米8月雇用統計、マイノリティに吹きつける逆風を確認

by • September 7, 2025 • Latest News, NY TipsComments Off on 米8月雇用統計、マイノリティに吹きつける逆風を確認3228

U.S. August Jobs Report Reveals Mounting Headwinds for Minority Workers.

米8月雇用統計は、こちらで紹介しましたようにNFPや失業率、雇用形態別(フルタイムのみ減少など)、全体的に米労働市場の弱まりを確認しました。

ここでは、業種別や賃金動向の他、性別や人種、学歴などではどうなったのかを取り上げます。詳細は、以下の通り。

〇平均時給

平均時給は前月比0.3%上昇の36.53ドル(約5,370円)で、市場予想と前月と一致した。2021年2月以降の上昇トレンドを維持。前年同月比3.7%と市場予想通りで、前月の3.9%を下回り、6月に続き2021年5月以来の低い伸びに並んだ

業種別を前月比でみると、平均時給の伸びが0.3%以上だったのは13業種中で8業種で、前月の速報値ベースの4業種を上回った。公益が同1.2%上昇と伸びが目立ったほか、金融が同0.8%上昇、輸送・倉庫と建設が同0.6%上昇、専門サービスやその他サービス、娯楽・宿泊が同0.4%上昇、製造業が同0.3%上昇した。一方で、雇用が堅調だった小売の他、鉱業・伐採はマイナス、前月の4業種を下回った。なお、平均時給の計算式は「総給与額 ÷ 総労働時間」であり、総給与額には①給与、②残業代、③ボーナスーーが含まれる。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

チャート:前年比では引き続きインフレ目標値2%超えが目立つ半面、全米の3.7%以下が優勢

〇労働参加率

全米の労働参加率は、前月の22年11月以来の水準に低下した62.2%から62.3%へ戻した。働き盛りの男性(25~54歳)をみると、全人種の25~54歳、25~54歳は上昇したが、白人の25~34歳は低下し前月と逆の展開を迎えた。なお、白人は季節調整前の数字となる。

・25~54歳 89.8%と24年7月の高水準に接近(当時は89.9%と2009年8月の90%迫る)、前月は89.2%
・25~54歳(白人) 90.7%と24年7月に続き2019年3月以来の高水準、前月は90.3%
・25~34歳 89.7%と24年7月以来の高水準(当時は90.2%と2009年10月以来のレベル)、前月は89.3%
・25~34歳(白人) 91.0%、前月は91.2%と24年7月以来の高水準(当時は91.3%と19年3月以来の水準に並ぶ)

チャート:働き盛りの男性の労働参加率

働き盛りの女性は、25-54歳は横ばいだったが、25-34歳は上昇した。

・25~54歳 77.7%と5カ月連続で変わらず、24年8月は78.4%と1997年のデータ公表以来の最高記録更新、前月は78.1%
・25~34歳 77.5%、前月は77.3%と22年12月以来の低水準、2月は過去最高に並ぶ78.7%

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男性で上昇し女性が低下した。ただし、これらは季節調整前の数字となる。

・男性 23.9%と24年10月以来の高水準、前月は23.3%、24年10月は24.5%と20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 15.5%と3カ月連続で23年6月以来の低水準、前月は15.5%、24年9月は16.8%と2020年2月以来の高水準

チャート:65歳以上の高齢者の労働参加率

労働参加率の若い世代と55歳以上で分けてみると、前月に続き55歳以上は上昇も若い世代はそろって低下した。

・16~19歳 34.8%と20年8月以来の低水準、前月は35.0%、24年3月は38.2%と2009年6月以来の高水準
・20~24歳 70.2%と21年8月以来の低水準、前月は70.9%、24年1月は72.7%と2020年2月以来の高水準
・55歳以上 38.1%と前月と変わらず、前月は38.1%、2020年2月は39.7%

チャート:16~19歳、20~24歳、55歳以上の労働参加率

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が62.3%と22年11月以来の水準の低水準だった前月から改善するなか、前月比2.9%増の635.4万人と21年7月以来の高水準だった。男性が働き盛り世代の労働参加率の改善と整合的で同1.1%減の296.3万人と3カ月連続で減少したが、女性は同6.6%増の339.1万人と3カ月連続で増加した。縁辺労働者は2カ月連続で女性が男性を上回り、女性の間で職探しが困難な状況が続いた。

チャート:今、職を望む非労働力人口

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は、まちまち。男性は21年6月以来の低水準に並んだ前月の67.6%→68.0%へ改善した一方で、女性は56.9%と22年12月以来の57%割れを迎えた。

チャート:男女別の労働参加率

男女の失業率も、まちまち。男性は労働参加率が上向いた反面、失業率は前月の4.4%で変わらず、4月と7月に続き21年10月以来の高水準に並んだ。女性は労働参加率が低下したにもかかわらず、失業率は前月の4.1%→4.2%と5月に続き21年11月以来の水準に並んだ。なお、女性は2023年1月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。

チャート:男女別の失業率

〇人種・男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、まちまち。白人は男女そろってマイナス幅が拡大した。黒人は男性が伸びを拡大した一方で、女性は3カ月連続でマイナスでも下げ幅は縮小。ヒスパニック系は男性の上げ幅は拡大したが、女性は上げ幅が縮小した。なお、全て季節調整前の数字である点に留意しておきたい。

チャート:男女別の就業者数の20年2月との比較

人種別の週当たり賃金は2023年5月時点で以下の通りで、ヒスパニック系が762.8ドルと最低、次いで黒人が791.02ドル、白人は1,046.52ドルとなる。アジア系が最も高く1,169ドル。

チャート:実質ベースのフルタイム従業員の週当たり賃金、ヒスパニック系が最も低い

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を確認する前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。なお、正確にヒスパニック系は中米・中南米系出身者を指し、民族であって人種にカテゴリーにあてはまらないが、便宜上、人種別とする。

人種別の労働参加率は、白人のみ低下。白人は2022年11月以来の水準へ低下したが、黒人とアジア系は上昇、ヒスパニックのみ横ばいだった。なお、データはアジア系を除き全て季節調整済みとなる。

・白人 61.8%と22年11月以来の低水準、前月は62.0%、なお2023年8月は62.5%と2020年3月(62.6%)以来の高水準、2020年2月は63.2%
・黒人 62.6%と6カ月ぶりの水準を回復、前月は61.6%と21年12月以来の低水準、なお2023年3月は64.0%と2008年8月の高水準に並ぶ
・ヒスパニック系 67.0%、前月も67.0%、24年8月は67.8%と2020年2月の水準に並ぶ
・アジア系 65.0%、前月は64.9%と6カ月ぶりに65%割れ、2020年2月は64.5%
・全米 62.3%、前月は62.2%と22年11月以来の低水準、なお2023年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

チャート:人種別の労働参加率

人種・男性別の労働参加率は、そろって上昇した。

・白人 69.8%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は69.6%と3カ月連続で横ばい、2020年2月は71.7%
・黒人 69.8%と2月以来の水準を回復、前月は67.9%と23年10月以来の68%割れ、なお23年3月は70.3%と2010年3月(70.4%)以来の高水準
・ヒスパニック系 79.0%、前月は78.9%と5カ月ぶりの79%割れ、24年6月は80.5%と2020年2月(80.9%)以来の高水準

チャート:人種別、男性の労働参加率

人種・女性別の労働参加率は白人で低下、黒人とヒスパニック系で上昇した。なお、ヒスパニック系女性の労働参加率は3月から黒人女性を逆転し続けている。

・白人 57.3%と23年1月以来の低水準、前月は57.6%と3カ月連続で年初来で最低を維持、24年8月は58.0%と2020年2月以来の高水準(58.3%)
・黒人 61.4%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は61.1%、2023年4月は63.9%と2009年7月(64.0%)以来の高水準
・ヒスパニック系 61.9%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は61.8%、24年8月は62.6%と1976年6月からのデータ公表以来で最高

チャート:人種別、女性の労働参加率

人種別の失業率はまちまち。労働参加率が低下した白人は横ばいだった。労働参加率が上向いた黒人、労働参加率が横ばいだったヒスパニック系は、それぞれ上昇。労働参加率が上昇したアジア系は、失業率は低下した。後述するが、アジア系の失業率低下は大学院卒の結果と整合的だ。

・白人 3.7%、前月は3.7%、4-5月は3.8%と2021年10月以来の高水準に並ぶ、なお2022年12月は3.0%と2020年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 7.5%と21年10月以来の高水準、前月は7.2%、23年4月は4.8%と過去最低
・ヒスパニック系 5.3%と24年11月以来の水準へ戻す、前月は5.0%、なお2022年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 3.6%、前月は3.9%と9カ月ぶりの高水準、なお2023年7月は2.3%と2019年6月(2.0%)以来の低水準
・全米 4.3%と24年7月以来の高水準、前月は4.2%、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:人種別の失業率

人種・男女別の失業率は、全て上昇。なお、労働参加率が前月比で低下したのは白人女性のみで、他は全て上昇したため、白人女性以外は失業率が上向きやすい地合いにあった。

・白人男性 3.7%と4カ月ぶりの水準へ戻す、前月は3.5%、なお2022年12月は2.8%と20年2月以来の低水準
・白人女性 3.2%と3カ月ぶりの水準へ戻す、前月は3.1%と24年9月以来の低水準、なお23年6月は2.6%で過去最低
・黒人男性 7.1%と21年10月以来の高水準、前月は7.0%、なお23年12月は4.6%と23年4月につけた過去最低に並ぶ
・黒人女性 6.7%と21年9月以来の水準へ戻す、前月は6.3%、なお23年2月は3.4%と20年2月以来の低水準
・ヒスパニック系男性 4.8%と4カ月ぶりの水準へ戻す、前月は4.2%、なお22年9月は3.0%と2019年11月以来の低水準
・ヒスパニック系女性 4.9%と6カ月ぶりの水準へ戻す、前月は4.5%、なお23年5月は3.5%と過去最低

チャート:人種・男女別の失業率

白人と黒人の失業率格差は拡大。白人の失業率が低下した一方で、黒人の失業率が上昇したため、失業率格差は前月の3.5ポイント→3.8ポイントへ拡大し、2019年平均を超え2021年8月以来の高水準を迎えた。

チャート:白人と黒人の失業率格差

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、中卒のみ低下。前月、経済活動が停止したコロナ禍の20年4月の71.6%も下回り、1992年のデータ公表以来で最低を更新した大卒以上を含め、中卒以外は改善した。

・中卒 47.5%、前月は49.0%と1992年のデータ公表開始以来で最高
・高卒 56.9%、前月は56.5%と4カ月ぶりの低水準、なお2023年11月は57.3%と2020年2月(58.3%)以来の高水準
・短大卒 63.6%と24年8月以来の水準を回復、前月は63.0%、24年8月は63.5%と2023年3月以来の高水準、2020年2月は64.8%
・大卒以上 71.7%、前月は71.5%と1992年のデータ公表開始以来で最低、なお2023年8-9月は73.5%と2020年1月(73.7%)以来の高水準に並ぶ
・全米 62.3%、前月は62.2%と22年11月以来の低水準、なお2023年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

学歴別の失業率は中卒と大学院卒を除き低下した。

・中卒以下 6.7%、前月は5.5%、24年8月は7.0%と2021年以来の高水準に並ぶ、なお22年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 4.3%、前月は4.4%、4年7月は4.6%と2022年1月以来の高水準に並ぶ、なお23年7月は3.3%と2000年4月以来の低水準に並ぶ
・短大卒3.2%、前月は3.0%と23年11月以来の低水準、23年11月は2.8%と19年12月以来の低水準
・大卒 2.7%と21年8月以来の高水準を保つ、前月は2.7%、なお22年9月は1.8%と07年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒 3.0%、前月は3.6%と21年3月以来の高水準、なお21年12月は1.2%と2000年4月の低水準に並ぶ
・全米 4.3%と24年7月の水準に並ぶ、前月は4.2%、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:学歴別の失業率

チャート:大卒以上の労働参加率、労働参加率は1992年のデータ公表開始以来で最低だった前月から4カ月ぶりに改善するなか、大学院卒の失業率は21年3月以来の高水準から改善した。

2024年の米大統領選でトランプ氏が勝利した理由は、不法入国者を含めた移民の急増だった。米議会予算局やサンフランシスコ連銀など、多くが移民の急増をめぐる影響を分析するように、コロナ禍後の足元の米労働市場にも大きな変化をもたらした。しかし、足元はトランプ政権の不法移民取り締まり強化に伴い、コロナ禍後の移民流入の増加分が巻き戻されつつある。そこで、海外生まれ(不法移民を含む)と米国生まれの雇用動向を確認してみた。

労働力人口(以下、全て季節調整前の数字)にうち、米国生まれは78.4万人減(前月は80.9万人増)と3カ月ぶりに減少したが、海外生まれは17.3万人増(前月は50.6万人減)と5カ月ぶりに増加し、明暗が分かれた。トランプ政権下での不法移民取り締まりの強化が影響するが、景気減速の余波からか一旦、減少の流れに歯止めがかかった。

チャート:米労働力人口(季節調整前)、米国生まれと海外生まれの比較

労働参加率も、明暗が分かれた。米国生まれは労働力人口の減少に合わせ24年7月以来の高水準だった前月の62.0%→61.6%へ低下した。海外生まれは逆に前月の66.1%→66.4%と4カ月ぶりの水準を回復した。季節調整前の数字のところ、全米の労働参加率が62.3%と22年11月以来の低水準だった前月の62.2%から改善した背景は、海外生まれが主導したことが分かる。なお、海外生まれは通常、就労ビザを取得して入国した者が多いほか、家族に生活支援で頼れない事情もあり、労働参加率で米国生まれを上回る傾向が強い。

チャート:労働参加率、米国生まれと海外生まれの違い

就業率も、まちまち。米国生まれは前月の59.1%→58.8%と6カ月ぶりの水準へ低下した。海外生まれは5カ月ぶりの水準に下振れした前月の63.4%→63.6%と改善した。なお、全米の就業率が59.6%と21年12月以来の水準を保った。

チャート:米国生まれと海外生まれの就業率

全米の失業率は4.3%と前月4.2%から上昇し2024年7月以来の水準をつけた。米国生まれの失業率は労働参加率の低下につれ、21年8月以来の水準へ上昇した前月の4.7%→4.6%へ低下した。海外生まれは労働参加率の上昇もあって、前月の4.1%→4.4%と5カ月ぶりの水準へ上昇した。

チャート:米国生まれと海外生まれ、失業率の比較

--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

①平均時給は前月比で市場予想超えは13業種のうち8業種と、前月の4業種から増加。賃金の伸びは前月比で底堅さを示す。

働き盛り世代の男性の労働参加率は、白人の25~34歳以外で全て改善。景気が一段と冷え込む前に労働市場にカムバックしてきた可能性を示唆。

③男女別では、男性の労働参加率が上昇も失業率は横ばい、女性は労働参加率が低下も失業率が上向き、足元の労働市場が女性に逆風である状況を確認。

人種・男女別では、労働参加率の上昇につれ、全体的に失業率も上向いた。ただし、白人女性のみ労働参加率が低下したものの、失業率は上昇し、ここでも女性にとって厳しい労働市場環境を表す。

画像:労働参加率と失業率の人種別の動向、グレー枠は労働参加率が低下も失業率が上昇したケース、オレンジ枠は労働参加率と失業率が上昇したケースを表す。

⑤学歴別では、大卒以上の労働参加率が上昇したところ、大学院卒の失業率がデータ公表以来で最悪となった前月から改善。アジア系の失業率の低下と合わせ、高学歴の間で採用が進んだ可能性を示唆する。

⑥季節調整前の数字ながら、全米の労働参加率の改善は海外生まれがけん引したことが判明。ただ、失業率は連れて海外生まれで上昇した。一方で、米国生まれは労働参加率の低下につれ、失業率も前月を下回った。なお、労働力人口の減少は、失業率を押し上げも押し下げもしない中立的水準が移民によって押し上げられた16万人増~20万人増から、従来の6~10万人程度に縮小する可能性を示唆する。

ーー米8月雇用統計では、黒人だけでなくヒスパニック系の失業率が弱含みました。さらに、女性の労働参加率が低下しながらも、失業率は上昇。FRBは8月22日、5年毎に見直しを行う”長期の金融政策枠組み”で、「広範で包摂的な最大雇用」を取り下げました。バイデン前政権が進めた”多様性・公平性・包摂性(DEI)”を撤回した、トランプ政権に忖度したものと捉えられます。もっとも、米景気が減速が鮮明となり、米労働市場の弱まりが非白人や女性といったマイノリティにより大きな打撃を与えるなか、本来であれば取り下げるべきではなかったのではないでしょうか。

(カバー写真:WOCinTech Chat/Flickr)

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