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米9月雇用統計:人種別の失業率は改善も、海外生まれが主導?

by • October 6, 2024 • Latest News, NY TipsComments Off806

Unemployment Rates Decline For All Races, But Maybe Driven By Foreign-Born.

米9月雇用統計は、こちらで紹介しましたように予想を大きく上回る好結果となり、ソフトランディング期待の台頭と米景気後退懸念の払しょくにつながりました。米大統領選前に、民主党大統領候補のハリス氏にとって追い風とお伝えした通りです。

家計調査では就業者数が前月比43万人増、失業者が同28.1万人減となり、失業率の低下を招きました。ただ、この家計調査の雇用増加について、保守系金融情報サイトのゼロヘッジを始め、一部の市場関係者が疑問を投げかけています。なぜかというと、家計調査で政府の雇用が同78.5万人増と驚異的な伸びを遂げていたためです。一方で、民間の雇用増加幅は13.3万人増に過ぎません。つまり、政府の雇用が大幅に増加しなければ、失業率が低下しなかった可能性があります。

チャート:家計調査での政府の雇用増加幅、9月は78.5万人増

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(出所:Street Insights)

今回の家計調査での政府の雇用増加幅がいかに大きいかというと、1948年以降で歴代2位なんですよね。トップ10をみるとコロナ禍での経済活動停止の影響が強い2020年の他、2022年が目立ちます。労働力人口の増加が一因ではないかとの見方もあるでしょうが、1950年4月も37.2万人増と8位、1999年6月も○万人増と10位にランクインしています。また、テクノロジーの発展で省力化も可能でしょうから、コロナ禍後の正常化が進んだ2024年9月でこれほど政府の雇用が増加するというのは、確かに不思議な気がします。

チャート:家計調査での政府の雇用増加幅、今回は歴代2位

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(出所:Street Insights)

政権別でみても、コロナ禍後の正常化が一因なのか、バイデン政権での家計調査における政府の雇用増加幅は165.1万人増と最大でした。なお、バイデン政権下での政府雇用増加幅は2024年9月までとなります。

チャート:家計調査での政府の雇用増加幅、クリントン政権以降でバイデン政権が最大

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(出所:Street Insights)

非農業部門就労者(NFP)での業種別の動向に視点を移すと、裁量的支出動向を示す娯楽・宿泊は前月比7.8万人増と5カ月連続で増加し、2023年平均の4.7万人増と上回りました。ここに含まれる食品サービスが同6.9万人増と押し上げ、3カ月連続で増加し2023年平均の2.6万人増も上回りました。夏季休暇終了後は、ハロウィーンやホリデー商戦を含めた需要を取り込むべく雇用を増加させたのでしょうか。そのほか、前述した政府は同3.1万人増と4カ月連続で増加し、引き続きNFPを下支えしました。年初来での伸びは3.8万人増と、2019年平均の1.8万人増を倍以上となります。

チャート:娯楽・宿泊と食品サービス、政府の雇用の伸び

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(出所:Street Insights)

筆者がもうひとつ、注目する業種が専門サービスに含まれる派遣です。派遣は、労働市場の先行指標とされ、景気後退前に減少トレンドをたどる傾向があります。9月の結果を見ると、前月比1.4万人減と、今年1月を除き2022年4月以降のマイナストレンドを維持。マイナス基調をたどりながらも景気後退に陥っていないのは、ウーバーのドライバーを含め個人事業主の増加が一因と考えられます。

チャート:派遣、今年1月を除き2022年4月以降のマイナストレンドを維持

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(出所:Street Insights)

そのほか、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通り。

〇平均時給

平均時給は前月比0.4%上昇の35.36ド ル(約5,230円)と、市場予想と前月の0.3%を上回った。2021年2月以降の上昇トレンドを維持した。前年同月比は4.0%、市場予想の3.8%と前月の3.9%(3.8%から上方修正)を超え、4カ月ぶりに4%へ戻した。一方で、生産労働者・非管理職の前年同月比は8月の4.0%から、今回は3.9%と2021年5月以来の4%割れを迎えた7月の伸びに戻した。管理職を含む全米の平均時給の伸びを下回ったのは、2921年2月以来となる。

業種別を前月比でみると、平均時給の伸びが0.4%以上だったのは13業種中で7業種で、前月の速報値ベースと変わらず。一方で、マイナスとなった企業はゼロで、前月の2業種(卸売、鉱業・伐採)から減少した。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(出所:Street Insights)

チャート:前年比では引き続きインフレ目標値2%超えが目立ち、財部門はそろって強い伸びとなった半面、サービス業はNFPで増加を主導したヘルスケアを含む教育・健康を中心に平均時給の前年比4%以下が優勢

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(出所:Street Insights)

〇労働参加率

労働参加率は全米で62.7%と前月と変わらず。働き盛りの男性(25~54歳)をみると,白人で上昇(ただし、白人は季節調整前の数字)した一方で、全米は25~54歳で横ばい、25~34歳は低下した。

・25~54歳 89.5%と前月と変わらず、7月は90.0%と2009年8月の90%乗せ
・25~54歳(白人) 90.5%、前月は90.3%、7月は90.7%と2019年3月以来の高水準
・25~34歳 89.0%、前月は89.1%、7月は90.3%と2009年8月以来の高水準
・25~34歳(白人) 90.4%、前月は90.1%%、7月は91.3%と2019年3月以来の水準に並ぶ

チャート:働き盛りの男性の労働参加率

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(出所:Street Insights)

働き盛りの女性はそろって低下した。

・25~54歳 78.1%、前月は78.4%と1997年のデータ公表以来の最高記録更新、前月は78.1%
・25~34歳 78.1%、前月は78.2%、7月は77.9%と3ヵ月ぶりの低水準、なお2022年8月は78.8%と1997年のデータ公表以来で最高

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男女そろって上昇するなか女性は2020年2月以来の高水準だった。

・男性 23.8%、前月は23.5%と5カ月ぶりの高水準に並ぶ、2022年10月は24.3%と2月と並び20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 16.8%と2020年2月以来の高水準、前月は16.7%

チャート:65歳以上の高齢者の労働参加率

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(出所:Street Insights)

労働参加率を16~19歳、20~24歳、55歳以上で分けてみると、55歳以外で上昇した。

・16~19歳 37.2%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は35.7%と2021年1月以来の低水準、3月は38.2%と2009年6月以来の高水準
・20~24歳 70.6%、前月は70.5%と2022年4月以来の低水準、1月は72.7%と2020年2月以来の高水準
・55歳以上 38.6%と前月と変わらず、6月は38.2%、2020年2月は39.7%

チャート:16~19歳、20~24歳、55歳以上の労働参加率

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(出所:Street Insights)

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が3カ月連続で62.7%で推移するなかでも、前月比1.1%増の569.7万人と3カ月連続で増加。男性が同10.1%減の248.0万人と減少した一方で、女性は同10.1%増の321.7万人だった。縁辺労働者は3カ月連続で女性が男性を上回った。

チャート:職を望む非労働力人口

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(出所:Street Insights)

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率はまちまちで男性が上昇し女性が低下するなど前月と正反対の展開。男性は白人で働き盛りを始め全体的に上昇したこともあって、前月の67.9%→68.1%と3カ月ぶりの水準を回復した。女性は逆に前月の57.8%→57.6%へ低下した。

チャート:男女別の労働参加率

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(出所:Street Insights)

男女の失業率は、そろって低下。男性は労働参加率が上昇したにもかかわらず、2021年10月以来の高水準だった前月の4.4%→4.2%へ低下した。女性は労働参加につれ、2021年11月以来の高水準だった前月の4.1%→3.9%へ低下した。なお、女性は2023年1月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。

チャート:男女別の失業率

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(出所:Street Insights)

〇人種・男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、概して前月より好結果となった。白人の男女は下げ幅を縮小し、黒人男性とヒスパニック系の男女は伸びが拡大した。黒人女性のみ、前月と伸びが変わらなかった程度となる。なお、全て季節調整前の数字である点に留意しておきたい。

チャート:男女別の就業者数の20年2月との比較

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(出所:Street Insights)

人種別の週当たり賃金は2023年5月時点で以下の通りで、ヒスパニック系が762.8ドルと最低、次いで黒人が791.02ドル、白人は1,046.52ドルとなる。アジア系が最も高く1,169ドル。

チャート:実質ベースのフルタイム従業員の週当たり賃金、ヒスパニック系が最も低い

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(出所:Street Insights)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。なお、正確にヒスパニック系は中米・中南米系出身者を指し、民族であって人種にカテゴリーにあてはまらないが、便宜上、人種別とする。

人種別の労働参加率は、まちまち。白人と黒人は上昇も、アジア系とヒスパニック系は前月を下回った。ヒスパニック系は、コロナ禍での経済活動停止前にあたる2020年2月以来の高水準から低下した。なお、データはアジア系を除き全て季節調整済みとなる。

・白人 62.4%、前月は62.3%、なお2023年8月は62.5%と2020年3月(62.6%)以来の高水準、2020年2月は63.2%
・黒人 62.9%、前月は62.7%と1年ぶりの低水準、なお2023年3月は64.0%と2008年8月の高水準に並ぶ
・ヒスパニック系 67.4%、前月は67.8%と2020年2月の水準に並ぶ
・アジア系 65.3%、前月は65.4%、6月は65.9%と2009年9月以来の高水準 2020年2月は64.5%
・全米 62.7%と3カ月連続で変わらず、なお2023年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

チャート:人種別の労働参加率

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(出所:Street Insights)

人種・男性別の労働参加率は前月に反し、ヒスパニック系のみ低下し、黒人は上昇、白人は横ばいだった。

・白人 70.1%と7月に続き2023年11月以来の高水準、前月は70.0%、2020年3月は71.0%
・黒人 69.4%、前月は68.2%と10カ月ぶりの低水準、なお2023年3月は70.2%と2010年3月(70.4%)以来の高水準
・ヒスパニック系 79.5%と8カ月ぶりの低水準、前月は80.4%、6月は80.6%と2020年2月(80.8%)以来の高水準

チャート:人種別、男性の労働参加率

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(出所:Street Insights)

人種・女性別の労働参加率は前月に反し、そろって低下。前月は白人が2020年2月以来の高水準、ヒスパニック系に至っては1976年6月からのデータ公表以来で最高を記録していた。

・白人 57.9%、前月は58.0%と4月に続き2020年2月以来の高水準(58.3%)
・黒人 62.4%、前月は63.2%と6カ月ぶりの高水準、2023年4月は63.9%と2009年7月(64.0%)以来の高水準
・ヒスパニック系 62.3%、前月は62.4%と1976年6月からのデータ公表以来で最高、2020年2月の62.2%を上回る

チャート:人種別、女性の労働参加率

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(出所:Street Insights)

人種別の失業率はアジア系以外が全て低下した。労働参加率は白人と黒人で上昇、ヒスパニック系とアジア系の労働参加率は低下したためヒスパニック系の失業率低下は労働市場の改善を示すとは言い難い。

・白人 3.7%、前月は3.8%と7月と同じく2021年10月以来の高水準を維持、なお2022年12月は3.0%と2020年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 5.7%と5カ月ぶりの低水準、前月は6.1%、7月は6.3%と2023年4月は4.7%と過去最低
・ヒスパニック系 5.1%、前月は5.5%と2021年10月以来の高水準、なお2022年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 4.1%と前月と変わらず2021年10月以来の高水準、なお2023年7月は2.3%と2019年6月(2.0%)以来の低水準
・全米 4.1%、前月は4.2%、7月は4.3%と2021年10月以来の高水準、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:人種別の失業率

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(出所:Street Insights)

人種・男女別の失業率は、全て低下。労働参加率が上昇した黒人男性と、労働参加率が前月と変わらなかった白人男性で失業率が低下したほか、労働参加率が低下した白人と黒人の女性のほか、ヒスパニック系男女も失業率が低下した。なお、ヒスパニック系男女は季節調整前の数字となる。

・白人男性 3.4%、前月は3.6%と2021年10月以来の高水準、なお2022年12月は2.8%と2020年2月以来の低水準
・白人女性 3.1%、前月は3.4%と2021年10月以来の高水準を維持、なお2023年6月は2.6%で過去最低
・黒人男性 5.1%、前月は5.9%、7月は6.6%と2022年1月以来の高水準、なお2023年12月は4.6%と2023年4月につけた過去最低に並ぶ
・黒人女性 5.3%、前月は5.5%、6月は5.7%と2022年8月以来の高水準、なお2023年2月は4.3%と2019年8月につけた過去最低の4.2%に接近
・ヒスパニック系男性 3.6%と2023年7月以来の低水準、前月は4.7%と6カ月ぶりの高水準、なお2022年9月は3.0%と2019年11月以来の低水準
・ヒスパニック系女性 4.8%と3カ月ぶりの低水準、前月は5.2%、7月は5.7%と2021年8月以来の高水準、なお2023年5月は3.1%と過去最低

チャート:人種・男女別の失業率

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(出所:Street Insights)

白人と黒人の失業率格差は3カ月連続で縮小。白人の失業率が前月比で横ばいだった一方で、黒人が低下したため、失業率格差は前月の2.3ptから2.1ptへ縮小し、2019年平均の2.8pt以下を保った。

チャート:白人と黒人の失業率格差

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(出所:Street Insights)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別はまちまち。中卒は1992年のデータ公表開始以来で最高を付けたほか、高卒も上昇した。短大卒と大卒以上は前月と変わらなかった。

・中卒 49.6%と1992年にデータが公表されて以来で最高、前月は48.1%
・高卒 57.0%、前月は56.9%、なお2023年11月は57.3%と2020年2月(58.3%)以来の高水準
・短大卒 63.5%、前月と同じく2023年3月以来の高水準、2020年2月は64.8%
・大卒以上 73.0%、前月と同じく2023年9月以来の高水準を維持、なお2023年8-9月は73.5%と2020年1月(73.7%)以来の高水準に並ぶ
・全米 62.7%と3カ月連続で変わらず、なお2023年11月は2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

学歴別の失業率はまちまち。労働参加率が横ばいだった短大卒は失業率も前月と変わらず、大卒と大学院卒は低下した。

・中卒以下 6.8%、前月は7.1%と2021年以来の高水準に並ぶ、なお2022年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 4.0%と前月と変わらず、7月は4.6%と2022年1月以来の高水準に並ぶ、なお2023年7月は3.3%と2000年4月以来の低水準に並ぶ
・短大卒 3.4%と前月と変わらず、2023年11月は2.8%と2019年12月以来の低水準
・大卒 2.3%と7月の水準へ戻す、前月は2.5%と2021年9月以来の高水準、なお2022年9月は1.8%と2007年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒 2.1%と5カ月ぶりの低水準、前月は3.0%と2021年7月以来の高水準、なお2021年12月は1.2%と2000年4月の低水準に並ぶ
・全米 4.1%、前月は4.2%、7月は4.3%と2021年10月以来の高水準 なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:学歴別の失業率

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(出所:Street Insights)

チャート:大卒以上は2021年9月以来、大学院卒は2021年7月以来の高水準

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(出所:Street Insights)

筆者は以前、夏に失業率が上昇しやすい傾向があると指摘した。逆をいえば、夏でピークアウトし失業率は低下に転じる公算が大きい。

チャート:2000年以降、月別の失業率平均(9月までは2024年、以降は2023年までの平均値)

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(出所:Street Insights)

実際に、9月に入り全米の失業率はハリケーンの影響もあって2021年10月以来の高水準となった4.3%から4.1%へ低下した。これは2019~24年の大卒以上の失業率平均が9月にかけ失業率は低下する動きと整合的である。このデータは25歳以上を対象とするが、労働参加率が卒業式シーズン明けに低下したことが一因だろう。7月に労働参加率が低下するのは、独立記念日などを含めた夏季休暇要因とも捉えられよう。

チャート:大卒以上の失業率と労働参加率、2019~24年平均

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(出所:Street Insights)

2024年の米大統領選を控え、有権者の焦点のひとつは不法入国者を含めた移民の急増だ。米議会予算局やサンフランシスコ連銀など、多くが移民の急増をめぐる影響を分析するように、足元の米労働市場にも大きな変化をもたらしている。そこで、海外生まれ(不法移民を含む)と米国生まれの雇用動向を確認してみた。

労働力人口(以下、全て季節調整前の数字)は、約1億6,857万人となる。コロナ禍直前の2020年2月比では、433.4万人増加してきた。そのうち、米国生まれは27.2万人増である一方で、海外生まれは406.2万人増と、労働力人口の回復は不法入国者を含めた移民がけん引してきたことが分かる。

チャート:米労働力人口(季節調整前)、米国生まれと海外生まれの比較

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(出所:Street Insights)

就業者数も労働力人口と同じく、海外生まれがリード。海外生まれの就業者数は2020年比で371.3万人増だった一方で、米国生まれは同3,12万人増にとどまる。

チャート:米国生まれと海外生まれ、就業者数の比較

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(出所:Street Insights)

9月に全米の失業率は4.2%から4.1%へ低下したが、ここも海外生まれが前月の4.4%→3.8%と改善を主導。米国生まれの前月4.3%→4.2%より大幅な低下を遂げていた。これは、労働参加率が海外生まれで前月の67.6%→67.2%となった動きにつれた形だが、失業率が低下したことに違いはない。米国生まれの労働参加率は前月の61.7%→61.6%の低下にとどまっていた。海外生まれ主導の失業率低下を確認したため、米大統領選で明確にハリス陣営に有利と判断しづらいとも言える。

チャート:米国生まれと海外生まれ、失業率の比較

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(出所:Street Insights)

--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

①NFPの増加の業種別では、教育・健康以外に娯楽・宿泊と政府が下支え

②家計調査の就業者数の増加、けん引役は政府で失業率の低下に寄与

③平均時給は、13業種別では全米平均を上回ったのは7業種と前月と変わらず

④働き盛りとされる25~54歳の男性の労働参加率は白人で改善も非白人を含む全米は低下、女性は低下

⑤人種別の労働参加率は白人と黒人で上昇、ヒスパニック系で低下するなか、人種・男女別では全て低下

⑥学歴別では、過去の傾向通り大卒以上の失業率が低下

⑦海外生まれと米国生まれ、労働力人口と就業者の増加は海外生まれが主導、9月の単月で見れば失業率の低下は海外生まれがけん引

――以上の結果を踏まえると、NFPの増加を始め働き盛りの世代の労働参加率、大卒以上の失業率の改善はハリス陣営に追い風と言えるでしょう。しかし、家計調査をみると、就業者数の改善に政府が大きく寄与していたことが分かります。そのほか、男女別の労働参加率では女性が低下し、これが女性の失業率を押し下げました。何より、季節調整前の数字ながら米国生まれより海外生まれの失業率が大きく低下した点は気掛かり。有権者が労働市場改善の恩恵を感じられない結果とすれば、必ずしもハリス陣営に追い風と言いきれない実態を示します。

(カバー写真:zug zwang/Flickr)

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