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アメリカ人、2016年の米大統領選の優先事項は「テロ対策」

by • December 15, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off4132

Fear Of Terrorism Could Affect 2016 Presidential Election.

パリ同時多発テロ事件、カリフォルニア州銃乱射事件を背景に米国民の間で安全保障が最優先事項に挙げられている。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙/NBCの世論調査では、2016年米大統領選での優先事項として「安全保障/テロ対策」を挙げるべきとの回答が60%に達し、4月時点の39%から急伸。項目別でもトップに立ち40%と4月時点の21%から倍増し、当時1位だった「雇用の創造/経済成長」は29%から今回23%へ低下し「安全保障/テロ対策」に代わり2位に落ちた。共和党が撤廃を目指す医療保険制度改革(オバマケア)に絡むヘルスケアは9%で4位にとどまり、4月時点の13%を下回る。以下は、項目別の詳細。

WSJNBC
(出所:WSJ

世論調査は12月6-9日に実施され、1000人の成人が対象とされた。

パリ同時多発テロ事件が発生した11月13日、カリフォルニア州銃乱射事件を受けて共和党寄りのアメリカ人を中心に保守化の波が押し寄せている。イスラム教徒への入国禁止を求めるなど過激な発言で話題のトランプ候補の支持率に加え、シリア難民受け入れ禁止を求めるティーパーティー派のクルーズ米上院議員(テキサス州)も、保守派のマルコ・ルビオ米上院議員(フロリダ州)やカーソン候補を抜いて、立候補して以来初めて2位に躍り出た。

世論の変化に合わせ、オバマ米大統領もビザ免除プログラム(VWP)を見直す意思を表明した。米下院が8日に407対19と民主党を巻き込み賛成多数で通過した法案では、ビザなし入国を制限する内容を盛り込んだ。2011年3月以降にシリアをはじめイラク、イラン、スーダンなど指定された国への渡航歴がある場合、電子渡航認証システム(ESTA)を活用しビザ不要で米国に90日間滞在できる欧州・アジア諸国を中心とした38カ国の渡航者でも、ビザ取得を義務付ける。

カリフォルニア州銃乱射事件ではパキスタン国籍の妻タシュフィーン・マリク容疑者が婚約者ビザ(K-1)で2014年にサウジアラビアから入国した事情もあり、オバマ米大統領はK-1ビザ・プログラムについても精査を命じた。アメリカ市民権を有する者と結婚する外国人を対象に承認されるK-1ビザは、米国務省によると同年に3万6000人分が発行されという。パキスタン系アメリカ人の夫シド・リズワン・ファロック容疑者と犯行に及ぶ以前にフェイスブックでジハードへの誓いを明らかにしていたことから、米国務省と米国土安全保障省はビザ審査にソーシャルネットワークを活用する方針だ。既にフェイスブックやコンピューター履歴を調査対象に組み込んでいるという。

ただしオバマ米大統領は、11月19日に米下院が289対137(共和党242、民主党47)で可決したシリアとイラクの難民受け入れを制限する法案には拒否権を発動する構えを見せる。厳格な審査を通じ安全保障の脅威とならない難民のみ受け入れる案に、米上院のハリー・リード院内総務も法案阻止を目指すと発言しており、法制化されるかは不透明だ。

——米景気が比較的安定しているためか、特にパリ同時多発テロ事件とカリフォルニア州銃乱射事件の波紋は大きかったようです。米国のシリア難民数は直近で約1500人程度とドイツの約9万3000人に及ばないものの、オバマ米大統領は2016年に1万人へ引き上げる方針を表明済み。ただパリ同時多発テロ事件以前、ケリー米国務長官はシリア難民を2016年に8万5000人、2017年には10万人受け入れる方針について言及していたんですよね。ヒラリー民主党大統領候補も9月20日にCBSのインタビューで「6万5000人を受け入れるべき」と発言していました。民主党候補が今後、保守化が進むアメリカ人のトレンドをくみ取るのか注意して見守りたいところです。

2012年の米大統領選に基づけば、選挙人が多いニューヨーク州をはじめカリフォルニア州など大都市を抱える州で勝利していたため、ヒラリー候補にとっては逆に保守化は歓迎すべき現象かもしれません。

2012年米大統領選、結果はこちら。
2012election
(出所:Washington Post

前述のWSJ/NBCによる世論調査ではヒラリー候補VSトランプ候補との一騎打ちにて、前者が50%と後者の40%を上回っていました。ただし対クルーズ候補の場合は48%にとどまり、クルーズ候補は45%に迫ります。マルコ・ルビオ候補になると形勢は逆転し48%とヒラリー候補の45%を超え、足元で急速に支持率が低下中のカーソン候補も47%とヒラリー候補の45%を抜き去っていました。特に無党派層で傾向が強くカーソン候補の48%に対しヒラリー候補は34%ルビオ候補も44%に対し37%という有様です。

第一回共和党・米大統領候補討論会で、フィオリーナ候補がトランプを槍玉に挙げ「(立候補の前に)私はビル・クリントンから電話を受けていないわ、他の皆さんはどう?」と非難していたことが思い出されます。

(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)

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