Unemployment Spiked For Black Men And American Born.
米1月雇用統計は、こちらで紹介しましたようにヘッドラインより堅調な労働市場を示す結果となりました。
ここでは、業種別や賃金動向の他、性別や人種、学歴などではどうなったのかを取り上げます。詳細は、以下の通り。
〇平均時給
平均時給は前月比0.5%上昇の35.87ド ル(約5,420円)と市場予想の0.3%を上回り、前月の0.3%を上回った。5カ月ぶりの強い伸びとなり、2021年2月以降の上昇トレンドを維持した。前年同月比は4.1%と上方修正された前月と一致、市場予想の3.8%を超えた。生産部門・非管理職の前年同月比は4.2%と、3カ月ぶりの強い伸びだった。
業種別を前月比でみると、平均時給の伸びが0.5%以上だったのは13業種中で4業種で、前月の速報値ベースの8業種を下回った。過去2カ月にわたって下落した反動もあって、小売が同1.7%上昇し、全体を押し上げた。また、鉱業・伐採、その他サービス、情報が支えた。一方で、マイナスとなった業種は速報値ベースで3カ月連続にて2業種(卸売・公益)だった。
チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額
チャート:前年比では引き続きインフレ目標値2%超えが目立ち、今回はサービスで上昇が目立った。逆に、これまで前年比の伸びをけん引した財部門は伸びが鈍化した。
〇労働参加率
全米の労働参加率は前月まで3カ月連続で62.5%での横ばいを経て、62.6%へ上昇。しかし、働き盛りの男性(25~54歳)をみると、全米の25~54歳のみ上昇した程度で、他は横ばいあるいは低下した。ただし、白人は季節調整前の数字となる。
・25~54歳 89.4%、前月は89.0%と23年10月以来の低水準、24年7月は90.0%と2009年8月の90%乗せ
・25~54歳(白人) 89.9%と23年2月以来の低水準を維持、前月は89.9%、24年7月は90.7%と2019年3月以来の高水準
・25~34歳 89.0%と5カ月ぶりの低水準、前月は89.1%、24年7月は90.3%と2009年8月以来の高水準
・25~34歳(白人) 89.7%と23年1月以来の低水準、前月は90.1%、24年7月は91.3%と2019年3月以来の水準に並ぶ
チャート:働き盛りの男性の労働参加率
働き盛りの女性はまちまち、25-34歳は前月と同じく1997年のデータ公表以来で最高を維持したが、25-54歳は低下した。
・25~54歳 77.7%、前月は77.9%と3カ月ぶりの水準を回復、24年8月は78.4%と1997年のデータ公表以来の最高記録更新、前月は78.1%
・25~34歳 78.7%と前月に続き過去最高を維持、前月は78.7%
65歳以上の高齢者の労働参加率は、男性が急低下も女性は上昇した。ただし、これらは季節調整前の数字となる。
・男性 22.3%と2011年2月以来の低水準、前月は23.0%、24年10月は24.5%と20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 16.1%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は15.9%と23年6月以来の低水準、24年9月は16.8%と2020年2月以来の高水準
チャート:65歳以上の高齢者の労働参加率
労働参加率の若い世代で分けてみると20~24歳と55歳以上が上昇、16~19歳は低下した。
・16~19歳 36.3%、前月は37.5%と7カ月ぶりの高水準、24年3月は38.2%と2009年6月以来の高水準
・20~24歳 72.4%と1年ぶりの水準を回復、前月は71.9%、24年1月は72.7%と2020年2月以来の高水準
・55歳以上 38.4%、前月は38.3%と5カ月ぶりの低水準、2020年2月は39.7%
チャート:16~19歳、20~24歳、55歳以上の労働参加率
〇縁辺労働者
縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が前月まで3カ月連続で62.5%での横ばいを経て62.6%へ上昇するなか、前月比0.5%減の547.9万人。男性が労働参加率の低下と整合的で同0.3%減の260.1万人、女性も同0.7%減の287.8万人と。そろって減少した。それでも、縁辺労働者は7カ月連続で女性が男性を上回った。
チャート:職を望む非労働力人口
〇男女別の労働参加率と失業率
男女別の労働参加率はそろって上昇。男性は前月の67.9%→68.0%と3カ月ぶりの水準、女性は前月の57.4→57.5%と4カ月ぶりの水準へ上昇した。
チャート:男女別の労働参加率
男女の失業率は、そろって低下。そろって労働参加率が上昇するなか、男性の失業率は前月の4.1%→4.0%へ低下した。なお、24年7月は4.4%と2021年10月以来の高水準だった。女性も前月の4.1%→4.0%へ低下した。なお、女性は2023年1月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。
チャート:男女別の失業率
〇人種・男女別の就業者、20年2月比
人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、黒人女性とヒスパニック系男女が前月を上回る結果となった。黒人男性は上げ幅を縮小。白人男女はそろってマイナス幅を広げた。なお、全て季節調整前の数字である点に留意しておきたい。
チャート:男女別の就業者数の20年2月との比較
人種別の週当たり賃金は2023年5月時点で以下の通りで、ヒスパニック系が762.8ドルと最低、次いで黒人が791.02ドル、白人は1,046.52ドルとなる。アジア系が最も高く1,169ドル。
チャート:実質ベースのフルタイム従業員の週当たり賃金、ヒスパニック系が最も低い
〇人種別の労働参加率、失業率
人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。なお、正確にヒスパニック系は中米・中南米系出身者を指し、民族であって人種にカテゴリーにあてはまらないが、便宜上、人種別とする。
人種別の労働参加率は、ヒスパニック系を除き上昇。白人と黒人、アジア系は上昇したが、ヒスパニック系は低下した。なお、データはアジア系を除き全て季節調整済みとなる。
・白人 62.3%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は62.2%、なお2023年8月は62.5%と2020年3月(62.6%)以来の高水準、2020年2月は63.2%
・黒人 62.5%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は62.4%と2022年11月以来の低水準を維持、なお2023年3月は64.0%と2008年8月の高水準に並ぶ
・ヒスパニック系 66.8%と23年12月以来の低水準、前月は67.5%と24年8月以来の高水準、24年8月は67.8%と2020年2月の水準に並ぶ
・アジア系 64.7%と3カ月ぶりの水準を回復、前月hあ64.3%と9カ月ぶりの低水準、24年6月は65.9%と2009年9月以来の高水準 2020年2月は64.5%
・全米 62.6%、前月まで3カ月連続で62.5%、なお2023年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ
チャート:人種別の労働参加率
人種・男性別の労働参加率は、白人と黒人が上昇、ヒスパニック系のみ低下した。
・白人 69.9%、前月は69.8%と8カ月ぶりの低水準、2020年3月は71.0%
・黒人 69.0%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は68.2%と4カ月ぶりの低水準、なお23年3月は70.3%と2010年3月(70.4%)以来の高水準
・ヒスパニック系 79.2%と23年12月以来の低水準、前月は79.9%、24年6月は80.5%と2020年2月(80.9%)以来の高水準
チャート:人種別、男性の労働参加率
人種・女性別の労働参加率は、白人と黒人が上昇、ヒスパニック系のみ低下した。
・白人 57.8%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は57.6%と24年11月以来の低水準、24年8月は58.0%と2020年2月以来の高水準(58.3%)
・黒人 62.5%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は62.4%、2023年4月は63.9%と2009年7月(64.0%)以来の高水準
・ヒスパニック系 61.6%と3カ月ぶりの低水準、前月は62.2%、24年8月は62.6%と1976年6月からのデータ公表以来で最高
チャート:人種別、女性の労働参加率
人種別の失業率は、白人とヒスパニック系で低下、黒人とアジア系は上昇した。労働参加率を振り返ると白人、黒人、アジア系は上昇も、ヒスパニック系は低下した。
・白人 3.5%と7カ月ぶりの低水準、前月は3.6%、24年11月は3.8%と2021年10月以来の高水準、なお2022年12月は3.0%と2020年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 6.2%と2カ月ぶりの水準へ上昇、前月は6.1%、24年11月は6.4%と2022年8月以来の高水準、23年4月は4.8%と過去最低
・ヒスパニック系 4.8%と7カ月ぶりの低水準、前月は5.1%、なお2022年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 3.7%、前月は3.5%と7カ月ぶりの低水準、なお2023年7月は2.3%と2019年6月(2.0%)以来の低水準
・全米 4.0%と8カ月ぶりの低水準、前月は4.1%、24年7月は4.3%と2021年10月以来の高水準、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準
チャート:人種別の失業率
人種・男女別の失業率は、まちまち
・白人男性 3.1%と10カ月ぶりの低水準、前月は3.3%、なお2022年12月は2.8%と20年2月以来の低水準
・白人女性 3.3%と3カ月ぶりの低水準、前月は3.4%、なお23年6月は2.6%で過去最低
・黒人男性 6.9%と22年1月以来の高水準、前月は5.6%と3カ月ぶりの水準へ低下、なお23年12月は4.6%と2023年4月につけた過去最低に並ぶ
・黒人女性 5.4%と前月と変わらず、24年11月は5.9%と22年3月以来の高水準、なお23年2月は3.4%と20年2月以来の低水準
・ヒスパニック系男性 4.0%と前月と変わらず、前月は4.0%、なお22年9月は3.0%と2019年11月以来の低水準
・ヒスパニック系女性 4.5%、前月は5.3%と24年8月以来の水準、なお23年5月は3.5%と過去最低
チャート:人種・男女別の失業率
白人と黒人の失業率格差は拡大。白人の失業率が低下したが黒人は上昇したため、失業率格差は前月の2.5ポイントから2.7ポイントへ縮めた。2019年平均の2.8pt以下を保つ。
チャート:白人と黒人の失業率格差
〇学歴別の労働参加率、失業率
学歴別の労働参加率は中卒以外で上昇した。
・中卒 47.4%、前月は47.6%、24年7月は48.9%と1992年にデータが公表されて以来で最高、前月は48.1%
・高卒 57.1%と7カ月ぶりの水準を回復、前月は56.9%、なお2023年11月は57.3%と2020年2月(58.3%)以来の高水準
・短大卒 62.8%と4カ月ぶりの水準を回復、62.7%、24年8月は63.5%と2023年3月以来の高水準、2020年2月は64.8%
・大卒以上 72.4%、前月は72.1%と21年11月以来の低水準、24年8月は73%と2023年9月以来の高水準を維持、なお2023年8-9月は73.5%と2020年1月(73.7%)以来の高水準に並ぶ
・全米 62.6%、前月まで3カ月連続で62.5%、なお2023年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ
学歴別の失業率は、まちまち。中卒と大卒以上は低下、短大卒は横ばい、高卒と大学院卒は上昇した。大学院卒は2カ月連続で上昇し、ホワイトカラー職の逆風を感じさせる。
・中卒以下 5.2%と24年3月以来の低水準、前月は5.6%、24年8月は7.1%と2021年以来の高水準に並ぶ、なお22年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 4.5%、前月は4.3%、24年7月は4.6%と2022年1月以来の高水準に並ぶ、なお23年7月は3.3%と2000年4月以来の低水準に並ぶ
・短大卒 3.5%と前月と変わらず、前月は3.5%、23年11月は2.8%と19年12月以来の低水準
・大卒 2.3%と4カ月ぶりの低水準、前月は2.4%、なお22年9月は1.8%と07年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒 2.3%と5カ月ぶりの水準へ上昇、前月は2.2%、24年8月は3.0%と21年7月以来の高水準、なお21年12月は1.2%と2000年4月の低水準に並ぶ
・全米 4.0%と8カ月ぶりの低水準、前月は4.1%、24年7月は4.3%と2021年10月以来の高水準、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準
チャート:学歴別の失業率
チャート:大卒以上の労働参加率は低下も、大学院卒の失業率は上昇
2024年の米大統領選でトランプ氏が勝利した理由は、不法入国者を含めた移民の急増だった。米議会予算局やサンフランシスコ連銀など、多くが移民の急増をめぐる影響を分析するように、足元の米労働市場にも大きな変化をもたらしている。そこで、海外生まれ(不法移民を含む)と米国生まれの雇用動向を確認してみた。
労働力人口(以下、全て季節調整前の数字)は、今回から新たな人口推計値を使用しており、民間の施設に入っていない人口は2億7,269万人と、前月の2億6,964万人から大幅に増加した。過去分には遡及しないため、2024年12月以前との比較は意味がない点。そこを踏まえた上で2020年2月比と前月との比較を見てみよう。コロナ禍直前の2020年2月比では、557.9万人増加してきた(前月は351.1万人増)。そのうち、米国生まれは178.9万人増(前月は92.7万人増)である一方で、海外生まれは428.2万人増(前月は455.3万人増)と、労働力人口の回復は不法入国者を含めた移民がけん引してきたことが分かる。1月の前月比の増減をみると、米国生まれが2カ月ぶりに増加、海外生まれは5カ月ぶりに増加した。
チャート:米労働力人口(季節調整前)、米国生まれと海外生まれの比較
労働参加率は海外生まれが2024年1月以来の水準に低下した前月の65.7%→66.0%へ改善。米国生まれは前月の61.4%と変わらず。24年1月以来の低水準を維持した。なお、海外生まれは就労ビザを取得して入国した者が多いほか、家族に頼れない事情もあり、米国生まれを上回る傾向が強い。
チャート:労働参加率、米国生まれと海外生まれの違い
就業者数も労働力人口と同じく、海外生まれがリード。海外生まれの就業者数は2020年比で407.7万人増(前月は303.2万人増)だった一方で、米国生まれは同25.3万人増(前月は24.3万人増)にとどまる。1月の前月比では海外生まれが5カ月ぶりに増加、米国生まれは3カ月ぶりに増加した。就業率は海外生まれが23年1月以来の低水準だった前月の62.9%→63.0%へ改善、逆に米国生まれは前月の59.1%→58.8%と22年1月以来の水準へ落ち込んだ。
チャート:米国生まれと海外生まれ、就業者数の比較
チャート:米国生まれと海外生まれ、就業率の比較
全米の失業率は4.0%と前月の4.1%から低下したが、米国生まれと海外生まれは上昇。海外生まれの失業率は前月の4.3%→4.6%と6カ月ぶりの高水準、米国生まれも前月の3.7%→4.3%と5カ月ぶりの水準へ上昇した。海外生まれは労働参加率につれ失業率は上昇、米国生まれは労働参加率が横ばいでも失業率が上昇した格好だ。
チャート:米国生まれと海外生まれ、失業率の比較
--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。
①平均時給は前月比で市場予想と一致したが、13業種のうち4業種が前月比0.5%以上となり、前月まで2カ月連続で押し下げた小売が反動で前月比1.7%と大幅上昇した影響が大きい。
②働き盛り世代の男性の労働参加率は、全米の25~54歳のみ上昇した程度で、他は横ばいあるいは低下。女性も25~54歳と25~34歳でまちまちで、全体的に改善したわけではない。
③男女別では労働参加率が改善した一方で、失業率は低下し堅調な労働市場を示唆。
④人種別では労働参加率が上昇したにもかかわらず、白人の男女は失業率は低下。黒人は男性が労働参加率につれ失業率も上昇、黒人女性は労働参加率が小幅上昇にとどまったため失業率は横ばい。ヒスパニック系は労働参加率が低下した男性で失業率が上昇、ヒスパニック系女性は労働参加率につれ失業率は低下した。
画像:労働参加率と失業率、人種別の動向
⑤学歴別では、大卒以上の労働参加率が上昇するなか、大学院卒の失業率は2カ月連続で上昇。高学歴のホワイトカラー職が減少か。
⑥季節調整前の数字ながら、海外生まれは労働参加率につれ失業率も上昇、米国生まれは労働参加率が前月比横ばいでも失業率は上昇した。就業率は海外生まれが改善した一方で、米国生まれが低下しており、海外生まれと米国生まれで明暗が分かれたと言えよう。
――以上の結果を踏まえると、今回の米1月雇用統計の改善は季節調整や新たな人口推計を採用した効果が大きいように見える。次回以降も堅調な推移が続くのか、結果が待たれる。
(カバー写真:WOCinTech Chat/Flickr)
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米1月雇用統計・NFPは鈍化も、失業率は改善し賃金の伸びも加速 Next Post: