Private Job Growth Slows, While Job Cuts And Hires Both Surge.
7月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定数をおさらいしていきます。
米7月ADP全国雇用者数は前月比16.7万人増となり、市場予想の120万人増を大幅に下回った。経済活動の再開が少なくとも全米の約半分で一時停止した影響を受け、伸びは急速に鈍化した。とはいえ、前月分が431.4万人増と速報値の236.9万人増から豪快に上方修正されるなか、3ヵ月連続で増加している。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。
チャート:ADP全国雇用者数、2ヵ月連続で百万人単位の増加を達成
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(作成:My Big Apple NY)
セクター別では、サービス部門が16.6万人増にとどまった。内訳は以下の通りで、6月の増加のうち約4割貢献した娯楽・宿泊の雇用が予想通り経済活動再開の一時停止を受け大幅減速していた。金融に至っては、3ヵ月ぶりに減少に反転、情報は6ヵ月連続で減少した。詳細は、以下の通り。
・専門サービス→5.8万人増、3ヵ月連続で増加<前月は27.6万人増
・教育/健康→4.7万人増、3ヵ月連続で増加<前月は51.2万人増
・貿易/輸送→4.1万人増、3ヵ月連続で増加<前月は79.2万人増
・娯楽/宿泊→3.8万人増、3ヵ月連続で増加<前月は187.3万人増
・その他→0.3万人増、3ヵ月連続で増加<前月は32.9万人増
・情報→0.3万人減、6ヵ月連続で減少=前月は0.3万人減
・金融→1.8万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は3.9万人増
財部門(製造業、建設、鉱業)は0.1万人増にとどまったが、3ヵ月連続で増加した。内訳をみると、製造業が3ヵ月連続で増加した程度で、鉱業は12ヵ月連続で減少、建設は3ヵ月ぶりに減少した。
・製造業 1.0万人増、3ヵ月連続で増加<前月は30.7万人増
・建設 0.8万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は43.2万人増
・鉱業 0.1万人減、12ヵ月連続で減少>前月は1.3万人減
ADPリサーチ・インスティチュートのアフ・イルディルマス共同ヘッドは、結果を受け「労働市場の回復は鈍化し、あらゆる企業の規模でそうした影響が現れている」と指摘した。
▽米7月チャレンジャー人員削減数は急増も、採用予定数も同程度増加
米7月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比で約7倍増の26万2,649人と5ヵ月連続で高水準だった。経済活動再開が一時停止するなか、前月比でも54%増となり、引き続き単月で過去最多を更新。ただし、規制再導入は対面のサービス業などにとどまるため3月の過去最悪を68%下回る。
チャート:人員削減予定数、前月比54%増と大幅増に
1~7月までは前年同期比で約3倍増の184万7,969人だった。また1年の折り返し地点を過ぎたばかりだというのに、2001年の過去最悪だった195万6,876人にあと約11万人に迫る。
発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は「失業保険拡充の停止は、企業が一時解雇でなく人員削減を進める状況では、何百万もの人々の生活に影響を及ぼす」と懸念を寄せた。また「消費者が買い物に慎重で企業は閉鎖を迫られ、破産申請が相次ぐなか、人員削減トレンドが終結するには時間が掛かる」と予想。前月に続き、悲観的な見方を寄せた。
人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。なお、6月は1位が娯楽・宿泊、2位が政府、3位が教育、4位がサービス、5位が航空・防衛だった。
1位 娯楽・宿泊 10万9,940人(全体の41.9%)
2位 輸送 6万5,093人(全体の24.8%)
3位 エネルギー 8,881人(全体の3.4%)
4位 サービス 7,299人(全体の2.8%)
5位 小売 6,517人(全体の2.5%)
州別動向は、年初来で以下の通り。なお、6月時点では1位が人口が最も多いカリフォルニア州、2位は死者数が最多のNY州、3位は観光地で知られるフロリダ州、4位は全米で経済活動再開が最も早かったテキサス州、5位は製造業比率の高いオハイオ州だった。
1位 カリフォルニア州 32万5,829人(全体の17.6%)
2位 ニューヨーク州 20万4,823人(全体の11.1%)
3位 フロリダ州 17万6,588人(全体の9.6%)
4位 テキサス州 14万9,647人(全体の8.1%)
5位 オハイオ州 8万5,751人(全体4.6%)
リストラ実施の理由別ランキングは、単月で以下の通り。なお、6月は1位が市場環境、2位はコスト削減、3位は新型コロナウイルス、4位は需要鈍化、5位は自主退職だった。
1位 市場環境 7万7,092人(全体の29.4%)
2位 新型コロナウイルス 6万3,517人(全体の24.2%)
3位 需要鈍化 6万831人(全体の23.2%)
4位 自主退職/買収 1万7,069人(全体の6.5%)
5位 コスト削減 1万4,675人(全体の5.6%)
採用予定数は、前年同月比で約11倍増の24万6,507人だった。前月比でも約3倍増と、力強い伸びを維持した。7月単月では、少なくとも2015年以降で最大を記録している。チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社によれば、ネット通販の普及を受け倉庫を始め、サービスや娯楽・宿泊、政府も採用を進めていた。
セクター別では、以下の通り。なお、6月の1位はヘルスケア、2位は政府、3位は航空・宇宙、4位は通信、5位は服飾だった。
1位 倉庫 10万340人(全体の40.7%)
2位 サービス 3万3,585人(全体の13.6%)
3位 娯楽・宿泊 2万2,212人(全体の9.0%)
4位 政府 2万2,024人(全体の8.9%)
5位 教育 1万7,189人(全体の7.0%)
――7月は人員削減予定数が前月比54%増ながら、採用予定数も大幅に増加、そろって25万人を挟んだ増加となりました。採用予定数は倉庫が牽引していたわけですが、問題は応募者数で新型コロナウイルス感染を懸念して希望者が定員に満たない状況を表していてもおかしくありません。例えばアマゾンは、5月末に「臨時雇用の17.5万人の約7割を正社員とする方針」と発表、需要の高さを確認できますが、逆に言えば正社員が少ないことを示唆します。
その他、サービスや娯楽・宿泊は、経済活動の再開を継続する州で増加していることでしょう。ただし、小売については今週、紳士服小売メンズ・ウェアハウスの親会社テイラー・ロード・ブランドのほか、百貨店のロード・アンド・テイラーもチャプター11を申請するなど、”小売の終末”状態は継続。今後も人員削減の波はとどまりそうにありません。
人員削減と採用で強弱まちまちな内容のところ、米7月ADP全国雇用者数は期待外れで人員削減予定数の増加と整合的。その半面、トランプ大統領は「大きな数字が飛び出す」と発言しており、やはり事前に指摘されていたように季節調整のマジックで底上げされる可能性が高いのでしょうか?
(カバー写真:New York Encounter/Flickr)
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