April Doesn’t Shower But Pour : Worst Jobless Rate And Record 20.5 Million Jobs Lost.
米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比2,050万人減となり、市場予想の2,200万人減ほど悪化しなかった。とはいえ、新型コロナウイルス感染拡大を受け、NFPが算出される12日を挟む週までに全米人口の約95%が外出禁止関連措置を講じ経済活動が停止したため、前月の87.0万人減(70.1万人減から下方修正)から一段と急減し、1939年に統計が開始して以来で最悪となった。米労働統計局は、3月に続き結果を受け「新型コロナウイルスの影響と感染拡大を抑制する努力を反映した」と説明している。
2月分の4.5万人の下方修正(27.5万人増→23.0万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で21.4万人の下方修正となった。2~4月の3ヵ月平均は704.7万人減となり、2019年平均の17.5万人増を大きく下回った。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比1,952万人減と市場予想の2,185万人減ほど減少せず。ただし、前月の84.2万人減(71.3万人増から上方修正)より急激に下げ幅を広げ、統計開始以来で最大の減少幅となった。民間サービス業も1,717万人減となり、前月の76.8万人減(65.9万人増から上方修正)と、同様に記録を塗り替えた。
チャート:NFP、失業率ともに統計開始以来で最悪
サービス部門のセクター別動向は、主要業種が全て減少。特にレストランなど飲食店を指し娯楽・宿泊に含まれる食品サービスは、外出禁止措置の打撃を全面に受け、雇用減の約4分の1を占めた。なお3月は速報値で11業種別で4セクターが増加し1位は政府、2位は情報、3位は卸売だったが、修正値を経て公益が横ばいになった程度で改定値では公益以外が減少していた。4月のサービス部門の詳細は、以下の通り。
(サービスの主な内訳)
・娯楽・宿泊 765.3万人減<前月は49.9万人減、6ヵ月平均は133.1万人減
(そのうち食品サービスは549.1万人減<前月は42.8万人減、6ヵ月平均は57.8万人減)
・教育・健康 254.4万人減<前月は10.1万人減、6ヵ月平均は40.4万人減
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は208.7万人減<前月は6.4万人減、6ヵ月平均は32.8万人減)
・専門サービス 212.8万人減<前月は6.9万人減、6ヵ月平均は35.2万人減
(そのうち、派遣は58.4万人減<前月は0.7万人減、6ヵ月平均は9.1万人減)
・小売 210.7万人減<前月は4.5万人減、6ヵ月平均は35.4万人減
・その他サービス 126.7万人減<前月は3.8万人減、6ヵ月平均は21.2万人減
・政府 98.0万人減<前月は2.8万人減、6ヵ月平均は15.1万人減
・輸送/倉庫 58.4万人減<前月は0.7万人減、6ヵ月平均は9.1万人減
・卸売 36.3万人減<前月は0.3万人減、6ヵ月平均は5.9万人減
・金融 26.2万人減<前月は0.3万人減、6ヵ月平均は3.5万人減
・情報 25.4万人減<前月は0.4万人減、6ヵ月平均は3.8万人減
・公益 0.3万人減<前月は横ばい、6ヵ月平均は0.1万人減
財生産業は前月比235.5万人減と、市場予想の250万人減より下げ幅を縮めた。とはいえ、前月の7.4万人減(5.4万人から修正)より格段に弱く、こちらも過去最悪に。在宅勤務や工場閉鎖を余儀なくされるなか製造業が最も打撃を受け、次いで建設、鉱業が落ち込んだ。詳細は、以下の通り。
(財生産業の内訳)
・製造業 133.0万人減<前月は3.4万人減、6ヵ月平均は22.0万人減
・建設 97.5万人減<前月は3.3万人減、6ヵ月平均は22.0万人減
・鉱業・伐採 5.0万人減(石油・ガス採掘は4,800人減)<前月は0.7万人減、6ヵ月平均は1.3万人減
チャート:全てのセクターが記録的な減少に
平均時給は前月比4.7 %上昇の30.01ドル(約3,200円)と、市場予想の0.5%を大幅に上回った。前月の0.4%も軽く超えた。前年比は7.9%上昇、市場予想と前月値の3.3%(3.1%から上方修正)の2倍以上の伸びとなり、前月比とともに過去最大を記録した。新型コロナウイルス感染拡大過程ながら、3%超えは21ヵ月連続となる。平均時給の大幅増は、①娯楽・宿泊に含まれる食品サービスなど時給の低い職が急減し全体の平均時給が押し上げられた統計上の事情、②コロナ禍で働く従業員への賃上げ――などが挙げられる。
チャート:賃金は低賃金職の急減を一因に上振れ
週当たりの平均労働時間は3月に続き34.2時間と、市場予想の33.5時間と前月の34.1時間を上回った。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間はボーイング737MAXの生産停止に加え、新型コロナウイルスでのサプライチェーン停滞が響き38.3時間と前月の40.1時間から大きく短縮し、金融危機後まもない2009年6月以来の低水準に。全体の約7割を占める民間サービスは33.4時間と、2010年5月以来の水準へ短縮した前月の32.9時間から延びた。
失業率は14.7%と、市場予想の16%を下回った。前月の4.4%から10.3%ポイントも急伸し、上げ幅と水準含め、過去最悪となる。失業者は前月比1,590万人増の2,310万人となった。労働参加率は60.2%と、市場予想の61%を下回った。前月の62.7%から大きく低下し、1973年1月以来の低水準となる。就業率は前月の60.0%から51.3%へ急低下し、統計開始以来で最大の下げ幅であり、最低の水準を更新した。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比11.6%減の1億1,432万人、前月から1,498万人減少した。パートタイムは同28.0%減の1,911万人となり、前月から745万人減少した。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が1,952万人も急減した結果、前月比14.9%減と2ヵ月連続でマイナスとなった。平均時給が前月比で5%近い伸びを達成したものの、雇用減が響き労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比10.9%減と、こちらも2ヵ月連続で落ち込んだ。
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は22.8%と、前月の8.7%を超え統計開始以来で最高となった。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は前月比で2倍強の1,090万人となった。
チャート:不完全失業率は急伸した陰で、労働参加率は1975年以来の低水準で就業率は過去最低
2)長期失業者 採点-×
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要があるため、3月に長期失業者に関連する項目が低下したものの、労働参加率の低下が示すように長期失業者が労働市場から退出したことを示唆する。失業期間の中央値は2.0週と、前月の7.0週から急激に短縮し統計開始以来で最も短い。27週以上にわたる失業者の割合は4.1%と、前月の15.9%から急低下し過去最低に。平均失業期間は6.1週と、こちらも前月の17.1週を下回り統計開始以来で最低だった。
3)賃金 採点-〇
大幅悪化が続く雇用統計の数字のなかで、3月に続き唯一明るい数字となったのが、平均時給である。今回は前月比4.7%上昇、前年比は7.9%と共に過去最大の伸びを記録した。前年比は21ヵ月連続で3%超えとなる。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比4.3%上昇の25.12ドルと、2017年11月から続く増加トレンドを維持。前年比で7.7%と、ヘッドラインそろって記録を更新した。
4)労働参加率 採点-×
労働参加率は60.2%と前月の62.7%から急低下し、1973年1月以来の水準へ落ち込んだ。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は前月比3.9%減1億5,648万人、非労働人口は同6.8%増の1億342万人だった。
――労働統計局は、前回に続き結果につき「新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う抑制措置」が背景と説明したように、特別枠を設けて影響について詳述していました。以下の内容によれば、引き続き失業者数はこれでも過小評価されている可能性を残します。
(家計調査)
・家計調査は戸別訪問あるいは電話で実施するが、戸別訪問は外出禁止措置と安全性の観点から前回に続き中止。その結果、回答率は約73%と通常平均より13%下回る。
・家計調査(失業率や労働参加率などを調査)の対象期間は4月12日~18日。
・調査対象者は「被雇用者」、「失業者」、「非労働力人口」の3つに分類されるが、今回は対象期間に勤務せずとも早々の職場復帰を見込む者につき、「一時解雇者」として「失業者」に割り当てれ、4月はこの該当者が急増した。同時に「被雇用者」ながら「欠勤中」と回答した者は、「一時解雇者」として「失業者」に分類されるはずが、多くがそうなっておらず(筆者注:失業者は今回の結果より多かった可能性を示唆)。
チャート:一時解雇者数は史上最多に(チャートの数字は季節調整前)
(事業所調査)
・就労者数や平均時給、週当たり平均労働時間をまとめる事業所調査(事業所が12日を含む週の賃金支払いデータを提供し実施)では、現在職についてなくとも12日を含む週に給与が支払われた労働者数を元に算出。
・米国における労働者の給与の支払いは、週毎が3分の1、2週間に1回が40%、週2回が20%、月に1回が残り約7%。
・事業所調査では通常、5分の1のデータにつき4大地域ごとの収集センターと電話で調査結果を取得。今回、収集センターが閉鎖されたためコンピュータ送信されたが、データ取得率は79%と通常平均通りだった。
その他の詳細は、あらためて追加します。
(カバー写真:The National Guard/Flickr)
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