Holiday Hiring Pushes Up Payrolls, And Pushes Down Unemployment Rate.
米10用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比63.8万人増となり、市場予想の59.3万人増を上回った。新型コロナウイルス感染者数が過去最多を更新するなかでも、年末商戦の臨時雇用が押し上げ前月の67.2万人増(66.1万人増から上方修正)を含め6ヵ月連続で増加し、これで約1,207万人を回復したことになる。3~4月の記録的な減少(2,216万人)を回復するにはあと1,009万人必要だ。
チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと約1,009万人増加する必要。
8月分の0.4万人の下方修正(148.9万人増→149.3万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で1.5万人の上方修正となった。8~10月の3ヵ月平均は93.4万人増となり、コロナ禍を受けた大幅減から回復をたどるなかで、2019年平均の17.5万人増を大幅に上回った。
NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比90.6万人増と市場予想の68.5万人増を上回った。前月の89.2万人増(87.7万人増から下方修正)を超え、増加傾向を維持。民間サービス業は78.3万人増となり、前月の79.5万人増(78.4万人増から上方修正)を上回った。
チャート:NFP、失業率ともに6ヵ月連続で改善
サービス部門のセクター別動向は、11業種中8種が増加し前月の11種を下回った。前月に続き国勢調査の臨時雇用が剥落し政府が大幅に減少した。今回1位は年末商戦を辞変え娯楽・宿泊を始め3位に小売が入った。2位は専門サービスとなる。詳細は、以下の通り。
(サービスの主な内訳)
―増加した業種
・娯楽・宿泊 27.1万人増、6ヵ月連続で増加<前月は40.6万人増、6ヵ月平均は80.5万人増(そのうち食品サービスは19.2 万人増<前月は23.3万人増、6ヵ月平均は66.3万人減)
・専門サービス 20.8万人増、6ヵ月連続で増加<前月は12.2万人増、6ヵ月平均は19.1万人増(そのうち、派遣は10.9万人増>前月は2.2万人増、6ヵ月平均は9.2万人増)
・小売 10.4万人増、6ヵ月連続で増加>前月は2.3万人増、6ヵ月平均は31.4万人増
・輸送/倉庫 6.3万人増、5ヵ月連続で増加>前月は4.0万人増、6ヵ月平均は5.0万人増
・教育・健康 5.7万人増、6ヵ月連続で増加<前月は4.9万人増、6ヵ月平均は24.3万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は7.9万人増<前月は11.8万人増、6ヵ月平均は15.1万人減)
・その他サービス 4.7万人増、6ヵ月連続で増加<前月は4.9万人増、6ヵ月平均は15.6万人増
・金融 3.1万人増、6ヵ月連続で増加<前月は3.7万人増、6ヵ月平均は2.5万人増
・卸売 0.6万人増、過去6カ月間で5回目の増加<前月は1.9万人増、6ヵ月平均は1.6万人増
―減少した業種
・公益 0.2万人減、減少に反転<前月は0.2万人増、6ヵ月平均は横ばい
・情報 0.3万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は4.7万人増、6ヵ月平均は0.4万人増
・政府 26.8万人減、2ヵ月連続で減少<前月は22.0万人減、6ヵ月平均は4.1万人減
財生産業は前月比12.3万人増と、前月の9.7万人増(9.3万人増から上方修正)を含め6ヵ月連続で増加した。経済活動の再開に伴い、6カ月連続で製造業と建設が改善したと同時に、油価が40ドル前後で安定するなか鉱業は減少基調を保つ。詳細は、以下の通り。
(財生産業の内訳)
・建設 8.4万人増、6ヵ月連続で増加>前月は3.5万人増、6ヵ月平均は13.2万人増
・製造業 3.8万人増、6ヵ月連続で増加<前月は6.0万人増、6ヵ月平均は12.4万人増
・鉱業・伐採 0.1万人増、2ヵ月連続で増加(石油・ガス採掘は900 人減)>前月は0.2万人増、6ヵ月平均は0.5万人減
チャート:サービス、11業種中8種が増加
平均時給は前月比0.1%上昇の29.50ドル(約3,040円)と、市場予想の0.2%を下回った。前月の0.1%を含め、4ヵ月連続で上昇している。前年比は4.5%上昇し市場予想と一致した。前月の4.6%を下回ったとはいえ、高い水準を保ち前年比の3%超えは27ヵ月連続となる。
チャート:平均時給は前年比で4月をピークに鈍化しつつ高水準を維持
週当たりの平均労働時間は34.8時間と前月と変わらず、市場予想の34.7時間を上回った。結果、統計が開始した2006年以来で最長を保った。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.0時間と、前月の39.8時間を上回り3月以来の水準へ切り返した。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.8時間と、前月の33.7時間を上回り、今年5月に続き少なくとも2006年以降で過去最長だった。
失業率は6.9%と市場予想の7.6%並びに前月の7.9%から急低下し、3月以来の水準に。過去最悪だった4月の14.7%でピークアウトを示す。ただ、「雇用されているが休職中」の人の扱い依然として正確に反映されず、これを除くと失業率は約7.2%だった。失業者は前月比151.9万人減の1,106万人、就労者も同224.3万人増の1億4,981人と5ヵ月連続で増加した。
失業率が低下しただけでなく、労働参加率は61.7%と前月の61.4%から改善、8月の水準へ戻した。コロナ禍を受け1973年1月以来の低水準だった4月の60.2%上回る水準を維持し、就業率は過去最低だった4月の51.3%から6カ月連続で改善をたどり、56.6%と3月以来の高水準だった。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で1.0%増の1億2,369万人、前月から117万人増加した。パートタイムは同4.0%増の2,616万人となり、前月から100.2万人増加した。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が前月の伸びを上回ったほか、平均労働時間も上昇したため、前月比0.8%増と6ヵ月連続でプラスとなった。平均時給は前月比で小幅ながら4ヵ月連続で上昇したほか雇用増が支え、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.9%増と、こちらも6ヵ月連続で増加した。
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は12.1%と、前月の12.8%から改善し3月以来の低水準だった。ただし、経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は前月比6.1%増の668.3万人と6カ月連続で増加した。年末商戦の臨時雇用が増加した影響とみられる。
チャート:不完全失業率、労働参加率、就業率はそろって改善傾向を維持
2)長期失業者 採点-△
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均は21.2週と、前月の20.7週を超えコロナ禍以前の1月以来の高水準となった。失業期間の中央値は19.3週と、前月の17.8週を超え2012年10月以来の水準へ延びた。27週以上にわたる失業者の割合は32.5%と、前月の19.1%から急伸し2014年7月以来の水準をつけた。失業保険拡充の期限切れなどを背景に感染拡大中に労働市場から退出した潜在労働者が市場に戻ってきたことを示すが、吸収できるかが課題となる。
3)賃金 採点-〇
今回は前月比0.1%上昇し、前月の0.1%を含め4ヵ月連続で上昇した。前年比は4.5%上昇し、前年比で3%超えは26ヵ月連続。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.2%上昇の24.79ドル。前年比では4.5%上昇し、前月比のみながら管理職を含めた全体を上回った。
4)労働参加率 採点-〇
労働参加率は61.7%と前月の61.4%を超え8月の水準へ戻した。1973年1月以来の低水準だった4月の60.2%、5月の60.8%を超えた水準を保つ。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。
――今回、国勢調査の臨時雇用が減少したほか、州政府・地方政府の教育が押し下げ政府が26.8万人減だったものの、年末商戦に向けた臨時雇用が娯楽・宿泊、小売、輸送・倉庫で確認され、市場予想を上回る伸びとなりました。1日の新規コロナ感染者数が約12万人と過去最多を更新しながら、予想外の力強さをみせています。ただ、11~12月にかけては年末商戦の臨時雇用も剥落していくほか、バイデン政権への円滑な移行が進まなければ、対面サービスが必要な職を始め雇用の伸びが鈍化してもおかしくありません。
その他、10月は労働市場に労働者が戻ってきたせいか、長期の失業者が大幅に増加し、失業期間も延びています。ここで企業が採用活動に消極的になれば失業者を吸収できず、さらに悪化するリスクをはらみます。
(カバー写真:Eden, Janine and Jim/Flickr)
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