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FOMC、無制限の量的緩和拡大を決定

by • March 23, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off4447

Fed’s Bold Action : Unlimited QE , And Lending Facilities To Support Corporate Credit.

米連公開市場委員会(FOMC)は3月23日、緊急会合で量的緩和の規模拡大をした。15日の緊急会合時は今後数ヵ月で7,000億ドル(米国債5,000億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)2,000億ドル)としたが、今回市場機能の円滑化の他、金融政策の効果が市場環境と経済に幅広く行き渡るよう「必要な規模(the amounts needed)」へ変更した。いわば、無制限の量的緩和へ舵を切った格好だ。今週は米国債を3,750億ドル、MBSを2,500億ドル取得する。

また、資産買入の対象に政府機関保証付きの商業不動産ローン担保証券(CMBS)を追加した。

チャート:Fedの保有資産動向

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(作成:My Big Apple NY)

その他、金融危機時に導入した貸出制度の再開に加え、信用供与を企業などへ広げるべく新たな市場支援の枠組みを決定した。米財務省の為替安定化基金(ESF)は、一連の貸出制度や市場支援制度に向け300億ドル出資し、最大3,000億ドル相当の流動性供給を支援する。

1)ターム物資産担保証券貸出制度(TALF)の再開
・学生ローンや自動車ローン、クレジットカード・ローン、中小企業庁(SBA)保証付き中小企業向けローンを裏付けとした資産担保証券(ABS)を担保に貸出を実施。
・対象はAAA格付け、ドル建てで、新規に組成される、または最近組成された償還まで3年以下のABS。
・現時点で貸出総額は1,000億ドル(2009年3月開始当時は2,000億ドル)、9月30日まで実施へ。
・米財務省のESFが特別目的会社に100億ドル出資。
・金融危機時に実施済み。

2)プライマリー・マーケット・コーポレート・クレジット・ファシリティ(PMCCF)
投資適格級(BBB-/Baa3まで最低2社からの格付けが必要)で、償還まで4年以下の社債を発行体から直接買い入れを通じ、つなぎ融資を行う
・対象は米国に本社を置き、米国内で操業する企業。
・対象企業による配当支払い、自社株買いは禁止
9月30日まで実施へ。
・米財務省のESFがPMCCFのための特別目的会社に100億ドル出資。

3)セカンダリー・マーケット・コーポレート・クレジット・ファシリティ(SMCCF)
投資適格級(BBB-/Baa3まで、最低2社からの格付けが必要)の社債、並びに同等の上場投資信託(ETF)を市場を通じて買い入れ
9月30日まで実施へ。
・米財務省のESFがPMCCFのための特別目的会社に100億ドル出資。

1)のFedは、今回の声明で「最大3,000億ドル」の資金供給を実施すると説明した。TALFが1,000億ドルを占めるため、2)と3)で2,000億ドルと想定される。

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その他、18日に再導入を決定した貸出制度”マネー・マーケット・ミューチュアル・ファンド・リクイディティ・ファシリティ(MMLF)”の担保対象に地方債の一種であるVRDN、預金証書を追加。再導入発表時は米国債、政府機関債、高格付け(A1、F1、P1)の資産担保証券(ABS)とコマーシャル・ペーパー(CP)だった。

17日に再導入を決定した市場支援制度”コマーシャル・ペーパー・ファンディング・ファシリティ(CPFF)”に、高格付けで非課税のCPを追加。17日発表当初、貸出金利は3ヵ月物翌日物金利スワップ(OIS)に200bp上乗せした水準だったが、今回、A1等に対しては110bp上乗せへ引き下。2021年3月17日まで実施する。

さらに、Fedはまもなく中小企業向けの貸出制度”メイン・ストリート・レンディング・プログラム”を発表する方針を表明した。メイン・ストリートとは、ウォール・ストリートに対し、一般企業を指す。詳述を避けたが、理由としては①未だ内容を策定中、②景気支援策を含め議会の対応を見極め中――である公算が大きい。声明文では「公共と民間にわたり、雇用と所得の喪失を抑制するため、そして混乱収束局面での迅速な回復を支えるため、積極的な行動が望まれる」と明記していた。現段階では連邦準備法13条3項目を法的根拠にESFを通じた信用供与しか行えず、米議会の行動が待たれる。

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ここまでご覧になって、首を傾げられた方はFed通です。今回、名目上は特別目的会社が取得しますが、本来であればFRBは社債やETFなど民間の証券は取得できないのですよ。そこで、活用されたのが連邦準備法13条(3)項目で、「異常かつ緊急の(unusual and exigent)」際、5人以上のFRB理事と米財務省の承認の下、企業を始め個人、パートナーシップなどへの信用供与が可能になると明記してあります。金融危機時においても、同項目が法的根拠とされていたんですよね。

パウエルFRB議長率いるFOMCはさすが、米議会より迅速に行動しますよね。米上院で22日、1.3兆ドルの景気支援策をめぐる動議が否決、ダウ先物が約950ドルも急落し取引停止に見舞われたため、緊急会合に踏み切ったに違いありません。

<ご参考:FRB、CPFFなど金融危機時の市場支援制度を再開>

米連邦準備制度理事会(FRB)は3月17日、コマーシャルペーパー・ファンディング・ファシリティー(CPFF)と米国債入札に参加するプライマリー・ディーラー・クレジット・ファシリティー(PDCF)向けの市場支援制度の再開を決定した。いずれも、金融危機時に導入した枠組みで、信用市場の緊張緩和や企業の資金繰り支援が狙い。詳細は以下の通り。

(CPFF)
・FRBがコマーシャル・ペーパー(CP)の発行体から直接、CPを取得
・財務省はCPFFの再開を承認、同省の為替安定化基金(ESF)からCPFFに100億ドルの資金を提供。
・金融危機時、FRBはCPFFを通じCPを約7,380億ドル取得
・期間は設定せず。

チャート:金融危機時のCP取得額

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(作成:My Big Apple NY)

(PDCF)
・コマーシャル・ペーパー(CP)を始め地方債、証券化商品などを担保として、1日から最大90日間の資金を提供
・3月20日から再開。
・金利はプライマリー・クレジット金利(公定歩合、0.25%)などを適用。
・最低6ヵ月運用、状況次第で延長へ。

<ご参考:3月15日、ゼロ金利と量的緩和再開を決定>

FOMCは、3月15日に開催した緊急会合でFF金利誘導目標を従来の1.0~1.25%から100bp引き下げ0~0.25%に設定した。新型コロナウイルス感染拡大が全米で広がるなか、3月3日の50bpに続く緊急措置と合わせ、2回の利下げで2015年以来のゼロ金利政策へ戻した格好だ。さらに、機能不全に陥る市場を支援するため、大規模な量的緩和の再開も発表。向こう数ヵ月で7,000億ドル(米国債を5,000億ドル、住宅ローン担保証券を2,000億ドル)取得すると表明、量的緩和の再開を決定した。

チャート:FF金利とプライマリー・クレジット金利

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(作成:My Big Apple NY)

詳細は、以下の通り。

・量的緩和の再開を決定 。今後数ヵ月において、米国債を少なくとも5,000億ドル、MBSを2,000億ドル、合計7,000億ドル取得する。
・FOMCは、プライマリー・クレジット金利(健全性の高い金融機関向けの貸出金利、公定歩合を指す)16日から150bp引き下げ、0.25%に設定 する。金融機関に割引窓口を通じた緊急貸出制度の活用を促すことが狙いで、預金機関は最大90日間の借入が可能に。なお、同金利は金融危機時の0.5%以下に引き下げた。
・FOMCは、預金準備率を26日からゼロへの引き下げを決定。金融機関が危機時に備え積み上げた資本保全のためのバッファーを活用し、企業や家計への融資を支援することが狙い。
・米国は日本(日銀)、ユーロ圏(ECB)英国(イングランド銀行)、カナダ(カナダ銀行)、スイス(スイス国立銀行)の6ヵ国と協調し、ドル資金供給のためのスワップ枠の設定で合意 。
・反対票はクリーブランド地区連銀のメスター総裁1人で、量的緩和の再開など一連の措置を支持したものの、0~0.25%への利下げの代わりに0.5~0.75%への利下げを求めた。

(カバー写真:)

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