Swiss Scraps Exchange Cap Before ECB’s Bond Buying Program.
2014年12月18日にマイナス金利を導入しマーケットを驚かせたスイス国立銀行(SNB)が、再び金融市場に衝撃を与えました。2011年9月に導入した、ユーロ安・CHF高の防衛線1.20スイスフラン(CHF)を撤廃する荒技に出たのです。同時に、3ヵ月物ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)も従来の”マイナス0.75から0.25%”から”マイナス1.25%からマイナス0.25%”へ、中銀預金金利も従来のマイナス0.25%からマイナス0.75%へ引き下げました。決定を受け為替相場はCHF急騰、対ユーロで一時0.8052CHFとCHFが過去最高値を示現。対ドルでも一時0.7406CHFと2011年8月以来のCHF高を迎え、対円でも155.37円とCHF高が加速しました。
マーケット関係者の反応をみてみましょう。
”ガートマン・レター”でお馴染みのデニス・ガードマン氏はCNBCで「実に馬鹿げた決断だ。世界中に散らばる数多くの投資家に多大な損失を負わせたのだから」と憤懣やるかたない様子でした。
スイス株式指数SMIは、一時10%超も急落。
(出所:Yahoo! Finance)
BKアセット・マネジメントのマネージング・ディレクターであるボリス・シュロスバーグ氏は、今回の為替政策の変更に対し「SNBは恐らく、欧州中央銀行(ECB)が国債買い入れを含む量的緩和(QE)を実施すればユーロ・ペッグ制が不可能になると判断したのだろう」と指摘しています。
BNPパリバの欧州担当エコノミスト、イブリン・ヘルマン氏は「フラン高は輸入物価安を示し、さらなるインフレ下方圧力をもたらし、輸出業者の競争力低下を意味する」と指摘。特にユーロ圏での輸出は「全体の55%」を占めるため、大打撃になること必至です。
時計ブランド大手スウォッチ・グループのニック・ハイエク最高経営責任者(CEO)は、SNBの政策決定に「スイスにとって津波をもたらす」と警告を発します。同CEOがCNBC向けに送付したeメールは「世界の終わりだ!」と絶叫が聞こえてくるかのように始まり、今回の決定は「輸出業者、観光業者、そして国全体にとって津波のような惨事そのもの」と悲嘆に暮れておりました。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略最高責任者、マーク・チャンドラー氏は2011年以前にSNBがデフレ対策に海外債を取得するQEを実施したものの、効果を発揮できずにユーロ・ペッグ制に移行した経緯を説明。その上で「もはやECBの問題ではなく、原油安と破綻しつつある商品相場だ。多くの国々はデフレとの闘いを余儀なくされている」とし、スイスだけでなく他の中銀も対応が迫られると予想していました。
2015年は欧州中央銀行(ECB)が史上初の国債を含めたQEを、米連邦準備制度理事会(FRB)が2006年以来の利上げを開始する見通しであり、転換点の年と目されます。SNBの大胆な決断は、新たな時代への挑戦であることは間違いなさそうです。
(カバー写真:Shutterstock)
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