China Sharply Cuts Yuan Against U.S. Dollar Amid Slowdown.
中国人民銀行は11日、対ドルでの人民元切り下げに踏み切りました。声明文で、人民銀行は「対ドルでの中間値(人民元取引の基準値)の計算手法を変更し、今後は市場での中央値と前日の終値を用いる」と表明。11日の中間値を6.2298元とし、10日の6.1162元から1.9%安に設定しています。約2%もの切り下げは、過去最大。金融危機が吹き荒れた2008年12月でも、0.7%安にとどまっていました。(追記:結局12日にも1.6%、13日に1.1%と3日連続で切り下げ実施)
人民元切り下げは、経済指標の減速を確認した後に決断されました。中国7月貿易収支で輸出は前年同月比8.3%減少と6月の2.8%増からマイナス転落しただけでなく市場予想の1.5%減を大幅に下回り、輸入も8.1%減と6月の6.1%減から下げ幅を拡大。中国7月生産者物価指数(PPI)も約6年間で最大の下げ幅を記録するなど、不振続きに終わっています。一方で中国7月消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.6%上昇し、6月の1.4%から上げ幅を加速。利下げが困難とみられていたものの、人民元の基準値を下げて景気に対応した格好です。
すでに対ドルでユーロや円が下落するなか、人民元の競争力を回復する意図も見え隠れします。国際通貨基金(IMF)が公表したレポートで人民元の特別引出権(SDR)の採用を見送り2016年9月30日まで控えるとのスタンスを打ち出していただけに、迷う所はなかったのかもしれません。SDR採用をめぐっては独仏英伊といったアジアインフラ投資銀行(AIIB)参加組は支持する方向だったものの、日米が慎重だったと伝えられていましたよね。2016年と言えば、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)が中国本土の人民元建てA株を新興国株式指数組み入れるか、再度検討する見通し。2020年に北京冬期五輪、2019年にバスケットボールW杯を控えるだけに、2016年にワン・ツー・フィニッシュでIMFとMSCIをクリアしていきたとはいえ、景気減速に株安という痛手も重なり手段を選んでいられなかったのでしょう。デフレの波が世界経済を襲いつつあるなかで、今度はFedが利上げできるかが試されます。
(カバー写真:International Business Times)
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