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米9月雇用統計・NFPの伸び鈍化、新学期入りに教員の就労者数が大幅減

by • October 3, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off2335

September Jobs Report Shows Fewer Hires, But Only Government Slashes  Workers.

米9用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比66.1万人増となり、市場予想の85万人増を下回った。ただし、前月の148.9万人増(137.1万人増から上方修正)を含め5ヵ月連続で増加し、これで約1,142万人を回復したことになる。3~4月の記録的な減少(2,216万人)を回復するにはあと1.074万人必要だ。なお、トランプ政権は政策アジェンダとして、10ヵ月間で1,000万人の雇用創出を掲げる。

チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと約1,074万人増加する必要。

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(作成:My Big Apple NY)

7月分の2.7万人の下方修正(173.4万人増→176.1万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で14.5万人の上方修正となった。7~9月の3ヵ月平均は130.4万人増となり、コロナ禍を受けた大幅減から回復をたどるなかで、2019年平均の17.5万人増を大幅に上回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比87.7万人増と市場予想の85.0万人増を上回った。前月の102.2万人増(102.7万人増増から下方修正)に届かなかったものの、増加傾向をたどる。民間サービス業は78.4万人増となり、前月の97.7万人増(98.4万人増から下方修正)を下回った。

チャート:NFP、失業率ともに5ヵ月連続で改善

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向は、11業種中10種が増加し前月の11種を下回った。ただし、8月は国勢調査に関わる臨時雇用が押し上げた分、政府が減少したに過ぎない。また、コロナ禍で学校再開の足並みがそろわないなか、新学期開始に伴う季節調整が州・地方政府(主に教職)を押し下げた要因もある。今回1位はフロリダ州やNY市などでレストランの店内での制限を課した営業が再開を控え、娯楽・宿泊が牽引した。その他、経済活動の再開が奏功し前月に小売、そして専門サービスも前月に続き好調だった。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

―増加した業種

・娯楽・宿泊 31.8万人増、5ヵ月連続で増加>前月は14.3万人増、6ヵ月平均は51.6万人減(そのうち食品サービスは20.0 万人増>前月は10.4万人増、6ヵ月平均は28.1万人減)
・小売 14.2万人増、5ヵ月連続で増加<前月は16.1万人増、6ヵ月平均は6.6万人減
・専門サービス 8.9万人増、5ヵ月連続で増加<前月は18.8万人増、6ヵ月平均は21.5万人減(そのうち、派遣は0.8万人増<前月は10.2万人増、6ヵ月平均は6.9万人減)

・輸送/倉庫 7.4万人増、4ヵ月連続で増加<前月は8.2万人増、6ヵ月平均は4.9万人減
・教育・健康 4.0万人増、5ヵ月連続で増加<前月は17.0万人増、6ヵ月平均は20.3万人減(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は10.8万人増>前月は10.0万人増、6ヵ月平均は15.1万人減)
・金融 3.7万人増、5ヵ月連続で増加>前月は2.6万人増、6ヵ月平均は2.4万人減

・その他サービス 3.6万人増、5ヵ月連続で増加<前月は7.0万人増、6ヵ月平均は6.7万人減
・情報 2.7万人増、過去4ヵ月間で3回目の増加>前月は2.6万人増、6ヵ月平均は4.5万人減
・卸売 1.9万人増、過去5カ月間で4回目の増加>前月は1.1万人増、6ヵ月平均は6.9万人減
・公益 0.3万人増>前月は横ばい、6ヵ月平均は0.1万人減

―減少した業種

・政府 21.6万人減、4ヵ月ぶりに減少<前月は46.7万人増、6ヵ月平均は15.4万人減

財生産業は前月比9.3万人増と、前月の4.5万人増(修正値)を含め5ヵ月連続で増加した。経済活動の再開に伴い、5カ月連続で製造業と建設が改善したと同時に、油価が40ドル前後で安定するなか鉱業は減少基調を保つ。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・製造業 6.6万人増、5ヵ月連続で増加>前月は3.6万人増、6ヵ月平均は10.0万人減
・建設 2.6万人増、5ヵ月連続で増加<前月は1.7万人増、6ヵ月平均は5.5万人減
・鉱業・伐採 0.1万人増、7ヵ月連続ぶりに増加(石油・ガス採掘は900 人減)>前月は0.8万人減、6ヵ月平均は1.6万人減

チャート:サービス11業種中全てが増加の快挙

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.1%上昇の29.47ドル(約3,120円)と、市場予想の0.2%を下回った。前月の0.3%(0.4%から下方修正)を超え、3ヵ月連続で上昇している。前年比は4.7%上昇し、前月の4.6%(4.7%から下方修正)を超えた。高い水準を保ち、前年比の3%超えは26ヵ月連続となる。

チャート:平均時給は前年比で4月をピークに鈍化しつつ高水準を維持

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は34.7時間と、市場予想と前月の34.6時間を上回った。結果、統計が開始した2006年以来で最長となる5月の水準に並んだ。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は39.8時間と、前月の39.7時間を上回り3月以来の40時間の回復に近づいた。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.7時間と、前月の33.6時間を上回った。なお5月は、33.8時間で少なくとも2006年以降で過去最長だった。

失業率は7.9%と、市場予想の8.2%を下回った。前月の8.4%からも低下し、過去最悪だった4月の14.7%でピークアウトを示す。失業者は前月比97.0万人減の1,258万人、就労者も同27.5万人増の1億4,756人と4ヵ月連続で増加した。

ただし、労働参加率は61.4%と前月の61.7%から低下し7月の水準に並んだ。コロナ禍を受け1973年1月以来の低水準だった4月の60.2%上回ったとはいえ、改善にブレーキが掛かった格好だ。就業率は過去最低だった4月の51.3%から5カ月連続で改善をたどり、56.6%と3月以来の高水準だった。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で若干増の1億2,369万人、前月から5.4万人増加した。パートタイムは同0.8%増の2,516万人となり、前月から18.8万人増加した。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が増加を続けただけでなく、平均労働時間も上昇したため、前月比1.0%増と5ヵ月連続でプラスとなった。平均時給が前月比で小幅ながら2ヵ月連続で上昇したほか雇用増が支え、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比1.1%増と、こちらも5ヵ月連続で増加した。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-〇
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は12.8%と、前月の14.2%から改善し3月以来の低水準だった。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は前月比20.6%減の621.4万人と大幅に5ヵ月連続で減少した。

チャート:不完全失業率、労働参加率、就業率はそろって改善傾向を維持

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(作成:My Big Apple NY)

2)長期失業者 採点-△
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均は20.7週と、前月の20.2週を超えコロナ禍前の2月の水準に近づいた。失業期間の中央値は17.8週と、前月の16.7週を超えび2012年11月以来の高水準に。27週以上にわたる失業者の割合は19.1%と、前月の12.0%を大幅に超えコロナ禍で経済活動が停止する直前の2月以来の水準へ上昇した。感染拡大中に労働市場から退出した潜在労働者が市場に戻ってきたことを示すが、吸収できるかが課題となる。

3)賃金 採点-△
今回は前月比0.1%上昇し、前月の0.3%(修正値)を含め3ヵ月連続で上昇した。前年比は4.7%上昇し、前年比で3%超えは25ヵ月連続。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で若干上昇の24.79ドル前年比でも4.6%上昇し、前月比と前年比ともに管理職を含めた全体を下回った。

4)労働参加率 採点-△
労働参加率は61.4%と前月の61.7%を下回った。1973年1月以来の低水準だった4月の60.2%、5月の60.8%を超えたとはいえ、改善ペースが鈍化した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。

――今回、国勢調査の反動減に加え、州政府・地方政府の就労者数が前月比28.1万人減となり雇用の伸びが鈍化しました。しかし、これは前述したように、新学期入りを受け9月に増加する傾向が強い教員の雇用の季節調整が、今回はコロナ禍で学校再開の足並みが乱れるなか一律に掛かり、過度に就労者数を押し下げたことが主因です、
それにしても、全体的に雇用の回復ペースは過去5カ月間で最も鈍かった。さらに①失業率の改善は労働参加率の低下が一因、②生産労働者・非管理職の賃金の伸びが管理職を含めた全体以下、③労働参加率が依然としてコロナ前の水準を回復していないなかで、長期失業者の割合が2月の水準へ戻した――といった悪材料もありました。

一方で、①週当たり労働時間が統計が開始した2006年以来で最長となる5月の高水準に並ぶ、②低賃金ながら対面サービスの職の確保を目指すためか、平均時給の伸びは娯楽・宿泊や小売などが牽引、③不完全失業率が3月以来の水準へ低下--など好材料も確認されています。何より業種別の就労者数を見ると、政府以外は、油価の低迷が問題視されながら鉱業を含め全て増加していました。雇用はゆるやかなペースながら着実に戻し歩調をたどっており、金融政策が景気回復を下支えするなか、財政政策の後押しが待たれます。

(カバー写真:Phil Roeder/Flickr)

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