Consumer Price Increases Slow, The Index For Motor Vehicle Insurance And Airline Fares Decline.
米7月消費者物価指数(CPI)は、市場予想通り前月比0.5%上昇した。14カ月連続で上昇したが、2008年6月以来の高い伸びとなった前月の0.9%からは鈍化した。
内訳を前月比でみると、エネルギー(全体の6.1%を占める)が1.6%上昇、ガソリンは2.3%上昇しそろって2ヵ月連続で上昇した。なおエネルギー情報局(EIA)によると、ガソリン価格はコロニアル・パイプラインへのサイバー攻撃により供給停止に見舞われ、7月19日週に一時3.159ドルと、2014年10月以来の高値をつけた。その他のエネルギーでは、電力など公益が0.8%上昇し前月の0.2%から再び加速。そのうち電力が0.4%上昇とプラスに転じたほか、ガスも2.3%上昇し前月の1.7%を上回った。
エネルギー以外では食品・飲料が0.7%上昇、前月の0.8%を下回ったとはいえ、高い伸びを維持した。牛肉が1.2%上昇、豚肉と0.7%上昇、それぞれ前月の4.5%と前月の2.3%から減速した半面、シリアル・パン類(7月:0.5%上昇、6月:横ばい)、米・パスタ(7月:0.9%上昇、6月:0.6%低下)などが炭水化物関連がそれぞれ上向いた。さらに、外食が0.8%上昇、1981年2月以来の高い伸びを記録した。米7月雇用統計で、外食が含まれる娯楽・宿泊の平均時給の伸びが示すように、賃上げ分が上乗せされたとみられる。
CPIコアは前月比0.3%上昇し、市場予想の0.4%を下回り4ヵ月ぶりの低い伸びとなった。1982年6月以来の高い伸びとなった前月の0.9%から減速した格好だ。
チャート:CPIの品目別寄与、前月比
品目別にみると、ワクチン普及と経済正常化を受け上振れしていた品目で、落ち着きがみられた。足元でコアCPIを押し上げた航空運賃と自動車保険は、前者が5ヵ月ぶり、後者が7ヵ月ぶりに低下に転じた。その他、半導体不足に伴う減産を受け記録的な伸びをたどっていた中古車のほか、新車も伸びが鈍化。服飾の上昇記録も、3ヵ月で止まった。エネルギー関連と食品・飲料以外で主な項目の前月比は、以下の通り。
(上昇品目)
・宿泊 6.0%の上昇、5ヵ月連続でプラス<前月は7.0%の上昇
・新車 1.7%の上昇、4ヵ月連続でプラス<前月は2.0%の上昇
・娯楽 0.6%の上昇、6カ月連続でプラス>前月は0.5%の上昇
・住宅 0.4%の上昇、上昇トレンドを維持<前月は0.3%の上昇
・帰属家賃 0.3%の上昇、上昇トレンドを維持=前月は0.3%の上昇
・医療サービス 0.3%上昇>前月は横ばい
・中古車 0.2%上昇、5ヵ月連続でプラス<前月は10.5%と過去最大の伸び
・家賃 0.2%の上昇、上昇トレンドを維持=前月は0.2%の上昇
・教育 0.1%の上昇>前月は前月は0.2%の低下
(横ばい、低下項目)
・服飾 横ばい<前月は0.7%の上昇、3ヵ月連続でプラス
・航空運賃 0.1%の低下、5ヵ月ぶりのマイナス<前月は2.7%の上昇
・自動車保険 2.8%低下、7ヵ月ぶりにマイナス<前月は1.2%の上昇
CPIは前年比で5.4%上昇し、市場予想と前月と一致し2008年4月以来の高い伸びを維持した。CPIコアは同4.3%上昇し、1991年11月以来の水準へ加速した市場予想と前月の4.5%から鈍化した。
チャート:CPIの前年比、品目別の寄与など
チャート:CPIとCPIコア、前年比
過去3ヵ月間にわたり、CPI上昇分の約3割など大部分を占めた中古車が鈍化した。供給不足の問題では、ゼネラル・モーターズが5月後半に半導体不足で閉鎖していた工場を再開させ、減産の影響が後退したと考えられよう。また、価格高騰や夏休み後半戦を受け旅行需要が低下するなど需要面の変化も中古車の価格の落ち着きに貢献したとみられる。
その他、航空運賃は需要一服に加え、デルタ株感染拡大も背景に挙げられよう。自動車保険は、前月まででコロナ前の水準を上回っており、その分調整が入ったと考えられる。
チャート:経済活動の再開で4~6月に上振れした品目、20年2月からみた上昇率
パウエルFRB議長などFed高官が言及するように、物価の上振れが一時的であるサインが点灯した。米7月CPIの結果を受け、11日の金融市場は米株高・米債高(利回り低下)・ドル安で反応。米7月雇用統計は文句なしの好結果だったものの、2ヵ月連続で政府の季節調整済みが押し上げた側面もあり、Fedは8月26~28日開催のジャクソン・ホール会合や9月20~21日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリングを決定する公算は小さい。
(カバー写真:Michael Rehfeldt/Flickr)
Comments
米7月雇用統計:ワクチン接種率、労働参加率に影響も? Next Post:
インフレ加速が懸念される米国でも横行する、「ステルス値上げ」