Traders Accelerate Fed Rate Liftoff Bets As Private Payrolls Jump.
12月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定数、新規失業保険申請件数をおさらいしていきます。
米12月ADP全国雇用者数は前月比80.7万人増となり、市場予想の41万人増を2倍近く上回った。前月の50.5万人増(53.4万人増から下方修正)を超え、7ヵ月ぶりの高水準に。感謝祭明けにオミクロン株が南アフリカで検出され、米国では12月末に過去最多の新規感染者数を記録するなかでも、力強い増加を遂げた。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。
チャート:ADP全国雇用者数、2021年は1年間にわたってプラス
セクター別では、サービス部門が66.9万人増と前月の40.1万人増(修正値)を上回り、12ヵ月連続で増加した。内訳は以下の通り。
・娯楽/宿泊→24.6万人増、12ヵ月連続で増加>前月は12.3万人増
・貿易/輸送→13.8万人増、12ヵ月連続で増加>前月は7.5万人増
・専門サービス→13.0万人増、20ヵ月連続で増加>前月は10.8万人増
・教育/健康→8.5万人増、20ヵ月連続で増加>前月は5.2万人増
・その他サービス→3.6万人増、12ヵ月連続で増加>前月は2.1万人増
・金融→2.4万人増、17ヵ月連続で増加>前月は1.3万人増
・情報→1.2万人増、5ヵ月連続で増加>前月は0.9万人増
財部門(製造業、建設、鉱業)は前月比13.8万人増と前月の10.4万人増(修正値)を上回った。10ヵ月連続で増加している。内訳は以下の通り。
・製造業→7.4万人増、10ヵ月連続で増加>前月は4.7万人増
・建設→6.2万人増、10ヵ月連続で増加>前月は5.0万人増
・鉱業→0.2万人増、11ヵ月連続で増加<前月0.6万人増
ADPリサーチ・インスティチュートのニラ・リチャードソン首席エコノミストは、結果を受け「デルタ株の感染拡大収束を受け力強く伸び、オミクロン株の影響はまだ顕在化していなかった」と振り返った。雇用増加の裾野は「広範囲にわたり、サービス部門が全体を支えつつ財部門はこの1年間で最多を記録した」という。結果、「10~12月期のADP全国雇用者数は平均で62.5万人増と前期の51.4万人増を上回った」。雇用の回復を確認し2021年通期では「約600万人の雇用を創出した」ものの、「コロナ前の水準には未だ400万人相当必要」である。
▽米12月人員削減予定数は前年比で11カ月連続で減少、通期では統計開始以来で最低
米12月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比75.3%減の1万9,052人と、11ヵ月連続で前年比で減少した。前月比では28.1%増と増加に転じた。
10~12月期では前年同期比74.5%減の5万6,749人と、2020年10~12月期以来で最小を記録した。2021年通期では、前年同期比86%減の32万1,970人と、統計を開始した1993年以来で最低を更新した。
チャート:人員削減予定数、年間では過去最低
(作成:My Big Apple NY)
発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアンドリュー・チャレンジャー副社長は、今回の結果を受け「米11月雇用動態調査で自発的離職者数が過去最多を更新し、娯楽・宿泊を始めヘルスケア、輸送の従事者が数多く離職している」と指摘。オミクロン株の感染拡大により、子供を持つ親の再就職が困難になるほか、公共衛生上の懸念もあって「こうしたトレンドは継続する見通し」とまとめた。なお、2021年に人員削減予定数が前年を上回った業種は、製薬(前年比280.1%増)と化学(同165.4%増)だった。背景として、ワクチンが影響しており開発の失敗や需要低下で雇用の削減が著しかったという。
また、チャレンジャー副社長はバイデン政権のワクチン接種義務化が雇用のひっ迫を招いているとし「1月4日の接種完了期限を受け、拒否した従業員の人員削減がさらに進む可能性がある」と予想した。理由別の人員削減でも、「ワクチン接種拒否」は7,634人と10位となり、12月だけでも407人だった。「ワクチン接種拒否」は2021年の6月に初めて登場しており、わずか半年間で増加した格好だ。なお、対面サービスが必要となる業種でワクチン接種義務化に慎重が声が上がり、最近では米郵政公社(USPS)が1月4日とした接種完了時期の先送りを要請していた。同様の措置を求めた百貨店メイシーズは人手不足に加えオミクロン株感染拡大もあって、月〜木曜日の営業時間短縮を決定した。
チャート;ワクチン接種拒否を理由とした人員削減数
人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。
1位 ヘルスケア 4,550人
2位 倉庫 2,222人
3位 金融 2,216
4位 サービス 1,654人
5位 製薬 1,342人
2021年通期では、以下の通り。コロナ禍による経済活動停止が直撃した2020年は、1位が娯楽・宿泊、2位が輸送、3位小売、4位がサービス、5位が自動車だった。
1位 航空・防衛 3万4,627人(前年同月は8万6,125人)
2位 ヘルスケア 3万1,997人(同6万3,576人)
3位 サービス 2万8,650人(同15万9,234人)
4位 通信 2万5,543人(同3万3,136人)
5位 エネルギー 2万1,537人(同5万3,704人)
2021年の州別動向は以下の通りで、デルタ株やオミクロン株感染拡大を受け人口の多い州に入った半面、ボーイングの「787MAX」出荷停止などの個別材料もあって前半は1位を走っていたワシントン州が3位で終着点を迎えた。2020年の州別では、1位がカリフォルニア州、2位がニューヨーク州、3位がフロリダ州、4位がテキサス州、5位がオハイオ州となり、ほぼ人口上位ランキングに沿うかたちとなった。
1位 カリフォルニア州 5万239人(前年同月までの年初来は40万6,401人)
2位 テキサス州 4万2,949人(同17万6,741人)
3位 ワシントン州 4万596人(同9万4,584人)
4位 イリノイ州 1万6,302人(同6万7,059人)
5位 ニューヨーク州 1万6,113人(同28万498人)
2021年のリストラ実施の理由別ランキングは以下の通りで、前述した「ワクチン接種拒否」は10位だった。2020年の理由別では、1位がコロナ、2位が市場動向、3位が需要低下、4位が閉鎖、5位がコスト削減だった。
1位 閉鎖 6万9,648人
2位 再編 5万8,712人
3位 市場動向 5万4,160人
4位 需要低下 4万8,619人
5位 コスト削減 1万4,446人
採用予定数は12月に前年同月比16.5%増の8万9,984人だった。前月比では14倍と、3ヵ月ぶりに増加した。2021年通期では前年比45.1%減の175万2,417人だが、これは2020年に経済活動停止の解除の反動で急増した反動によるものである。
チャート:12月の採用予定者数は、2020年だけでなく2019年を超える水準
チャート:採用予定数、1年を通じ人員削減予定数超え
セクター別では、単月で以下の通り。年末商戦を控え、小売と輸送が目立った。
1位 輸送 2万4,025人
2位 政府 1万4,950人
3位 建設 1万286人
4位 サービス 5,761人
5位 小売 5,225人
年初来では、以下の通り。
1位 小売 88万2,601人
2位 輸送 25万798人
3位 政府 12万2,194人
4位 サービス 12万956人
5位 テクノロジー 9万687人
▽米新規失業保険申請件数、オミクロン株感染拡大と年末要因で増加
1月1日週までの米新規失業保険申請件数は20.7万件と、市場予想の19.5万件を上回った。前週の20.0万件(修正値)を超えり、オミクロン株の感染拡大を背景に過去4週間で3回目の増加となる。
2021年12月25日週までの継続受給者数は175.4万人と、前週の171.8万人(修正値)を上回った。4週ぶりに増加した。
失業者に占める被保険者の割合は、2012年12月25日週時点で2週続けて1.3%だった。過去最低を記録した2019年4月の1.1%が視野に入る。
チャート:米新規失業保険申請件数は、約1ヵ月ぶりの水準へ減少
――米12月ADP全国雇用者数は大幅増となり、パウエルFRB議長が12月FOMCで発言したように「雇用の最大化に向け、急速な進展」を遂げたように見えます。好調な数字が出れば、3月FOMCでの利上げ開始が既定路線となってくるのでしょう。オミクロン株感染拡大による就業者数の鈍化が気掛かりながら、足元でFedは金融政策の軸足をインフレ抑制にシフトしているだけに、人手不足による賃上げ圧力が一段と高まるようであれば、中間選挙前の利上げでインフレ退治に挑むに違いありません。足元で、QTが話題に上がりますが、問題はその後。今年半ば以降、インフレに落ち着きがみられれば、柔軟性に富み機動的なパウエル議長率いるFedが方向転換してもおかしくありません。
(カバー写真:donielle/Flickr)
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