Personal Spending Edges Up While Underlying Inflation Slows.
米7月個人消費支出は前月比0.1%増と、市場予想の0.4%増を下回った。前月の1.0%増(1.1%増から下方修正)に届かず、7ヵ月連続で増加したなかで最も小幅な伸びにとどまった。
個人所得は前月比0.2%増と、市場予想の0.6%並びに上方修正された前月(0.7%増)に届かず。とはいえ、6ヵ月連続で増加した。
個人所得の伸びが消費支出を上回ったとはいえ、貯蓄率は前月通り5.0%。リーマン・ショックが直撃した2008年9月以来の低水準だった。
詳細は以下の通り。
〇個人消費支出
個人消費の結果は以下の通り。名目ベースとインフレを除く実質ベースともに増加した。
・前月比0.1%増、市場予想の0.4%増を下回りつつ7ヵ月連続で増加、前月は1.0%増(1.1%増から下方修正)
・前年比8.7%増と17ヵ月連続で増加、前月は8.6%増
・実質ベース前月比0.2%増、3ヵ月ぶりに増加、前月は横ばい
・前年比では2.2%増と17ヵ月連続で増加、前月は1.7%増
米7月新車販売台数が小幅改善したように、耐久財が2ヵ月連続で増加した。ただし、非耐久財はガソリン価格が過去最高値から下落するなか、3ヵ月ぶりに減少。サービスは値上げも重なり、光熱費や外食が主導し17ヵ月連続で増加した。
個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 0.2%減と7ヵ月ぶりに減少、前月は1.5%増
・耐久財 1.3%増と2ヵ月連続で増加、前月は1.4%増
・非耐久財 1.0%減と3ヵ月ぶりに減少、前月の1.6%増
・サービス 0.3%増と17ヵ月連続で増加、前月は0.7%増
チャート:個人消費、前月比の項目別内訳
〇個人所得
個人所得の結果は以下の通り。実質ベースの前年比は21年3月に成立した追加経済対策の現金給付の反動もあって減少した。
・前月比前月比0.2%増と、市場予想の0.6%並びに上方修正された前月(0.7%増)に届かずも、6ヵ月連続で増加
・前年比では4.6%増と4ヵ月連続で増加、前月は5.7%増
・実質ベース前月比0.3%増、年初来で3回目の増加、前月は0.3%減
・前年比では1.6%減と過去7ヵ月間で6回目の減少、前月は1.0%減
個人所得のうち、名目ベースで賃金・給与は16ヵ月連続で増加し、家賃収入も引き続き力強い伸びとなった。なお、米疾病対策センター(CDC)は21年8月、新型コロナウイルス感染予防策対策として、感染率が高い地域を対象に新たに21年10月3日まで住宅立ち退き猶予期間を設定。しかし、家主や不動産団体が撤回を求め提訴し、米連邦最高裁判所が21年8月26日に無効の判断を下したため、販売用物件の減少も重なって家賃の上昇が進行中だ。
所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。
・賃金/所得 0.8%増と17ヵ月連続で増加(民間は0.9%増、政府部門は0.5%増)、前月は0.6%増
・経営者収入 1.3%減と7ヵ月ぶりに減少(農業は2.7%減、非農業は1.2%減)、前月は1.1%増
・家賃収入 1.3%減と13ヵ月ぶりに減少、前月は2.6%増と合わせ2011年1月以来の高い伸び
・資産収入 0.2%増と6ヵ月連続で増加(金利収入が横ばい、配当が0.4%増)、前月は0.6%増
・社会補助 0.4%減、前月は0.5%増
・社会福祉 横ばい、前月は0.1%増と5ヵ月連続で増加(メディケア=高所得者向け医療保険は0.3%減、メディケイド=低所得者層向け医療保険は0.7%増、失業保険は3.1%増と16ヵ月ぶりに増加、退役軍人向けは0.4%増と増加基調を維持、その他は1.1%減)
チャート:個人所得、前月比の項目別内訳
〇可処分所得
・前月比0.2%増と6ヵ月連続で増加、前月は0.7%増
・前年比は2.3%増と4ヵ月連続で増加、前月は3.4%増
・実質ベースの可処分所得は0.3%増と年初来で3回目の増加、前月は0.2%減
・前年比は3.7%減と7ヵ月連続で減少、前月は3.2%減
〇貯蓄率
・5.0%と2008年9月以来の低水準を維持、前月は5.0%
チャート:実質の個人消費は、再び貯蓄を取り崩して拡大した様子を示す
〇個人消費支出(PCE)デフレーター
→ガソリン価格が最高値を更新した6月から下落に転じ、エネルギーを中心に下振れした結果、インフレは前月比と前年比そろって前月以下となった。
・PCEデフレーターは前月比0.1%下落し20年4月以来のマイナス、1981年1月以来の高い伸びだった前月の1.0%から下落
・前年比は6.3%上昇、1982年月1月以来の高い伸びだった前月の6.8%以下
・コアPCEデフレーターは前月比0.1%上昇し21年2月以来の低い伸び、市場予想の0.3%以下、2021年5月以来の高い伸びだった前月の0.6%から鈍化
・コアPCEの前年比は4.6%上昇し2021年10月以来の低い伸び、市場予想の4.7%並びに前月の4.8%以下
チャート:物価上昇ペースは再加速、引き続き実質賃金に下方圧力
――米7月個人消費は物価が前月比でマイナスながら鈍化しつつ、貯蓄率は2008年9月以来の水準を維持しました。
チャート:個人消費、貯蓄を取り崩して拡大してきたものの足元は
明らかに個人消費だけでなく物価も少しずつ鈍化していますが、パウエルFRB議長率いるFedはジャクソン・ホール講演で強調したようにインフレ抑制へのファイティング・ポーズを保ちます。パウエル氏は、インフレ封じ込めを受け金利上昇や成長鈍化、労働市場の軟化が家計や企業に「何らかの痛み(some pain)」をもたらすと発言していましが、Fedがどこまでの「痛み」を想定しているのか。それは、9月FOMCで公表される最新の経済金利見通しでの成長見通しの下方修正や失業率見通しの修正で明らかになることでしょう。パウエル氏の発言を信じるなら、あくまで痛みは「なんらか、幾分(some)」であって、1980年初めに2回景気後退に陥ったような、「激痛」は回避する見通しです。少なくとも、現時点では。
(カバー写真:Firelknot/Flickr)
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