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米政府機関閉鎖は35日で終了も、壁建設予算をめぐる協議は継続

by • January 26, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off3039

Government Shutdown Ends, But Border Wall Fight Continues.

山が動きました。

トランプ大統領は25日、米上下院が発声投票により満場一致で可決したつなぎ予算案に署名しました。今回のつなぎ予算案には、トランプ氏が要求し政府機関閉鎖につながったメキシコ国境間の壁建設費用57億ドルは含まれません

しかし、トランプ氏はツイッターで「譲歩ではない」と明言。政府機関の閉鎖で無給を余儀なくされた約80万人の連邦職員のためだと説明。2018年12月22日以降、未払いだった給与は遡及的に支給されます。

trump-twitter
(出所:Twitter

メキシコ国境感の壁建設こそ盛り込まれなかったものの、大統領の面目も立ちました。国土安全保障関連費の予算をめぐり、超党派で両院協議会が設立されたのです。トランプ氏は政府機関閉鎖中に「非常に強力な代替案」として、メキシコ国境間の壁建設が予算に盛り込まれない場合、国家非常事態宣言を通じ米議会を迂回する手段に訴える可能性をちらつかせていました。しかし、非常事態宣言が複数の訴訟を引き起こすリスクをはらむため、米議会と妥結する道を模索したと言えるでしょう。両院協議会の参加者は以下の通りで、上院からは歳出委員会に所属する7名、下院からも歳出委員会に参加する6名が入っています。なお、東部時間の1月26日未明時点で、下院歳出委員会からは共和党メンバーは不明です。

(上院)
リチャード・シェルビー(アラバマ、共和、歳出委員会委員長)
ロイ・ブラント(モンタナ、共和)
シェルビー・ムーア・カピート(ウエストバージニア、共和)
ジョン・ホーベン(ノースダコタ、共和)
パトリック・ライリー(バーモント、民主、歳出委員会副委員長)
ディック・ダービン(イリノイ、民主、上院院内総務)
ジョン・テスター(モンタナ、民主)

(下院)
ニタ・ローイ(NY、民主、歳出委員会委員長)
ルシール・ロイバル−アラード(カリフォルニア、民主)
デビッド・プライス(ノースカロライナ、民主)
バーバラ・リー(カリフォルニア、共和)
ヘンリー・クエアー(テキサス、民主)
ピート・アギラー(カリフォルニア、民主)

現時点で上院はメキシコ国境に近い南部の出身者アラバマ州の1名である半面、下院はメキシコ移民が人口の22%を占めるテキサス州から1名、37%を占めるカリフォルニア州の議員が3名並びます。

過去最長の政府機関閉鎖は35日で幕引きとなったとはいえ、2月25日までのつなぎ予算で合意したに過ぎません。3月1日には債務上限引き上げ停止が解除されるため、再び政府機関が閉鎖されるリスクを残します。

今回の政府機関の閉鎖は、これまでの試算に基づくと成長率を約1%押し下げたと考えられます。企業や個人の活動にも影響が及んだとされ、例えば2018年12月以降の政府機関閉鎖により、24日にはNY州ラガーディア航空をはじめニュージャージー州ニューアーク・リバティ国際空港、ペンシルベニア州フィラデルフィア国際空港で飛行機の発着遅延が発生しました。運輸省傘下の連邦航空局(FAA)によれば、無給での勤務が求められる航空保安官などの職員1.4万人の間で病欠が増加したためです。1月24日には、国土安全保障省傘下の運輸保安庁(TSA)の航空保安官の欠勤も急増し出勤予定者の10%に到達、2013年の政府機関閉鎖時の3%を超えて過去最多を更新していました。

空以外でも、支障をきたしていました。連邦捜査局(FBI)からは捜査に障害が発生しているとの報告が上がり、24日には、ケリー前大統領主席補佐官をはじめ国土安全保障長官の経験者4名が、連名でトランプ氏と米議会宛てに書簡を提出、国土安全を守る職員に無給の勤務を強いるべきではないと主張したものです。

税金還付の遅延も、視野に入っていました。1月28日から通常通り納税申告・税還付が行われる予定だったところ、職員不足のリスクが浮上したためです。無給での勤務を要請された内国歳入庁(IRS)職員は全体の12%から57.4%へ改善される予定でしたが、組合によれば数百人の欠勤者が出る可能性が指摘されていました。

その他、政府機関の一部閉鎖は15省庁中、9省庁に影響が及んだだけでなく、米通商代表部も対象だったため米中通商協議も無傷ではなかったと考えられます。

つなぎ予算で合意した25日は、トランプ大統領の元顧問であるジャー・ストーン氏の身柄がフロリダ州で拘束されました。モラーと区別検察官が率いるロシアゲートをめぐり、司法妨害、偽証罪など7件の罪で起訴されています。つなぎ予算合意と今回の逮捕劇が同じ日だったというのは、果たして偶然だったのでしょうか。

同日と言えば、Fedが早期に保有資産圧縮を打ち止めするとのニュースも、FOMC直前レポートとしてウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が伝えていました。米株が5週続伸する過程にあって、このような材料を飛ばして来るとは、むしろ今後の経済押し下げ効果に対し疑心暗鬼になってしまいます。政府機関の閉鎖終了とWSJ紙のニュースを受けても、S&P500の上昇率が1%以下だったことは、市場も同様に感じたのでしょうか。

(カバー写真:The White House/Flickr)

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