U.S. Nonfarm Payrolls Hit 5-Month High, Jobless Rate Rises.
米9月雇用統計が、10月1日から11月12日までの政府機関閉鎖を経て、漸く公表されました。結果は・非農業部門就労者数(NFP)が市場予想を大きく上回った一方で、失業率は労働参加率につれ、2021年10月以来の水準へ上昇。全米の平均時給は底堅さを見せました。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のニック・ティミラオス記者が指摘したように、FOMC参加者が労働市場より、インフレ警戒を示すのも致し方なし、の結果に見えます。ところが、NY連銀総裁が11月21日、短期的に利下げ余地ありとの見解を寄せ、12月FOMCをめぐっては据え置きから再び利下げの観測が強まるなど、乱高下しています。。
チャート:FF先物市場での12月FOMCの予想、NY連銀総裁発言を受けて再び利下げが優勢

(出所:Street Insights)
今回の雇用統計のポイントは以下の通りで、8月に反しポジティブな結果が優勢でした。
(労働市場にポジティブ)
・NFPが市場予想以上、前月からも改善
・平均時給の伸び、前年同月比そろって市場予想超え
・民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)、前月比と前年比ともに加速に反転
・労働参加率は2022年11月以来の低水準だった7月から、2カ月連続で改善
・就業率は2021年12月以来の低水準
・不完全雇用率が低下
・フルタイムが2カ月連続で減少
・長期失業者の割合が低下
(労働市場にネガティブ/ニュートラル)
・NFP、過去2カ月分は下方修正
・週当たり労働時間は横ばい、財は短縮
・失業率が上昇
・失職者が失業率を押し上げ
・完全解雇者の労働力人口の割合が2021年10月以来の高水準
以下は、今回の雇用統計の詳細。
〇非農業部門就労者数
米9月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比11.9万人増となり、市場予想の5.3万人増を上回った。5カ月ぶりの強い伸びとなる。前月は2.2万人増→0.4万人減に下方修正された。
NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比9.7万人増と市場予想の6.2万人増を上回った。前月の1.8万人増(3.8万人増から下方修正)より強い。年末商戦の臨時雇用が支えとなった可能性が考えられるが、9月単月では2024年の20.8万人増を下回り、2000年からの平均値13.8万人増にも届かず、底堅いものの好調とは言い難い。民間サービス業も同8.7万人増と、前月の5.0万人増(6.3万人増から下方修正)を上回った。

(出所:Street Insights)
チャート:民間就労者数、9月はNFPと同じく5カ月ぶりの強い伸び

(出所:Street Insights)
チャート:9月単月でのNFPとしては、2000年からの平均値13.8万人増に届かず

(出所:Street Insights)
過去分については、7月の0.7万人の下方修正(7.9万人増→7.2万人増)と合わせ、2カ月分で3.3万人の下方修正となった。これで、2023年以降では、32回のうち24回目の下方修正となる。しかも、バイデン前政権下の2023-24年は平均下方修正幅が2.5万人に対し、トランプ政権では6.4万人と下方修正幅が拡大した。
チャート:NFPと修正幅(グレー枠は2023年以降の修正幅)

(出所:Street Insights)
サービス部門のセクター別動向は11業種中で6業種で増加し、前月の速報値ベースの5業種を上回った。今回最も雇用が増加した業種は引き続き教育・健康で前月比5.9万人増。その他、娯楽・宿泊や政府が下支え。年末商戦を控え、小売は3カ月連続で増加した。一方で、5カ月連続で専門サービスが減少したほか、その他サービス、公益に加え、年末商戦を控えながら、輸送・倉庫が減少に転じた。
(サービスの主な内訳)

(出所:Street Insights)
財生産業は前月比1.0万人増と、5カ月ぶりに増加した。業種別をみると、建設が同1.9万人増と4カ月ぶりに増加した。一方で、鉱業・伐採は0.3万人減と5カ月連続で減少。製造業は関税の影響も重なり、同0.6万人減と5カ月連続で落ち込んだ。

(出所:Street Insights)
チャート:業種別、雇用の増減

(出所:Street Insights)
〇平均時給
平均時給は前月比0.2%上昇の36.67ドル(約5,760円)で、市場予想の0.3%と前月の0.4%(0.3%から上方修正)下回った。2021年2月以降の上昇トレンドは維持。前年同月比3.8%と市場予想の3.7%を超え、前月と一致(3.7%から上方修正)した。生産部門・非管理職は前年同月比3.8%、前月の3.9%を下回り21年5月以来の低い伸びとなり、管理職を含む全米と違って賃金の伸びが抑制されたことが分かった。
チャート:生産労働者・非管理職の平均時給の伸びは前月比で鈍化

(出所:Street Insights)
〇週当たり労働時間
週当たりの平均労働時間は34.2時間と前月と一致した。財部門(製造業、鉱業、建設)は39.7時間と、3カ月ぶりの低水準。コロナ禍で最長となった2022年2月の40.3時間以下を保ったままだ。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.2時間と、2カ月連続で変わらず。とはいえ、2006年以降で最長を記録した2021年5月の33.9時間以下のトレンドを保つ。
チャート:週当たり平均労働時間、9月は財が前月比で短縮

(出所:Street Insights)
〇総労働投入時間、民間の総賃金
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間の就労者数の伸びが前月を上回ったが、週当たり労働時間が伸び悩み、前月比0.1%増だった。
民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)は、前月比0.3%増と前月の0.1%増を上回った。前年同月比は過去分の修正もあって4.7%増、前月の4.5%超えに。3カ月平均も4.8%増と、前月を上回った。
チャート:民間部門の総賃金、前月から加速

(出所:Street Insights)
〇失業率、労働参加率、就業率、不完全就業率、長期失業者
失業率は4.4%と市場予想と前月の4.3%を上回り、2021年10月以来の水準へ上昇した。四捨五入前では4.441%と、明確な上振れが見て取れる。ただし、労働参加率が62.4%と前月の62.3%から上昇したように、労働市場への新規参入や再参入者など職探しをする失業者が増加したためだ。また、家計調査での就業者が同25.1万人増だった一方で、失業者数が同21.9万人増となったことも、失業率の上昇につながった。
チャート:失業率の四捨五入前の推移

(出所:Street Insights)
失業率は上昇するなか、サーム・ルールが示す分岐点0.5ポイントに小幅ながら近づいた。サーム・ルールとは、直近3ヵ月間の失業率の移動平均と過去12カ月間の最低値の差が0.5pt以上なら、景気後退入りするとの説だが、9月の失業率が4.4%へ上向いた結果、移動平均と最低値の差は0.23ptと前月の0.13ptから上昇した。
チャート:サーム・ルール発動の水準にやや近づく

(出所:Street Insights)
自発的離職者数は前月比横ばいの86.1万人だった。連邦政府機関の閉鎖を前に、増加した格好だ。自発的離職者数に占める失業者の割合は前月の11.4%と3カ月ぶりの水準へ上昇した。
チャート:自発的離職者数、9月は増加

(出所:Street Insights)
失業率が上昇するなか、失職者数(一時的な解雇ではなく再編やM&Aなど会社都合での解雇者、派遣など契約が終了した労働者)は、前月比13.9万人増の262.9万人と、3カ月連続で増加した結果、2021年9月以来の高水準となった。失職者数の割合は前月の35.0%→35.8%へ上昇、失業者のシェアで1位を維持した。失職者のうち、完全解雇者(会社都合や非自発的な事情で雇用が終了し、求職活動を開始した失業者)が労働人口に占める割合は1.18%と、2021年10月以来の高水準だった。
失職者数と同じく失業率を押し上げたのは労働市場への再参入者で前月比3.8万人増の232.5万人と、2021年8月以来の高水準。ただし、失職者数などが大幅増となったため、再参入者が占める失業者の割合は前月の31.3%→30.9%へ低下した。新規参入者は同3.8万人増の81.3万人だった。伸びが小幅だった結果、失業者に占める割合は前月の10.8%で変わらなかった。
レイオフ(一時解雇)は前月比5.3万人減の83.3万人、2カ月連続で減少した。失業者に占めるレイオフの割合は前月の12.1%→11.1%と、約1年ぶりの水準に低下した。
チャート:失業者の割合は失職者が引き続きトップ、再参入者と共に割合上昇

(出所:Street Insights)
チャート:失職者は3カ月連続で増加した結果、21年9月以来の高水準

(出所:Street Insights)
チャート:労働人口に占める完全解雇者の割合、2021年10月以来の高水準

(出所:Street Insights)
チャート:レイオフは2カ月連続で減少

(出所:Street Insights)
労働参加率は前述したように2022年11月以来の水準に落ち込んだ7月の62.2%→8月の62.3%→9月に62.4%と改善が続いた。ただし、20年2月(63.4%)以来の高水準を回復した2023年11月の62.8%以下が続く。
就業率は59.7%と、2021年12月以来の低水準から脱した。
チャート:労働参加率は改善、就業率は低水準を維持

(出所:Street Insights)
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全雇用率は、2021年10月以来の水準へ上昇した前月の8.1%→8.0%へ低下した。
チャート:不完全雇用率、21年10月以来の水準へ上昇

(出所:Street Insights)
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は前週の9.8週から10週へ延びた。一方で、27週以上にわたる失業者の割合は2022年2月以来の水準へ上昇した前月の25.7%→23.6%へ低下。
チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、22年2月以来の高水準から低下

(出所:Street Insights)
〇病気が理由で働けないとする人々
「病気が理由で働けない」とする人々は、前月比9.8万人減の93.9万人へ減少。前月はコロナ前平均の2015‐19年の平均値の93万人に接近にしました。
チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値に接近

(出所:Street Insights)
〇家計調査の就労者内訳
今回、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、家計調査の就業者数は前月比25.1万人増と前月の28.8万人増につづき、NFPの11.9万人増を上回る結果となったた。
チャート:NFPと家計調査の就業者数、2カ月連続でNFPより強い伸びに

(出所:Street Insights)
家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、フルタイムが前月比67.3万人増と年初来で5回目の増加となった。複数の職を持つ者は同1.7万人増と、2カ月連続で増加。パートタイムは同57.3万人減、年初来で4回目の減少を迎えた。
チャート:フルタイムのみ減少

(出所:Street Insights)
チャート:複数の職を持つ者、9月は2カ月連続で増加

(出所:Street Insights)
NFPで下方修正が続く場合は、回答率の低迷が一因と考えられる。また、回答率の低迷に伴い、業績が堅調で、回答する余裕のある企業の偏りが出るリスクも見込まれ、WSJ紙もその点を問題視していた。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、コロナ禍を経て他指標と同様に回答率は芳しくない。
今年とコロナ禍直前の結果を比較すると、以下の通り。
・CES(事業所調査、NFPや平均時給など)→3月に42.6%、20年2月は59%
・CPS(家計調査、失業率や労働参加率など)→4月に68.1%、20年2月は82.3%
・雇用動態調査(JOLTS、求人件数など)→3月に35.2%と、20年2月は56.4%
CPSは対面と電話での聞き取り調査により実施され、他と比較して高いとはいえ、それぞれ低迷したままだ。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは2025年1月から6万世帯→5.5万世帯へ削減した。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。
チャート:雇用関連の調査回答率は低迷

(出所:Street Insights)
(カバー写真:World Relief Spokane/Flickr)
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