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米7月失業率の上昇、ハリス民主党大統領候補の逆風に

by • August 4, 2024 • Latest News, NY TipsComments Off5613

 The Biden-Harris A dministration Just Suffered A New Economic Blow : The Higher Unemployment Rate.

米7月雇用統計は、こちらで紹介しましたように、Fedに0.5%利下げを催促させる惨澹たる結果となりました。特に失業率は4.3%と、1月の3.7%から0.6ポイントも急伸。1960年以降のアノマリーに基づけば、米大統領選イヤーで、失業率が1月の水準から0.5ポイント上回れば、現職あるいは与党候補が必ず敗北してきました。従って、民主党大統領候補であるハリス氏にとって逆風となります。7月の失業率の急伸は、ハリケーンの影響が意識されますが、1月に急増した当時の失業率は前月と変わりませんでした。従って、必ずしもハリケーンの影響で押し上げられたのかは不透明と言えそうです。

チャート:1960年以降、失業率が1月時点から0.5pt以上の上昇なら現職or与党の候補が敗北

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(出所:Street Insights)

非農業部門就労者(NFP)での業種別の動向をみると、裁量的支出動向を示す娯楽・宿泊は前月比2.3万人増と3カ月連続で増加しつつ、2023年平均の4.7万人増を下回りましたそこに含まれる食品サービスも前月の横ばいから、今回は2.0万人増と、増加に反転。2023年平均の2.6万人増より弱い結果なっています夏季休暇を受けた雇用の回復と言えるでしょう。また、政府は7月に同1.7万人増と前月の伸び以下ながら、引き続きNFPを下支えしました。

チャート:娯楽・宿泊と食品サービス、政府の雇用の伸び

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(出所:Street Insights)

筆者がもうひとつ、注目する業種が専門サービスに含まれる派遣です。派遣は、労働市場の先行指標とされ、景気後退前に減少トレンドをたどる傾向があります。7月の結果を見ると、前月比0.9万人減と、今年1月を除き2022年4月以降のマイナストレンドを維持。マイナス基調をたどりながらも景気後退に陥っていないのは、ウーバーのドライバーを含め個人事業主の増加が一因と考えられます。

チャート:派遣、今年1月を除き2022年4月以降のマイナストレンドを維持

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(出所:Street Insights)

そのほか、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通り。

〇平均時給

平均時給は前月比0.2%上昇の35.07ド ル(約5,160円)と、市場予想と前月の0.3%を下回った。2021年2月以降の上昇トレンドを維持した。前年同月比は3.6%、市場予想の3.7%と前月の3.8%(3.9%とから下方修正)を下回り、2021年5月以来の低い伸び。生産労働者・非管理職の前年同月比も3.8%と、2021年5月以来の4%割れを迎えた。

業種別を前月比でみると、平均時給の伸びが0.2%以上だったのは13業種中で7業種で、前月の速報値ベースの11業種を下回った。今回の1位はその他サーボスで前月比0.7%上昇したほか、公益、建設、専門サービス、教育・健康、娯楽・宿泊、輸送・倉庫となった。一方で、小売が同1.1%減だった他、金融、鉱業・伐採、情報が下落した。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(出所:Street Insights)

チャート:前年比では引き続きインフレ目標値2%超えが目立ち、財部門はそろって強い伸びとなった半面、サービス業はNFPで増加を主導したヘルスケアを含む教育・健康を中心に平均時給の前年比3.6%以下が優勢となった。

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(出所:Street Insights)

〇労働参加率

労働参加率は62.5%と3ヵ月ぶりの水準へ低下。働き盛りの男性(25~54歳)をみると,全米の25~54歳と25~34歳。白人の25~54歳でリーマン・ショックの衝撃が間もない2009~10年以来の高水準をつけた(ただし、白人は季節調整前の数字)。

・25~54歳 90.0%と2009年8月の90%乗せ、前月は89.2%
・25~54歳(白人) 90.7%と2010年4月以来の高水準、前月は90.3%
・25~34歳 90.3%と2009年8月以来の高水準、前月は89.7%
・25~34歳(白人) 91.3%と2019年3月以来の水準に並ぶ、前月は90.7%

チャート:働き盛りの男性の労働参加率

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(出所:Street Insights)

働き盛りの女性はまちまち、25~54歳は上昇も、25~34歳は低下した。

・25~54歳 78.1%と5月と同じく1997年のデータ公表以来で最高、前月は77.9%
・25~34歳 77.9%と3ヵ月ぶりの低水準、前月は78.2%、2022年8月は78.8%と1997年のデータ公表以来で最高

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男女そろって上昇するなか女性は2020年2月以来の高水準だった。

・男性 23.3%と4カ月ぶりの高水準、前月は23.1%、2022年10月は24.3%と2月と並び20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 16.4%と2020年2月以来の高水準、前月は15.9%、

チャート:65歳以上の高齢者の労働参加率

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(出所:Street Insights)

労働参加率を16~19歳、20~24歳、55歳以上で分けてみると、16~19歳を除き上昇した。

・16~19歳 36.4%と1年ぶりの低水準、前月は37.4%、3月は38.2%と2009年6月以来の高水準
・20~24歳 71.3%と3ヵ月ぶりの水準を回復、前月は71.0%、1月は72.7%と2020年2月以来の高水準
・55歳以上 38.3%、前月は38.2%と2021年1月以来の低水準

チャート:16~19歳、20~24歳、55歳以上の労働参加率

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(出所:Street Insights)

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が2ヵ月連続で改善するなか、前月比7.0%増の560万人と増加に反転。男性が同4.5%減の272.3万人と2ヵ月連続で減少したが、女性は同20.7%増の287.7万人と3カ月ぶりに大幅増加となった。結果、縁辺労働者は3ヵ月ぶりに女性が男性を上回った。

チャート:職を望む非労働力人口

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(出所:Street Insights)

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は、そろって上昇。男性は前月の68.1%→68.2%と8ヵ月ぶりの水準へ上昇した。女性も年初来で最低だった前月の57.3%→57.5%へ上昇した。なお、女性は4月に57.7%と2020年2月(58.0%)水準に迫っていた。

チャート:男女別の労働参加率

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(出所:Street Insights)

男女の失業率も、そろって上昇男性は前月の4.1%→4.4%へ上昇し2021年10月以来の高水準だった女性も前月の4.0%→4.1%へ上昇し、2021年11月以来の高水準だった。なお、女性は2023年1月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。

チャート:男女別の失業率

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(出所:Street Insights)

〇人種・男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、ヒスパニック系の男女で伸びが鈍化したほか、白人女性は下げ幅を拡大した。一連の結果は、以下で示すように、特にヒスパニック系については労働参加率が低下したにもかかわらず、失業率が上昇した動きと整合的だ。全て季節調整前の数字である点に留意しておきたい。

チャート:男女別の就業者数の20年2月との比較

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(出所:Street Insights)

人種別の週当たり賃金は2023年5月時点で以下の通りで、ヒスパニック系が762.8ドルと最低、次いで黒人が791.02ドル、白人は1,046.52ドルとなる。アジア系が最も高く1,169ドル。

チャート:実質ベースのフルタイム従業員の週当たり賃金、ヒスパニック系が最も低い

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(出所:Street Insights)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。なお、正確にヒスパニック系は中米・中南米系出身者を指し、人種にカテゴリーにあてはまらないが、便宜上、人種別とする。

人種別の労働参加率は、上昇が優勢。白人、黒人、アジア系が上昇し、特にアジア系は2009年9月以来の高水準だった。一方で、ヒスパニック系は低下した。なお、データはアジア系を除き全て季節調整済みとなる。

・白人 62.3%、前月は62.2%と2023年3月以来の低水準、なお2023年8月は62.5%と2020年3月(62.6%)以来の高水準、2020年2月は63.2%
・黒人 63.2%と3ヵ月ぶりの水準を回復、前月は62.7%と2023年8月以来の低水準(4カ月連続で低下)、なお2023年3月は64.0%と2008年8月の高水準に並ぶ
・ヒスパニック系 67.3%、前月は67.5%と2020年2月(67.8%)以来の高水準
・アジア系 65.9%と2009年9月以来の高水準、前月は65.3%、2020年2月は64.5%
・全米 62.6%、前月は62.5%、なお2023年11月は2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

チャート:人種別の労働参加率

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(出所:Street Insights)

人種・男性別の労働参加率は、白人と黒人で上昇も、ヒスパニック系は低下した。

・白人 70.1%と8カ月ぶりの高水準、前月は70.0%、2020年3月は71.0%
・黒人 69.7%と5カ月ぶりの高水準、前月は69.1%、なお2023年3月は70.2%と2010年3月(70.4%)以来の高水準
・ヒスパニック系 80.1%、前月は80.6%と2020年2月以来の高水準、2020年2月は80.3%

チャート:人種・男性別の労働参加率

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(出所:Street Insights)

人種・女性別の労働参加率は白人と黒人で上昇も、ヒスパニック系は低下した。

・白人 57.8%、前月は57.6%と5カ月ぶりの低水準、4月は58.0%と2020年2月以来の高水準(58.3%)
・黒人 63.0%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は62.3%、2023年4月は63.9%と2009年7月(64.0%)以来の高水準
・ヒスパニック系 61.1%と前月と変わらず、4月は61.8%と2023年9月(61.9%)に次ぎ2020年2月以来の高水準(62.2%)が迫る

チャート:人種・女性別の労働参加率

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(出所:Street Insights)

人種別の失業率は上昇が優勢白人は労働参加率につれ失業率も上向き、ヒスパニック系は労働参加率が低下したものの失業率は上昇した。黒人は労働参加率が上昇も失業率は横ばい。アジア系は労働参加率が上昇も失業率は低下した。

・白人 3.8%と2021年10月以来の高水準、前月は3.5% なお2022年12月は3.0%と2020年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 6.3%で前月と変わらず、2023年4月は4.7%と過去最低
・ヒスパニック系 5.3%と2023年2月以来の高水準、前月は4.9%、なお2022年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 3.7%、前月は4.1%と2021年10月以来の高水準、なお2023年7月は2.3%と2019年6月(2.0%)以来の低水準
・全米 4.3%と2021年10月以来の高水準、前月は4.1% なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:人種別の失業率

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(出所:Street Insights)

人種・男女別の失業率は、全て上昇。労働参加率が低下したヒスパニック系の男女を含め、失業率は上向いた。特にヒスパニック系の女性は2ヵ月連続で1%ポイントも急伸した。なお、黒人女性とヒスパニック系男女は季節調整前の数字となる。

・白人男性 3.5%と10カ月ぶりの高水準、前月は3.2%、なお2022年12月は2.8%と2020年2月以来の低水準
・白人女性 3.4%と2021年10月以来の高水準、前月は3.1%、なお2023年6月は2.6%で過去最低
・黒人男性 6.6%と2022年1月以来の高水準、前月は6.1%、なお2023年12月は4.6%と2023年4月につけた過去最低に並ぶ
・黒人女性 6.2%と2021年10月以来の高水準、前月は6.1%、なお2023年4月は3.8%と過去最低
・ヒスパニック系男性 4.1%と4カ月ぶりの高水準、前月は3.8%と9カ月ぶりの低水準、なお2022年9月は3.0%と2019年11月以来の低水準
・ヒスパニック系女性 5.7%と2021年8月以来の高水準、前月は4.7%、なお2023年5月は3.1%と過去最低

チャート:人種・男女別の失業率

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(出所:Street Insights)

白人と黒人の失業率格差は3カ月ぶりに縮小。白人の失業率が前月まで3カ月連続での横ばいに上昇した一方で、黒人が前月と横ばいだったため、失業率格差は2019年平均と一致した前月の2.8ptから2.5ptへ縮小した。

チャート:白人と黒人の失業率格差

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(出所:Street Insights)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率はまちまち。中卒は上昇、高卒は横ばい、大卒以上は卒業式を終えたものの低下した。

・中卒 49.0%と1992年にデータが公表されて以来で最高、前月は47.0%、なお2023年11月は48.3%と2023年2月と並び過去最高
・高卒 57.0%と前月と変わらず、なお2023年11月は57.3%と2020年2月(58.3%)以来の高水準
・大卒以上 72.7%、前月は72.8%で2023年10月以来の水準に並ぶ、なお2023年8-9月は73.5%と2020年1月(73.7%)以来の高水準に並ぶ
・全米 62.7%、前月は62.6%、なお2023年11月は2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

学歴別の失業率は上昇が優勢中卒、高卒、大学院卒で失業率が上向いたが、大卒は低下した。

・中卒以下 6.7%と2021年10月以来の高水準、前月は5.9%、なお2022年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 4.6%と2022年1月以来の高水準に並ぶ、前月は4.2%、なお2023年7月は3.3%と2000年4月以来の低水準に並ぶ
・大卒 2.3%、前月は2.4%と2021年10月以来の高水準、なお2022年9月は1.8%と2007年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒 2.7%と2023年8月以来の高水準、前月は2.7%、なお2021年12月は1.2%と2000年4月の低水準に並ぶ
・全米 4.3%と2021年10月以来の高水準、前月は4.1% なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:学歴別の失業率

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(出所:Street Insights)

チャート:大卒以上は労働参加率が低下も、大学院卒は失業率が上昇

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(出所:Street Insights)

--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

①NFPの増加の業種別では、夏季休暇に入り裁量的支出と関連の深い娯楽・宿泊の伸び拡大、そこに含まれる食品サービスも増加また政府の雇用も引き続きNFPを下支え

②平均時給は、13業種別では全米平均を上回ったのは7業種で、前月の速報値ベースの11業種を下回る。

③働き盛りとされる25~54歳と25~23最の男性、及び白人の25~54歳の労働参加率はリーマン・ショック後まもない2009~10年以来の高水準

男女別の労働参加率と失業率はそろって上昇、失業率はそれぞれ2021年10~11月以来の高水準

人種別での失業率は上昇が優勢で、特にヒスパニック系は労働参加率が低下したにもかかわらず上昇

⑥学歴別では、労働参加率が低下するなかで大学院卒で失業率が上昇

ーー全体的に労働市場の調整を色濃く反映した内容となりました。特に働き盛りの男性の労働参加率が2009~2010年以来の水準へ回復した一方で失業率が上昇しており、企業は大量解雇に踏み切らない一方で、明らかに採用活動を縮小している実態が浮かび上がります。失業率が夏場に上昇する傾向を今年もたどったことになりますが、今後もこうした流れが続くのか。7月FOMCでは、パウエルFRB議長が9月利下げ開始の可能性に言及しましたが、8月22-24日のジャクソン・ホール会合で新たなヒントを届けるか待たれます。シカゴ連銀総裁は米7月雇用統計後に単月のデータに過剰反応したくないと発言したのは、市場で高まる0.5%利下げで米景気後退のリスクを印象付けたくないのでしょう。

(カバー写真:Rawpixel Ltd/Flickr)

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