米5月雇用統計・NFPが好調で、年内追加利上げ観測台頭

by • June 6, 2026 • Finance, Latest NewsComments Off on 米5月雇用統計・NFPが好調で、年内追加利上げ観測台頭306

Strong May Jobs Report Fuels Expectations for a Fed Rate Hike This Year.

米5月雇用統計では、非農業部門就労者数(NFP)が市場予想の約2倍の増加を示す文句なしの好結果でした。しかも、過去2カ月分も、大幅に上方修正されています。一方で、労働参加率の横ばいにつれ、失業率は3カ月連続も変わらず。平均時給は前年比で伸びが鈍化し、マーケットは年内の利上げ観測が台頭する一方で、エコノミストは年内利上げに慎重な見方が優勢と、評価が真っ二つに分かれる結果となりました。

ロイターによれば、12月の利上げ織り込み度は68.4%へ上昇。10月を見込む予想も出てきました。結果、米10年債利回りは5月後半以来の4.5%超え。そもそも、米株相場は4日の半導体大手ブロードコムの決算発表で見通しが市場予想に届かず荒れ模様だった上、IPO調達額史上最大の12兆円となるスペースXの上場を控え、今回の米雇用統計を受けた利上げ観測が逆風となり大幅安、特にナスダックは4.18%安と2025年4月以来の急落となりました。

画像:主要マーケットの前日比

(出所:Marketwatch

画像:S&P500、個別銘柄ヒートマップ

(出所:finbiz

米5月雇用統計の結果を受けて、ドル円は昇竜の如く上昇。160.26円まで切り上げた後に一時159.72円まで本日安値を付けるも一時的で、引けまで買いが優勢となり一時160.34円まで上値を拡大し、4月30日の高値160.72円にひたひたと迫りました。

チャート:ドル円、21時からのドル円の5分足、緑線は米10年債利回り

(出所:Street Insights)

今回の雇用統計のポイントは以下の通りで、NFPの好結果に対しまちまちとなった。

(労働市場にポジティブ)
・NFPは市場予想以上に増加
・過去2カ月分も大幅に上方修正
・民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)、前年比で上向き
・家計調査の就業者数は5カ月ぶりに増加
・就業率は上昇
・不完全雇用率は低下
・パートタイムが増加

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)
・平均時給の伸び、前年同月比で鈍化
・週当たり平均労働時間は前月と変わらず
・失業率は横ばい
・労働参加率は横ばい
・長期失業者の割合は上昇
・フルタイムは年初来で4回目の減少
・完全解雇者の労働力人口の割合、小幅ながら上昇

以下は、今回の雇用統計の詳細。

〇非農業部門就労者数

米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比17.2万人増となり、市場予想の8.5万人増を上回った。前月は11.5万人増→17.9万人増に上方修正された。

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比12.0万人増と市場予想の8.5万人増を上回った。前月の17.7万人増(12.3万人増から上方修正)に届かずとも、3カ月連続で増加。民間サービス業は同9.2万人増と、前月の16.3万人増(11.3万人増より上方修正)以下ながら、堅調なペースを保った。

チャート:NFPと失業率

(出所:Street Insights)

チャート:民間就労者数の増加、5月も堅調なペースながら伸び自体は3カ月連続で鈍化

(出所:Street Insights)

過去2カ月分は9.3万人の上方修正
・3月 18.5万人増→21.4万人増、2.9万人の上方修正
・4月 11.5万人増→17.9万人増、6.4万人の上方修正

チャート:NFPと修正幅(グレー枠は2023年以降の修正幅)

(出所:Street Insights)

サービス部門のセクター別動向は11業種中で7業種で増加、速報値ベースでの前月の8業種を下回った。今回最も雇用が増加した業種は夏休みの行楽需要が影響し娯楽・宿泊に。次いで政府が入り、トップを独走していた教育・健康は3位に甘んじた。一方で、小売が減少に転じたほか、情報は2カ月連続、卸売と金融は3カ月連続で減少した。

(サービスの主な内訳)

(出所:Street Insights)

今回、政府が同5.1万人増とNFPを下支えした。これは地方政府が同5.5万人増とけん引したためで、①連邦政府の人員削減の受け皿、②年度初め(7月が多い)の影響で急増した可能性――が見込まれる。一部のエコノミストの間では、一時的要因との判断から、足元の好調な数字が持続可能ではないとの分析が聞かれた。

チャート:政府は地方政府が支え、3カ月連続で増加

財生産業は前月比2.8万人増と、3カ月連続で増加。業種別をみると、建設がのびを主導したほか、製造業が増加に転じ、鉱業・掘削も小幅ながら増加した。

(出所:Street Insights)

チャート:業種別、雇用の増減

(出所:Street Insights)

〇平均時給

平均時給は前月比0.3%上昇の37.53ドル(約6,030円)と市場予想と一致し、前月の0.2%を上回った。2021年2月以降の上昇トレンドを維持。前年同月比は3.4%で市場予想と一致したが、2021年5月以来の低い伸びに並んだ。生産労働者・非管理職も同3.6%と、全米と合わせて前月を下回った。

チャート:平均時給の前年比は前月以下

(出所:Street Insights)

〇週当たり労働時間

週当たりの平均労働時間は34.3時間と、前月と同水準だった。財部門(製造業、鉱業、建設)が2カ月連続で40.1時間となった。コロナ禍で最長となった2022年2月の40.3時間以下を保ったままだ。ただし、全体の労働者の約7割を占める民間サービスも前月と同じく33.2時間だった。2006年以降で最長を記録した2021年5月の33.9時間以下のトレンドを保つ。

チャート:週当たり平均労働時間

(出所:Street Insights)

〇総労働投入時間、民間の総賃金

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は週当たり労働時間が変わらなかったが、民間の就労者数が前月比で堅調な伸びを維持した結果、前月比0.1%増と4月に続き増加した。

民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)は、前月比0.4%上昇と2カ月連続でプラス。前年同月比は4.2%増と、前月の同4.0%を上回った。3カ月平均は4.0%増と、前月と一致した。

チャート:民間部門の総賃金、前年比で4%台を維持

(出所:Street Insights)

〇失業率、労働参加率、就業率、不完全就業率、長期失業者

失業率は3カ月連続で4.3%、市場予想と一致した四捨五入前では4.296%。労働参加率は61.8%と前月と変わらなかった、職探しをする人々が労働市場に戻ってきていない可能性が見込まれるなか、四捨五入前では小幅に低下した。失業者数は同6.6万人減で、就業者数が同14.9万人増と増加したが、失業率を押し下げるには至らなかった。

チャート:失業率の四捨五入前の推移

(出所:Street Insights)

自発的離職者数は前月比7.2万人増の91.6万人だった。自発的離職者数に占める失業者の割合は、前月の11.3%→12.5%へ上昇した。

チャート:自発的離職者数の推移

(出所:Street Insights)

失業率が上昇するなか、失職者数(一時的な解雇ではなく再編やM&Aなど会社都合での解雇者、派遣など契約が終了した労働者)は、前月比1.1万人増の260.6万人と、小幅に2カ月連続で増加した。失職者数の割合は前月の34.9%→35.5%へ上昇し、5カ月連続で1位を維持。失職者のうち、完全解雇者(会社都合や非自発的な事情で雇用が終了し、求職活動を開始した失業者)が労働人口に占める割合は1.13%へ上昇も、2021年10月以来の高水準だった2月の1.19%以下を保った。

新規参入者は前月比1.3万人増の81.8万人だった結果、失業者に占める割合は前月の10.8%→11.2%へ上昇した。労働市場への再参入者は同7.3万人減の220.9万人と、減少に反転。ただし、再参入者が失業者に占める割合は前月の30.7%→30.2%へ低下した。

レイオフ(一時解雇)は前月比13.9万人減の77.8万人。失業者に占めるレイオフの割合は前月の12.3%→10.6%に低下した。

チャート:失業者の割合は失職者トップを維持

(出所:Street Insights)

チャート:失職者数は2カ月連続で小幅増加

(出所:Street Insights)

チャート:労働人口に占める完全解雇者の割合、2021年10月以来の高水準だった2月以下が続く

(出所:Street Insights)

チャート:レイオフは減少

(出所:Street Insights)

労働参加率は前述したように61.8%と、前月と同じく2021年10月以来の水準に保った。20年2月(63.4%)以来の高水準を回復した23年11月の62.8%以下が続く。

就業率は59.2%と、2021年10月以来の低水準だった前月の59.1%を上回った。

チャート:労働参加率は2021年以来の低水準

(出所:Street Insights)

経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全雇用率は8.1%、前月の8.2%を下回った一方で、パートタイムの雇用は増加した。

チャート:不完全雇用率、3カ月ぶりに低下

(出所:Street Insights)

失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は2021年12月の水準に並んだ前週の11.0週から11.6週へ延びた27週以上にわたる失業者の割合も前月の25.3%→27.5%へ上昇し、2021年12月以来の高水準だった。これらの数字を踏まえれば、労働参加率の低迷は失業者が職探しを断念し、労働市場から退出している可能性を示す。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、21年12月以来の高水準

(出所:Street Insights)

〇病気が理由で働けないとする人々

「病気が理由で働けない」とする人々は、前月比6.0万人減の96.6万人。コロナ前平均の2015‐19年の平均値の93万人に接近しつつある。

チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値に接近

(出所:Street Insights)

〇家計調査の就労者内訳

今回、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、家計調査の就業者数は前月比14.9万人増と、NFPの17.2万人増と整合的な結果となった。NFPが3カ月連続で増加した一方で、家計調査の就業者数は5カ月連続ぶりに増加した。

チャート:NFPと家計調査の就業者数の推移

(出所:Street Insights)

家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、フルタイムが前月比7.9万人減と年初来の5カ月間で4回目の減少となった。パートタイムは同26.6万人増と、2カ月連続で増加。複数の職を持つ者は概ね横ばいだった。

チャート:フルタイムは減少続き、パートタイムは2カ月連続で増加

(出所:Street Insights)

チャート:複数の職を持つ者、前月と概ね変わらず

(出所:Street Insights)

なお、NFPで下方修正が続く理由は、回答率の低迷が一因と考えられる。また、回答率の低迷に伴い、業績が堅調で、回答する余裕のある企業の偏りが出るリスクも見込まれ、WSJ紙もその点を問題視していた。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、コロナ禍を経て他指標と同様に回答率は芳しくない。

今年とコロナ禍直前の結果を比較すると、以下の通り。

・CES(事業所調査、NFPや平均時給など)→25年3月に42.6%、20年2月は59%
・CPS(家計調査、失業率や労働参加率など)→25年4月に68.1%、20年2月は82.3%
・雇用動態調査(JOLTS、求人件数など)→25年3月に35.2%と、20年2月は56.4%

CPSは対面と電話での聞き取り調査により実施され、他と比較して高いとはいえ、それぞれ低迷したままだ。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは2025年1月から6万世帯→5.5万世帯へ削減した。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。なお、連邦政府職員削減の影響か、直近では更新が滞っている。

チャート:雇用関連の調査回答率は低迷

(出所:Street Insights)

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)

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