歳の白人男性はむしろ90.1%と前月の90.2%から低下していました。
では男女・全人種でみた場合に、どの年齢層で労働参加率が上昇したのでしょうか?例えば55歳以上は40.3%と前月の40.2%を超え、2013年8月以来の高水準でした。また、16〜24歳も55.2%と前月の55.0%を上回り4ヵ月ぶりの水準を回復。その一方で、25〜34歳は82.9%と前月から0.1%ポイント低下していました。どちらかと言えば、働き盛りの世代のうちミレニアル世代以外が労働参加率の改善を牽引した印象は拭えません。
平均時給は、2009年4月以来の力強い伸びを遂げ個人消費が成長をけん引する期待感を募らせます。では非管理職・生産労働者のうち、どのセクターが押し上げたかと申しますと、今回は民間サービスが前年比3.3%の上昇と平均時給のラインに乗せてきました。民間サービスと財の部門別を除けば、13セクターのうち6セクターが平均の伸びを上回り、そのうち民間サービス部門では情報(5.5%上昇)、小売(4.6%上昇)、娯楽・宿泊(4.3%上昇)の他に卸売(4.1%上昇)が入りました。財部門も引き続き3.5%の上昇となり、前月と同じく建設(4.2%上昇)と鉱業(4.0%上昇)が好調でした。
ここまで文句なしの好結果だった米12月雇用統計ですが、この方達には難問を投げかけたといっても過言ではないでしょう。はい、Fedです。2018年12月のFOMCでは、2019年に2回の利上げへ見通しを下方修正してきましたよね。
引き続きFedとFF先物市場の見方と乖離しており、2019年の見通しは据え置きが優勢ながら、1回の利上げ織り込み度も徐々に上昇しています。こうした乖離の解消をFedは好感したいところでしょうが、パウエルFRB議長は米12月雇用統計後の講演で、抑制的なインフレ動向を受け「慎重な姿勢」を維持するとの見解を寄せました。賃上げ動向を意識した市場は利上げに急がないスタンスを歓迎、ダウが一時650ドル超の上昇を遂げ前日の下落幅を打ち消してきたのも、むべなるかなですね。
(カバー写真:The Open University/Flickr)
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