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1月FOMC:テーパリング観測を払拭、ボラティリティ上昇には言及せず

by • February 2, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off2481

Powell Squashes Early Exit Or Tapering Possibilities, Avoids Mentioning Market Volatility.

1月26~27日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場予想通りFF誘導金利目標を0~0.25%で据え置いた。資産買い入れについても、現状のペース(1ヵ月当たり1,200億ドル:米国債800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)400億ドル)を維持。前回、追加した「著しい進展がみられるまで(until substantial further progress)」とする量的緩和ガイダンスも当然ながら据え置いた。

一方で、資産価格の上昇については「金融政策ではなく、ワクチンと財政政策への期待」との論調を展開。ゲームストップなど個人投資家による的を絞った個人銘柄への買い集中による市場の混乱については、財務長官や米上下院議員、米証券取引委員会(SEC)と一線を画し言及を避けた。声明文の変更点は以下の通り。 修正箇所は、太字下線部をご参照。

【緩和策の確約】

※2020年4月以降、据え置き継続。

「FOMCは、困難なときを迎える米国経済を支援すべく、あらゆる手段を活用すると確約し、その上で最大限の雇用と物価安定の目標を推進する」

【景況判断】

前回:「新型コロナウイルスは、全米及び全世界にわたって人々と経済に甚大な苦難を強いている。経済活動と雇用は回復し続けているが、未だ年初の水準以下にとどまる。需要が一段と弱まり、油価が年初に下落した結果、消費者物価指数が押し下げられている。経済、そして家計と企業の信用の流れを支援するための政策手段をある程度反映し、全体的な金融環境は緩和的であり続けた」

今回:「新型コロナウイルスは、全米及び全世界にわたって人々と経済に甚大な苦難を強いている経済活動の回復ペースと雇用は足元数ヵ月でゆるやかとなり、パンデミックにより最も悪影響を受けた業種は特に脆弱だ。需要が一段と弱まり、油価が年初に下落した結果、消費者物価指数が押し下げられている。経済、そして家計と企業の信用の流れを支援するための政策手段をある程度反映し、全体的な金融環境は緩和的であり続けた」

【政策金利、金融政策の方針】

前回:「経済の道筋は、ウイルスの状況に大きく依存する。公共衛生の危機は、短期的に経済活動や雇用、物価の大きな重石となり、中期的な経済見通しに多大なリスクをもたらし続けるだろう。委員会は、長期的に雇用の最大化とインフレ目標2%の達成を追求する。物価が執拗に長期的な目標以下で推移するなか、委員会はインフレ平均値がいずれ2%で推移し、長期インフレ見通しも2%でしっかりとどまるよう、物価が暫くの間、わずかに2%を上回ることを目指す。委員会は、FF金利誘導目標を0~0.25%で据え置くことを決定、労働市場が雇用の最大化に則した水準に達し、インフレが2%へ上昇し暫くの間ゆるやかに2%を上回る軌道をたどると委員会が評価するまで、この目標レンジを維持すると見込む」

今回:「経済の道筋は、ワクチンの進展状況を含め、ウイルスの状況に大きく依存する。公共衛生の危機は、経済活動や雇用、物価の大きな重石となり、経済見通しに多大なリスクをもたらし続ける。委員会は、長期的に雇用の最大化とインフレ目標2%の達成を追求する。物価が執拗に長期的な目標以下で推移するなか、委員会はインフレ平均値がいずれ2%で推移し、長期インフレ見通しも2%でしっかりとどまるよう、物価が暫くの間、わずかに2%を上回ることを目指す。委員会は、FF金利誘導目標を0~0.25%で据え置くことを決定、労働市場が雇用の最大化に則した水準に達し、インフレが2%へ上昇し暫くの間ゆるやかに2%を上回る軌道をたどると委員会が評価するまで、この目標レンジを維持すると見込む」

【量的緩和】

前回から据え置き

「さらにFRBは市場が円滑に機能することを支えるべく、今後数ヵ月にわたり、米国債や政府機関の保証を得た不動産担保証券の買い入れ規模を少なくとも現状のペースで拡大し、市場の円滑化や、家計と企業の信用の流れを支援していく。金融政策の適切なスタンスを評価する上で、委員会は経済見通しに係る最新の情報が与える示唆を注視し続けていく。委員会の目標達成を妨げるリスクが表面化した場合、金融政策の姿勢を調整する用意がある。委員会は公共衛生や労働市場、物価から生じる圧力やインフレ見通し、金融動向は国際情勢など、広範囲にわたる情報を考慮に入れて評価していく」

【票決結果】

票決は全会一致。2020年11月以降、3回連続となる。FOMC投票権保有者は11名で、そのうちFRB正副議長、理事、NY地区連銀総裁の6名が常任、地区連銀総裁は1年間の輪番制で4名となる。今年の地区連銀総裁投票メンバーはリッチモンド地区連銀のバーキン総裁、アトランタ地区連銀のボスティック総裁、サンフランシスコ地区連銀のデーリー総裁、シカゴ区連銀のエバンス総裁。

チャート:FOMC参加者のタカハト度

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(作成:My Big Apple NY)

【パウエルFRB議長の記者会見、質疑応答のポイント】

〇金融政策について
→「雇用の最大化と物価の目標(しばらく2%をゆるやかに超えて推移)を達成するまで、ゼロ金利政策の維持することを適切と見込む」
→「ゼロ金利と保有資産の拡大(月1,200億ドル)といった政策手段は、経済に強力な支援を与え続ける」
Q&A→「物価上昇局面でも一時的と判断すれば、我々は忍耐強くあり続け、様子見姿勢を保ちすぐに行動しない

〇量的緩和について
→「雇用の最大化と物価の目標をめぐり著しい進展がみられるまで、現行の規模(月1,200億ドル)の買い入れを継続」
Q&A→「資産買入縮小の検討は時期尚早
Q&A→「資産買入のガイダンスの強化など、依然として手段はある」

〇経済、労働市場、物価について
→「経済活動は昨夏の急速な回復を経て、回復のペースは足元数ヵ月でゆるやかとなり、特にソーシャルディスタンシングの規制強化など感染再拡大に伴うパンデミックの悪影響を受けた業種で脆弱だ」
→「家計支出は旅行や宿泊などサービス部門で弱いままだ」
→「対照的に、部分的に低金利に支えられ住宅部門は完全に回復」
→「経済全般は、個人給付や失業保険の上乗せという多くの世帯や個人に不可欠な支援に支えられ、回復」
→「最近成立した追加経済対策(Relief Act)は追加的な支援を与えた。全体的な経済活動はパンデミック以前の水準を下回り、将来の道筋には確実性が存在する

〇資産価格について
Q&A→「労働市場の約1割に相当する足元で900万人以上が失業中で、雇用の最大化と物価の目標を達成する上で超緩和政策が必要
Q&A→「ここ数ヵ月における一部資産価格の上昇は金融政策によるものではなく、ワクチン期待や財政政策が背景」

〇ゲームストップ株の急騰など個人投資家による株価押し上げと、マクロプルーデンス政策の手段について
Q&A→「個別の企業、あるいは日々の市場動向について言及しない」
Q&A→「マクロプルーデンス政策の手段として、ストレステストや資本規制で対応する。ノンバンクに対しては現在精査中で、来年辺りに必要と思われる対応を検討している」

チャート:ゲームストップ株とVIX指数の動き

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(作成:My Big Apple NY)

――今回のFOMCのポイントは3つ。1つは、テーパリング観測の払拭で、2021年に投票メンバーに就任したリッチモンド地区連銀のバーキン総裁やアトランタ地区連銀のボスティック総裁など、テーパリングの可能性に言及するメンバーをよそに、完全に打ち消しています。

もう一つは資産価格に関わる姿勢で、20年12月に続きバブル警戒を示すより雇用の最大化を注視する立場を強調。米株高や割高感には触れませんでした。バイデン政権下、経済回復を何よりの使命と捉え、バブルにはマクロプルーデンス政策で対応する見通しです。

ゲームストップ株に象徴される個人投資家の反乱については、言及を避けました。イエレン財務長官を始め米証券取引委員会(SEC)、さらには米上下院と一線を画します。金融市場の安定はパウエル氏自身が指摘するようにFRBの役割ですが、バブルなどにマクロプルーデンス政策で対応する見通しながら、一連の問題をめぐる規制強化については米議会やSECに任せる方針なのでしょう。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)

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