COVID-19 Vaccine Acceptance And Hesitancy Could Affect Labor Force Participation.
米7月雇用統計を平均時給の業種別のほか、人種や学歴別など詳細をみていくと、以下のポイントが明らかになりました。
①NFPの約4割が経済活動の全面再開を背景に娯楽・宿泊が引き続き、賃上げ圧力の主因に。また、輸送・倉庫や卸売など、サービス部門で賃上げが波及した半面、生産労働者・非管理職の平均時給の前月比は、4月以降、7月まで3ヵ月連続で前月以下に。
②NFPの約4割が経済活動の全面再開を背景に娯楽・宿泊など対面サービスが必要とされる低賃金職だったように、中卒の労働参加率はコロナ感染拡大直前にあたる20年2月以来の水準へ改善、それに伴い彼らの失業率も低下。
③大卒以上の割合が突出して高いアジア系は、労働参加率がコロナ感染拡大前の19年11月に改善し失業率も低下。
④黒人の労働参加率が低下、失業率もそれに合わせて悪化、大卒の割合が最も低いヒスパニック系の労働参加率の改善と対照的。
これら4つのポイントのうち、①は賃上げ圧力が失業保険給付上乗せの撤廃などで労働参加率が改善すれば、一過性にとどまると考えられます。②は、ワクチンの普及が対面サービスの雇用を支えたといえ、③~④は、人種別のワクチン接種率の違いが潜んでいるのかもしれません。7月に入りデルタ株の感染拡大が意識され始めたわけですが、人種別のワクチン接種率は黒人が最も低いのですよ。
チャート:人種別のワクチン接種率
8月7日時点でみた過去2週間の接種動向では、ヒスパニック系が26.8%を占め全米人口比率の15.8%を上回るように上昇が顕著である半面、黒人は13.2%と全米人口比率の9.3%を上回るとはいえ、ヒスパニック系ほどではありません。こうした違いが、今回の労働参加率に影響したと仮定できます。
今回、興味深いことに求人数が過去最高を更新するなかで、高卒と短大卒で労働参加率が改善していませんでした。企業の採用意欲が低スキルと高スキルに分かれ、中間が少ない現状を表しているのでしょう。労働市場は明らかに回復しつつありますが、未だ求人数は失業者数を下回っており、全ての労働者の間で平等に改善しているわけではなさそうです。
チャート:求人数、コロナ前は失業者数超えで推移
有効求人倍率も5月時点で1.62倍と、コロナ前の2倍以上を下回ったままです。
チャート:有効求人倍率も、コロナ前の水準以下
7月の数字に大幅改善している可能性を残しますが、過去最高の求人数ばかり注目していると労働市場の実態は把握できないかもしれません。
(カバー写真:Gilbert Mercier/Flickr)
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