Fed Introduces Average Inflation Targeting, Suggesting Profoundly Low Rates Are To Stay Much Longer.
9月15~16日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を待たずに、パウエル議長率いる米連邦準備制度理事会(FRB)が動きました。
FRBは27日、カンザスシティ地区連銀主催の経済シンポジウム、通称「ジャクソンホール会議」の開催中に金融政策決定の中期的な基盤となる”長期的な目標と金融政策戦略”を公表。そこで、遂に物価目標の修正に踏み切ったのです。なお、一連の修正は全会一致で決定しました。
パウエル議長は、声明で「経済は常に進化している」と指摘。金融政策の目標達成する上での戦略は「新たな困難が発生するに合わせ、適応していかねばならない」と説明しています。その上で「修正した(長期的な目標と金融政策戦略)の声明は、特に多くの中低所得の地域社会のため、力強い労働市場がもたらす恩恵への評価を反映し、招かれざる物価の上昇を引き起こすことなく、活発な労働市場が維持されうる」と結びます。
その結果、以下の変更が加えられました。
〇雇用の最大化についての評価
前回:「最大化の水準から、どれほど不足(shortfall)しているかを評価」
今回:「最大化の水準から、どれほど逸脱(deviation)しているかを評価」
→コロナ禍により大量の失業者が溢れるなか、雇用回復を支援する姿勢を強化。
〇2%の物価目標
「いずれかの時点で、平均で物価2%を達成することを目指す」
「物価が長きにわたり2%以下で推移した場合、適切な金融政策として、物価が暫くの間2%をゆるやかに上回ることを目指す」
→平均インフレ目標の導入を表明、低金利政策へのコミットを強調。「物価が2%を超える」という見通しに沿って金融政策を決定するよりも、むしろ「2%を上回って推移した」事実を重視する姿勢へシフトすると同時に、それだけ長い間にわたり緩和策を維持する意思を表明。
平均インフレ目標の導入したとはいえ、パウエル議長は達成に向け「平均を定義する上で特定の数字に縛られることはない」と説明。あくまで「柔軟な平均インフレ目標のかたち」だといます。
チャート:ダウはFRBの決定を好感し、&P500とナスダックに遅ればせながら年初来リターンでプラスに迫る
2012年1月に初めて金融政策の中期的な基盤となる”長期的な目標と金融政策戦略”を発表した当時は「物価目標には個人消費支出価格指数(PCE)を用い、目標は2%」と発表し、事実上のインフレ目標を導入しました。あの時は欧州債務危機が世界経済を直撃し、金融緩和策が長期化するメッセージを送る必要がありました。
翻って現在、コロナ禍という未曽有の危機を受け、不確実性がかつてないほど高まっています。第2波、第3波がいつ襲ってくるのか、また秋以降はインフルエンザとの「ツインデミック」のリスクに直面しかねません。米大統領選をめぐる不確実性も重なり、FRBは米株安に振れやすい9月を控え、金融市場に一段の緩和効果を与えたと言えるでしょう。
FRBの決定を受け、少なくとも午前10時50分時点(NY時間)でダウは250ドル高を達成し、年初来リターンをプラス圏へ戻そうとしています。労働市場がコロナ禍以前の水準を回復するにはまだまだ時間が掛かるでしょうが、米株市場はFRBを始め各国中銀の金融緩和と財政政策に支えられ、さらに上を目指すかのようです。いつもはFRBに辛辣なトランプ大統領ですが、共和党大会中の株高というFRBの思わぬ援護射撃にご満悦かもしれませんね。
(カバー写真:Federalreserve/Flickr)
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